【4218】あまりにつらい状態だったのですが、自然に治ってしまったということは擬態うつ病だったのでしょうか
Q: 20代半ば男性です。
自分の大学時代に始まり今に至るこの状態は一体何なのか知りたいと思いましたので質問させていただきます。
大学2年後半ごろから思考がモヤモヤして理解力が低下し、記憶力・判断力もまた著しく低下するという経験をしました。
当時、日中は朝早くから講義に出席したりアルバイトをしながら資格のために夜遅くまで勉強をするという生活を送っていました。そんな中、大学2年の後半ごろから徐々に思考力が鈍り、記憶力・判断力もそれに伴って明らかに低下しました。このままでは望んでいる資格が取れないという不安や焦りを感じていましたが、次第にそれら不安・焦りが原因である資格試験への失敗の恐れに対して大きすぎるということに気づきました。同時に人が多く集まるところに行くことに非常に恐怖を感じ始め、電車に乗ることが心理的に難しくなりました。またほんの少ししか活動していないのに疲れやすくなっている、疲れが取れない、と感じ始めたのも確かこの頃だったと思います。
大学3年になるとそれらの傾向が強くなり、親しいごく一部の友人を除き他人と話すことに強い不安を感じ、大学構内を歩くときに他人とすれ違うことにさえも恐怖に近い不快な感覚に襲われ、講義に出席しても話が全く理解できない、大好きな読書も理解するのにそれまでの数倍の時間と労力を要する、読書に限らず全てがただ疲れるだけで楽しめない、といったことで苦しみました。ただ歩いているだけで意図せずに人にぶつかってしまうことが増えたのも多分この時期でした。次第に疲れの程度がますます激しくなり、とうとう家に篭りがちになって講義に出席できず、アルバイトもミスが続いたりトロくさく仕事が不思議なほど覚えられずにこれ以上迷惑をかけられないと辞めてしまいました。
最も辛かったのは自動車学校での経験で、大学2年半ばのおかしいと感じ始める前に通い始め、以降は上記の状態に苦しみながら補習を自主的に願い、期間延長までして通い続けていたところでしたが、度重なる判断ミスへの自責の念と人格的攻撃にまで及ぶ数々の叱責に堪えかねて最後は登校前の朝に情けなくも過呼吸・嘔吐などにて倒れてしまい、もし免許を取れたとしても運転は危険であると自分で判断して結局これも辞めてしまいました。
その後は半年ほど家に引き籠りましたが、家での生活は不規則にしか取れない睡眠、摂取量に大きな波のある食事、排泄、入浴、また睡眠という繰り返しでした。
中でも入浴は億劫で仕方なく、風呂場に入ってからただシャワーを浴びるだけで2時間ほども経過していて当時の鈍った思考でも異常だと感じました。その思考力については、最もひどい時は簡単な一文を読んだり簡単な計算さえも出来ず、わかるのにわからないような、それまでの状態と比較にならないほどに低下していたことをなんとなく覚えています。精神的な面について言えば自分は無価値であり、これまで持っていた能力全てを失ってしまったという形容し難い自嘲に似た無力感・無気力に苛まれました。訳も分からないまま何度も死んでしまおうと思いましたがそこまでの力も湧かず、野垂れ生きているというような感じでした。
大学は単位を幾つも落としながらも友人たちの温かい助けに最後まで支えられどうにか卒業できましたが、その後は当初予定していた進学が当然ながら出来ず、途中からどうにか参加した就職活動も面接でまともに受け答えできずやはり失敗しました。
「辛い」と感じていた時、家族や友人には言えませんでしたし、大学OBから耳にした経験談等から「診断を貰えば全てが無駄になる」という極端な考えを抱いてしまい以来現在に至るまで受診もしていません。
ですが幸いなことに、今は理解ある職場で(パートタイムで限られた短い時間ではありますが)なんとか働きながら家族と共に比較的穏やかに生活しています。
「この状態は何なのか」と申しますのは、擬態うつ病であったとすれば過去また現在に至っても自分にとって余りに過酷で、一方真のうつ病としては当時の状態からすれば受診も投薬もせずに今の状況にまで回復するのはあり得ないと感じるからです。
