【4136】いじめの加害者は自己愛性パーソナリティ障害だったのでしょうか?

Q: 私は現在専門学校に通う20代女性です。
今の専門学校に通う前は私立大学の芸術学部に通っていたのですが、そこで酷いいじめに逢い退学しました。1週間程ノイローゼになり、友人のおかげで何とか立ち直ったのですが、今でも時々当時のことがフラッシュバックします。

そのいじめの主犯の女子学生なのですが、今更ながら彼女が病気だったのではないかと疑っています。彼女は何かにつけて自分がいかに凄いかを周りに喋らなければ気が済まない人でした(高校時代の交際経験から自分が知っている浅はかな知識まで)。私が指定校推薦で入学してきたことを知った途端、親の敵のような態度をとり、いちいちマウンティング。他にも指定校推薦で入学した学生がゴロゴロいるのにです。恐らく私の高校時代の恩師と大学の教授が知り合いだったからでしょう。そのことを教授から聞いた途端目を見開き「信じられない!」といった表情でこちらを凝視してきました。

それ以来私に対する異常な執着が始まりました。自分は身だしなみに一切気を使わない癖に、私に対しては「あいつ服ダサくない。」などと言ってきます。友人に確認してもとくに服はダサくないそうです。私だけではありません。女の子とよくつるむ男子学生を見かけると「あいつって心が女なのかなあ。ほら、よく言うじゃん!12人に1人はLGBTだって!」と自分の知識をひけらかす為に、下らないことでその子を吊し上げ、その子が今度は男子学生と話しているところを見ると「男と話せるようになったんだ!感動した!」とわざわざ感動アピール。授業中にも関わらずいきなり「私の誕生日7月28日だから!」と何故か自分の誕生日をアピール。

また、いちいち取り巻きに対して「貴方は天才ですね。」と言わせなければ気が済まない癖に努力を一切しません。「一番最初に提出した奴が一番天才だよな。」と取り巻きに同意を求め、こちらを見てニヤニヤ笑い、課題を雑に仕上げて提出。ある時は「私が天才だよな!私が1番で〇〇が2番で〇〇が3番だよな!」と大声で取り巻きに確認し、取り巻きが「そうだよ」となだめるように答えると、勝ち誇ったようにこちらを凝視してきました。教授から日頃の態度を改めるよう呼び出しを受けて説教されても、教室に帰ってくれば私はこんなに教授に構ってもらえていると取り巻きにアピールしだします。

そして、半年が過ぎた頃、いつものように友人と授業を受けていると、「あいつ自分がJKだと思ってるだろ!」とその女子学生が突然怒鳴りはじめたのです。私は最初なんのことか分からずに授業を受けていましたが、「この距離だったら流石に聞こえてるよな!」と取り巻きに大声を出し、教授が問題を出して全体に挙手を求めたときに私が手を挙げずにいると「はあ?そんなことも分からんとや!」と怒鳴りました。それでようやく私に対して怒鳴っているのが分かったのです。授業中にも関わらずです。私はその女子学生の気に触れるようなことをした覚えは一切ありませんでしたが、その次の日から私に対する言葉の暴力が始まりました。私が通っていた大学はクラス制だったので、休み時間に教室にいると私に聞こえるように「臭い」 「汚い」などの暴言。すれ違いざまに舌打ち。授業中でも一瞬教授が教室を出ていくと「自分がクズだと気づけ」などの暴言。主犯の女子学生にもゾッとしますが、いい歳にもなってこの女子学生の言うことをホイホイきいている取り巻きにもゾッとしました。友人の証言もあり、教授から注意して貰ったのですが、主犯と取り巻きは「そんなつもりは無い!」と言い張り、いじめの内容も言葉の暴力だけだったので証拠を出そうにも出せませんでした。

やがて怖くて教室に入れなくなり3ヶ月後には親に相談して退学届を出しました。信じられないでしょうが、本当にこういうことがあったのです。自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性人格障害)という病気があることをネットで知りました。もしかするとこの人もその病気だったのでしょうか?

 

林: この加害者女性には、確かに自己愛性パーソナリティ障害の特徴が認められます。したがって質問者の推定は当を得ていますが、このメールは彼女と質問者との関係における彼女の言動についての報告にほぼ限定していますので、それ以外の場面における彼女の言動特性によっては他のパーソナリティ障害の方がよくあてはまる診断名になるかもしれません。具体的には、境界性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害などです。自己愛性パーソナリティ障害とこれらのパーソナリティ障害は、現代の公式の診断基準ではB群パーソナリティ障害の中に分類されており、いずれも、感情的・演技的といった特徴を持っています。そんな中で、たとえば自己愛性パーソナリティ障害であれば、特に自己愛が強いという側面を持っている一群ということになります。

(2020.10.5.)

05. 10月 2020 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 境界性人格障害, 精神科Q&A