【4045】受診。休職。回復。今では嵐が過ぎ去ったように心が落ち着いています(【3711】のその後)

Q: 【3711】あらかじめ擬態うつ病と分かっていても受診してよいものでしょうか でご回答いただいた20代女性です。その節はありがとうございました。
おかげさまで大分落ち着いてまいりましたので、近況をご報告させていただきます。

先生に受診を勧めていただいたことでようやく踏ん切りがついて、あの後すぐに勤務先の病院内の精神科を受診しました。そしてそのまま休職することとなり、療養生活に入りました。

死ぬ以外に逃げ道はないと思っていた環境からあっさりと抜けだせたことに、なんだか拍子抜けしてしまい、しばらくは夢でも見ているような心持ちでした。
「こんな簡単なことだったんだ。もっと早く決断すればよかった」と思う反面、「あのときの私にはそんなこと考えられなかった」とも思います。

初めて定時で職場から出たときに見上げたまだ明るい空は、今も目に焼き付いています。ずっと下ばかり見ている日々だったので、「空ってこんなに青くて広かったんだ」と当たり前のことを思い、救われたような、何かを許されたような、そんな気持ちになりました。

その後は、よくなったかと思ったらまた悪くなったり、治りかけと思っていたころに自殺企図をしてしまって病院に搬送されたりと、簡単にはいかない日々が続きました。
自殺企図の後は、「私は遂に本当に人生の落伍者になってしまったんだなぁ」と思い、心が空っぽになった時期もありました。でも、それでも人間立ち直れるものなのですね。

今では嵐が過ぎ去ったように心が落ち着いています。
週3日から始めたアルバイトは徐々に時間を長くしていき、今では契約社員として登用していただいてフルタイムで働いています。
時々会社に行くのが辛くなることがあるのですが、一日お休みをいただいてゆっくり休めば調子を取り戻せます。

自殺未遂の過去があって、友達は少なく、土日は基本家でゆっくり休むばかりで、明日をも知れぬ契約社員の身、という私は、傍から見れば「人生詰んでる」人間なのかもしれません。
ですが、私自身はこれでそこそこ幸せだったりします。そして、そこそこの幸せで十分だと、今は心から思えるようになりました。

これも林先生があのとき背中を押してくださったからです。
あのとき私は「擬態うつ病でも受診する意味はありますか」というような尋ね方をしましたが、本当は「こんな私でも精神科を受診することが許されますか。これは逃げではないですか」とお訊きしたかったのです。
「楽しいという感情が残っている私は、きっとまだ頑張れるんだ、甘えているんだ」と思っていた私に、先生ははっきりと「あなたはうつ病の可能性が高いです。精神科を受診してください」と言ってくださいました。だから私は受診を決意することができました。

林先生、改めてあのときは本当に、本当にありがとうございました。先生からしたら、単に「事実を回答しただけ」かと思いますが、私はそれに救われました。
質問をせず、ただ読んでいるだけで救われている方もきっとたくさんいると思います。

先生が色々なご質問に医学的な根拠を示しながら淡々とご回答されているのを見ていると、知識はときに勇気になるのだなと実感します。それだけ聞いたら「怖い」と思ってしまうような精神的な症状も、先生の解説を読んでいると、いたずらに恐れることがなくなります。精神科に関わらず、ただ事実を回答してくださる方の存在はとても貴重なのだと痛感しています。
末筆ながら、林先生のご多幸を心よりお祈りしております。

 

林: その後の経過をご報告いただきありがとうございました。
具体的な治療内容の記載がありませんが、最も重要なのは症状が改善したかどうかということですから、精神科を受診し症状が改善したという事実があれば十分です。とは言え、まだ完治したとは言えない状態でもあり、これからも慎重に治療と生活を続けていかれること、そして症状がさらに改善し安定されることを願っています。

(2020.5.5.)

05. 5月 2020 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A タグ: |