【3989】 体幹が傾くなどするのは副作用でしょうか

Q: 20代男性です。
10代からうつ病で診断を受けましたが、20歳のころに錯乱したり人を傷つけそうになったりしたために(と聞きました)強制入院になりました。
また、5年前には、薬をやめてしまい、それでまた20歳の時と似たようなことが起き入院になりました。
その後もうつ病と聞いてましたが、2年前に書類を貰ったとき統合失調症であると言われました。
現在、リスペリドン、オランザピン、また、ゾルビデムを飲んでいます。(あと名前を忘れましたが便秘薬など)
本題なのですが、最近ふとしたときに体が傾いて転びそうになることが続いています。
思い返してみると5ヵ月ほど前、突然椅子から落ちたことがあります。
そこから、徐々に倒れやすくなってきていて、最近では、杖を突かないと不安なレベルです。
さすがにおかしいと思い、脳梗塞ではないかと思い、脳神経科のクリニックを受診し、市民病院を紹介してもらいました。
問診、MRIなど一通り検査した結果、脳梗塞や脳出血はないそうですが、おくすり手帳を見せたところ、「精神科のお薬の副作用の可能性が高いと思う。主治医に相談してください」
と言われました。
その後通院の際に、主治医にお伝えしたのですが、「関係はない!」と言い切られてしまいました。
どっちが正しいのでしょうか?

 

林: このメールの記載から判断する限り、副作用の可能性は十分にあると思います。
抗精神病薬を服用している方に、

ふとしたときに体が傾いて転びそうになる

という症状が見られたとき、第一に考えるのは ピサ症候群 と呼ばれる副作用です。これは、メカニズムとしては、手の震えや急性ジストニア(たとえば【2494】急に口が開いて顎が外れたようになりました)と共通点がありますが、発生頻度としては少ない副作用です。とは言え名前がついているくらいですからよく知られた副作用ですので、主治医の先生にご相談されたとき、

「関係はない!」と言い切られてしまいました。

なぜそのように断言されたのかは不明です。
可能性としては、
1. 症状を実際に見れば、ピサ症候群でないことは明らかだった。
2. 主治医の先生がこの副作用を知らなかった。
3. この【3989】のケースの統合失調症が悪化したときの症状は非常に激しいため、たとえ副作用があったとしても、症状を抑えることが最優先であると判断された。
の三つが考えられます。

20歳のころに錯乱したり人を傷つけそうになったりしたために(と聞きました)強制入院になりました。

と書かれており、その時の具体的症状は不明ですが、一般的に、ご本人からこのように報告された場合、客観的にはその報告よりもはるかに激しい症状であることがしばしばありますので、3.も一つの合理的な推定になりますが、しかし症状を抑えるために現在の抗精神病薬でなければ不可能とは考えにくいので、もし副作用が顕著であれば、他の抗精神病薬に変更するというのが普通の考え方です。そうしますと3.は除外され、1.または2.の可能性が高まるでしょう。

(2020.2.5.)

05. 2月 2020 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 薬の副作用 タグ: , |