【4217】うつ病が自然治癒することはあるでしょうか

Q: 30代男性です。
過去のQ&Aを見ていて気になったことがあったためメールしました。
それは、標題の通り、うつ病は自然に治るケースがあるのかということです。
というのも、これは私自身のことなのですが、大学3年頃から半ば引きこもりのような状態になり、大学は何とか卒業できたものの、就職活動はまったくできず、そのままいわゆるニートになりました。就職しなければとの思いはあったものの、何もする気が起きず、履歴書を書くことすらままならず、いつも眠気が酷くて、毎日12時間以上寝ているような状態で、起きている時も頭に靄がかかったようで、何も考えることができないような状態です。時折日雇いのアルバイトには行くものの、月に1~2日がせいぜいで、後はずっと家に引きこもっている状態でした。

そんな状態が4年くらいあり、その後環境が変わって、26の年に親戚のツテでアルバイトを1年、その後また親戚のツテで正社員となり、現在まで10年ほど同じ会社に勤務しており、結婚も出来、子どもにも恵まれました。

今になって振り返ると、大学4年からの4年間はどう考えても正常な心理状態ではなく、何も興味がなく、常に灰色がかったような状態であり、先生の仰る擬態うつ病のような状態だったと思うのですが、擬態うつ病の場合、環境の変化などで精神科に通院せず、投薬も無しで、自然に治癒するようなケースはあるのでしょうか?

 

林: 「擬態うつ病の場合、自然に治癒するケースがあるか」というご質問ですが、これはすなわち、「うつ病のような状態だったが、自然に治ったので、あれは擬態うつ病だったのか」という主旨であることが読み取れます。それに対する回答は、「真のうつ病は、自然に症状が消えることがある」というものになります。真のうつ病の元々の概念は(元々の概念とはつまり、薬物療法などの治療法が存在しない時代の概念を指しています)、「自然に症状が消えるが、再発を繰り返す」というものです。この概念は、基本的には現在にも通用しますが、症状による本人の深い苦しみ、さらには自殺に至ることもしばしばある病気であることからは、治療しないという方針は不合理ですから、自然に症状が消えるのを待っているというわけにはいかないということになります。

それでも現実には、うつ病の症状が確かにあっても様々な理由で治療を受けることができないままに経過し、自然に症状が消えていったというケースは存在します。このようなケースの「症状」には重いものから軽いものまであらゆるレベルがあり、軽い場合はうつ病と診断されるには至りません。しかしその後に、より重い症状が現れ、うつ病と診断されることがあります。うつ病を発症して精神科を受診した方によく話をお聞きすると、ずっと以前に、うつ病と診断できるレベルには達しないものの、軽いうつ病の症状があったことが判明することがあります。その場合、本当の意味でのうつ病の発症は、その「軽いうつ病の症状」が現れた時期ということになりますが、現代の診断基準上はそれはうつ病の基準を満たしませんので、精神科を初診した時期ということになります。

この【4217】のケースは、

大学3年頃から半ば引きこもりのような状態になり、大学は何とか卒業できたものの、就職活動はまったくできず、そのままいわゆるニートになりました。就職しなければとの思いはあったものの、何もする気が起きず、履歴書を書くことすらままならず、いつも眠気が酷くて、毎日12時間以上寝ているような状態で、起きている時も頭に靄がかかったようで、何も考えることができないような状態です。時折日雇いのアルバイトには行くものの、月に1~2日がせいぜいで、後はずっと家に引きこもっている状態でした。

という状態が4年くらい続き、自然に回復しています。この4年間がうつ病の診断基準を満たす状態であったか満たす状態でなかったかは微妙ですが、診断基準を満たす・満たさないにかかわらず、うつ病の発症(上記の「本当の意味でのうつ病の発症」)であったとみることが可能です。

その後、特に治療を受けずに回復したこの【4217】のケースは、現在は、

現在まで10年ほど同じ会社に勤務しており、結婚も出来、子どもにも恵まれました。

とのこと、寛解状態が続いていると判断できますが(厳密にはそう判断できるかどうかはわかりません。この10年間に、うつ病の小さい波があったか否かがこれだの記載からは不明だからです)、今後うつ病を発症(厳密には再発)する可能性は相対的に高いと認識し、その兆候に注意することが必要でしょう。
【4218】も類似のケースですのでご参照ください。

なお、この【4217】のそもそものご質問、すなわち、

擬態うつ病の場合、環境の変化などで精神科に通院せず、投薬も無しで、自然に治癒するようなケースはあるのでしょうか?

については、擬態うつ病とは「うつ病と本人が言っている、またはうつ病とされているが、真のうつ病ではないもの」の総称ですから、「擬態うつ病では、○○というケースはあるのでしょうか」という問いに対しては、○○に入るものが何であれ、「あります」が答えになります。

(2021.1.5.)

その後の経過 (2021.5.5.)

05. 1月 2021 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 擬態うつ病, 精神科Q&A タグ: |