【4270】統合失調症の治療中にギャンブル依存になった
Q: 私は40代女性です。私は20歳前から統合失調症と診断され、家族の反対で一時(三ヶ月ほど)断薬をし、自殺未遂の一歩手前になって、それからは欠かさず服薬しています。現在はエビリファイの筋肉注射を三年ほど月一回欠かさずにしています。妄想や雑音や苦手な音が 幻聴に時として聞こえますが、ここ10年ほど自ら一人で定期的に病院へ行っているので薬がなかったら、自分自身を維持できないと客観視はできているかと思います。 今回私が今一番困っているのがギャンブル依存です。 主治医の先生に自らエビリファイ の病的賭博促進についても相談しましたが、薬を変えることも無駄に終わる可能性を指摘されました。私も筋肉注射は良いシステムだと思います。予算内でギャンブルするしかないですと言われました。 しかしながらあらゆる種類をしてしまいます。 競馬、競輪、オンラインカジノ、海外でのカジノなど。 時に病院代をギリギリ取っておいて、それ以外全てを次の給料日や年金支給日、仕送り日までに使ってしまい借金が百万近くあります。 すでに退職された主治医の時にデイケアの話もありましたが、脱法行為の話をしたくなく、話は流れました。 夫もギャンブル好きですが、それとは質が違い病院に行って専門の治療を受けて欲しいとも言います。 何冊か読んだ本によると自助グループ デイケア などなどがあるそうですね。 林先生はエビリファイ の病的賭博促進はあると思いますか? 鬱患者よりも統合失調症の患者のギャンブル依存の方がより破滅的な結果をもたらしますか? すでに主治医がある私ですが、もっとギャンブル依存だけのために併用して通院すべきでしょうか? それとも劇的に一人の力で治ることもあるでしょうか? どうぞよろしくお願い申し上げます。
林: それはエビリファイの副作用です。
林先生はエビリファイ の病的賭博促進はあると思いますか?
私がそう思う のではなく、エビリファイに病的賭博(ギャンブル依存)を発生させるという副作用があるというのは医学的に証明されている事実です。(ただし、非常に稀な副作用ではあります)
対策は明快で、エビリファイを中止し、他の抗精神病薬に切り替えることです。
主治医の先生に自らエビリファイ の病的賭博促進についても相談しましたが、薬を変えることも無駄に終わる可能性を指摘されました。
それは誤っています。
統合失調症の薬である抗精神病薬の多くは、基本的にドーパミンの作用をブロックするというメカニズムで効果を発揮するものですが、エビリファイはドーパミンの作用を一部促進するというメカニズムもあり(すると効果が正反対で矛盾すると思われるかもしれませんが、その説明は複雑になるので省略します)、この促進作用によって、他の抗精神病薬にはない病的賭博という副作用が現れることがあるのです。したがって、他の薬にかえることは 無駄に終わる どころではなく、病的賭博が消失することは十分に期待できます。
ドーパミンの作用によって病的賭博が現れるのは、パーキンソン病の治療薬でも見られることで、したがって賭博への衝動にはドーパミンが大いに関係しているということが、薬のメカニズムと副作用という事実から証明されているということになります。(林の奥のねじまき鳥クロニクルもご参照ください)
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エビリファイと病的賭博についての論文はいくつもありますが、代表的なものとしては2016年に出された Pathological Gambling Associated With Aripiprazole or Dopamine Replacement Therapy: Do Patients Share the Same Features? A Review があります。
予算内でギャンブルするしかないですと言われました。
主治医の先生のこの指示は不適切です。
すでに主治医がある私ですが、もっとギャンブル依存だけのために併用して通院すべきでしょうか?
いいえ。エビリファイを他の薬にかえるのが唯一の正しい対策です。
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それとも劇的に一人の力で治ることもあるでしょうか?
エビリファイを続けている限りそれは期待できません。
エビリファイを他の薬にかえてもらってください。
主治医がそれを拒否するのであれば、他の病院に転院する以外にないでしょう。
(2021.3.5.)