【4107】イマジナリーフレンドがいる中学生の息子は統合失調症でしょうか

Q: 中学3年の息子の状態について、ご意見をお聞きしたいと思いメールをいたしました。

中学2年の3学期に、コロナの影響で2月末から休校になり、3月半ば位から様子がおかしいと思い始めた後、4月半ばには精神科の受診を考え始めましたが、なかなか受け入れてもらえる病院が見つからず、ようやく受診したのが5月の連休明けになってしまいました。

現在まで、同じ病院で診ていただいて、発育の様子や本人からの聞き取り、心理検査等、時間をかけて診察していただいています。医師の診断は、まだはっきりとはしないが統合性失調症が疑わしいということで、エビリファイを1日3mgから始め、現在15mgを服用しています。

本人が一番辛いと訴えているのは、自分の好きなアニメーション のキャラクターたちが非常に残忍な目にあっているところを想像してしまい自分では制御できないということです。
息子は、頭の中でいろいろな対処法や架空の道具などを考え出して、そのキャラたちをなんとか救おうとするのですが、上手く行かずどうしようもない嫌な感じで不安に苛まれてしまいます。

今回、キャラのことを考え出したのは、実は新年からだそうで、初めは勉強をさぼってしまうのを注意してもらう等自分を助けてくれるような存在で、1人から5人ほどに増えていったそうです。
それが3月頃から変化があり、そのキャラたちが危害を加えられるようなイメージが湧くようになり、次第に加害者の姿も見えるように感じられてきて、考える時間がだんだん長くなり、家族がキャラのことを聞いた4月半ば頃には起きている間中、その考えに捉われているような状態になってしまったようです。

水を流す浴室やトイレなどはキャラが流されて行ってしまう連想をしてしまうので、なるべく避けたがる。
食べ物のなかにキャラがいるようなイメージがあり、食事に異常に時間がかかる。
車や飛行機の音が聞こえると、一緒にキャラが連れて行かれてしまうイメージがする。
キャラの人数がどんどん増え、数え切れないほどになってしまっている。

その結果、生活全般に支障が出ていました。
受診する前には、想像と現実の境界があやふやになっていて、トイレの便器を破壊して中のキャラを助けるべきかじっと考えているというような状態にまでなってしまいました。ただ、本人は本当には壊したりはしないつもりだったと言っていましたし、自分にとっては本当のことのように思えるが、他の人にとって現実でないということは分かっているそうです。

受診後、抗精神薬によって少しずつ落ち着いてきて、お風呂やトイレは入れるようになりましたが、悪い想像自体は変わらず残っていると言います。
他にもちょっと何かに触った手が汚れた気がするから洗ってくるとか、トイレに入る時に外から照明を2回見てから入ることにしているとか、身体のあちこちの不調を次々気にするなどの強迫症や不安感を示すような様子もあります。
学校も5月末から再開しましたが、登校は難しいので休んでいます。

医師にも強迫性障害の可能性を質問してみたのですが、確かに強迫的な面も見受けられるが、キャラクターが、というようなかなり奇異な内容を訴えているので統合性失調症の方がより当てはまるという説明でした。

元々、成長する過程で、言葉に遅れがあったり、集団行動になじめなかったりということがあり、数回発達相談を受けたことがありました。心理検査も受け、数値の偏りもありましたが、特に受診を進められることもなく、先の見通しが立ち辛いので、配慮してあげて等のアドバイスを受けていました。
小学校は低学年の内は、教室でクラスメートと上手くいかなくて泣き怒りのようなことが何回かありましたが、高学年になるにつれてトラブルも減り、友人もいて、学習や学校行事に意欲もあり、まあまあ適応できているのかなと捉えておりました。

イマジナリーフレンドについては、診察の途中で始めて知ったのですが、小学4年生の時にも現れていたそうです。
ゲームのキャラクターの何人かが、電車に乗っている時に外を走って追いかけているのを見たというような内容で、それ以降は特に考えることもなく一過性のものだったようです。

でも、やはり発達に問題が多少あり、今回のコロナで在宅が続いたことや勉強のこと、また、急に体格が良くなったので第二次性徴による自分への嫌悪感なども抱えていたようなので、いろいろ重なって今回のようなことになってしまったのかと思います。

本当に統合性失調症なのかという点については、病気の典型的な様子として、患者は自分が責めたてられるような感覚を持つという印象を持ったのですが、息子の場合、キャラが大変な目にあうので、なんとかしなくてはという責任感と助けられないことへのどうにもならない不安感を訴えている感じで、少し違和感を感じています。

イマジナリーフレンドの存在が、息子のように変化することはあるのでしょうか。

【3910】イマジナリーフレンドは統合失調症の発症につながりますか  の回答で

「統合失調症に繋がることはない。解離性障害とは関連がある。」

とおっしゃっていますが、息子の場合は(イマジナリーフレンドから)統合性失調症になってしまったのでしょうか。

 

林: ご質問のタイトルは「イマジナリーフレンドがいる中学生の息子は統合失調症でしょうか」ですが、この【4107】の中学生にイマジナリーフレンドがいるとは判断できません。すなわち文脈からすると質問者は、

自分の好きなアニメーション のキャラクターたちが非常に残忍な目にあっているところを想像してしまい自分では制御できないということ

これをイマジナリーフレンドと呼んでいるようですが、これは明らかにイマジナリーフレンドではありません。
また、

イマジナリーフレンドについては、診察の途中で始めて知ったのですが、小学4年生の時にも現れていたそうです。
ゲームのキャラクターの何人かが、電車に乗っている時に外を走って追いかけているのを見たというような内容で、それ以降は特に考えることもなく一過性のものだったようです。

これが彼の最初のイマジナリーフレンド体験、もしくはその萌芽であると判断しているようですが、これもイマジナリーフレンドとは言えません。

記載中、唯一イマジナリーフレンドかもしれないと思わせるのは、

今回、キャラのことを考え出したのは、実は新年からだそうで、初めは勉強をさぼってしまうのを注意してもらう等自分を助けてくれるような存在で、1人から5人ほどに増えていったそうです。

この部分ですが、このような体験が持続していればイマジナリーフレンドとみることは可能ですが、その後の体験・経過からみて、これをイマジナリーフレンドとみるのは否定的です。また、「勉強をさぼってしまうのを注意してもらう等自分を助けてくれるような存在」は非常に抽象的な表現であり、この部分から言えるのは「イマジナリーフレンドとみることは不可能ではない」程度にとどまります。

息子の場合は(イマジナリーフレンドから)統合性失調症になってしまったのでしょうか。

「イマジナリーフレンドから統合失調症になった」のではなく、当初から統合失調症の症状であったと判断するのが妥当です。(ただし、発達障害の要素が関係している可能性は残ります。それについてはこのメールの内容のみからは判断不能です)

(2020.9.5.)

05. 9月 2020 by Hayashi
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