今でも思考力や記憶力、緩慢な動作が完全には元に戻らないまま、日によっては未だ過去の苦しみや、(恐らく能力の低下に起因して)受けた暴言・いじめがフラッシュバックすることもあり、耐え切れず「終わりだ」「消えろ、死ね」などの汚い言葉が口をつき精神的にどん底に落ちます。朝起きても力が入らずベッドから出られない日もあります。相変わらず電車や人混みはダメなままですし、他人と話すことに非常に恐れを感じることがあります。
とはいえ、当時よりはずっと良くなっています。ある程度は順序立てて考え・行動できるように回復し、記憶力、特に短期記憶の低下は仕事中でも細かくメモを取ることで何とか補っています。当時苦労した、講義で使った基本書などの資料も今は読めますし理解できます。最近はまた目標を持ち、勉強を始めるまでになりました。失った記憶力や判断力を取り戻そうと、自主的にではありますが訓練もしています。楽しいと感じることが少しずつ増え、以前のような酷い疲れも今は殆ど感じません。
先生、私のこの状態は一体何なのでしょうか。
仮に今から受診したとしても意味があるのでしょうか。
これからさらに改善するためにどのような取り組みが必要だと思われますでしょうか。
文章から読み取れる情報から事実のみをご回答なさることは承知しております。それでもその範囲で教えていただけますと幸いです。
長々とした悪文になってしまい申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
林: あなたはうつ病だと思います。精神科で治療を受けることをお勧めします。
大学時代について具体的に記していたただいた状態、すなわち、
精神的な面について言えば自分は無価値であり、これまで持っていた能力全てを失ってしまったという形容し難い自嘲に似た無力感・無気力に苛まれました。訳も分からないまま何度も死んでしまおうと思いましたがそこまでの力も湧かず、野垂れ生きているというような感じでした。
この二文に要約された状態は、まさにうつ病の症状で、この状態に至る前には、
日中は朝早くから講義に出席したりアルバイトをしながら資格のために夜遅くまで勉強をするという生活を送っていました。
という状況であったことはきっかけとまでは判断できるものの、これだけの重い症状がこれだけの長い期間持続することを説明できるだけの原因であったとは到底みなすことはできず、真のうつ病 = 内因性うつ病 であることを強く支持する経過と症状であると言えます。
擬態うつ病であったとすれば過去また現在に至っても自分にとって余りに過酷で、一方真のうつ病としては当時の状態からすれば受診も投薬もせずに今の状況にまで回復するのはあり得ないと感じる
これは、うつ病(真のうつ病)についての誤解に基づく考え方です。【4217】の回答にも記した通り、うつ病では自然に症状が消えることはあり得ます。すなわち、「真のうつ病としては当時の状態からすれば受診も投薬もせずに今の状況にまで回復するのはあり得ない」は誤りで、それは十分にあり得る経過です。また、【4217】では、症状が「消えた」と言えるのに対し、この【4218】では、症状は最重度の時期よりは軽くなったものの、まだまだ残存していますから、うつ病という病気が波打ちながら続いていると描写できる状態です。
先生、私のこの状態は一体何なのでしょうか。
うつ病です。
仮に今から受診したとしても意味があるのでしょうか。
大いに意味があります。というより、受診することが最も適切な行動です。
これからさらに改善するためにどのような取り組みが必要だと思われますでしょうか。
精神科を受診してうつ病の治療を受けることが必要です。
文章から読み取れる情報から事実のみをご回答なさることは承知しております。それでもその範囲で教えていただけますと幸いです。
もちろん精神科Q&Aの他の回答と同様、「その範囲」での回答ではありますが、この【4218】には経過と症状がかなり具体的な書かれていますので、「その範囲」という限界を考慮したとしても、かなり確度の高い回答ができていると思います。あなたはうつ病だと思います。精神科で治療を受けることを強くお勧めします。
(2021.1.5.)