【3932】 不思議な記憶とそれに伴う情感

Q: 20代男性です。
私には幼少の頃から抱いていたと思われる不思議な記憶があります。
可能性として、私の症状は解離性障害にあたるものではないかと思っているので、まず私の生育環境について話そうと思います。私は決していわゆる機能不全家庭で育ったわけではありませんが、両親が大声で喧嘩したり父親が不機嫌になると怒鳴ったりする家庭で育ちました。また、子供の頃から勉強や習い事を強要されたり成績が悪いと執拗に責められたりしていました。このことが原因かどうかは分かりませんが、一時期心療内科にかかりうつ病、社会不安障害されレクサプロを処方されていました。

標題の件に話を戻します。私には不思議な記憶があります。その記憶は、ある景色のイメージとして突然頭に浮かんだりします。その景色はとても場面設定が具体的で、イメージもかなり鮮明に思い浮かびます。また、その景色を思い浮かべると普段の日常生活では到底感じられないような不思議な情感が湧いてきます。説明しにくいのですが、以下にそのイメージの代表的なものの具体的な内容とそれに伴う不思議な情感について述べます。

・とある建物の屋根のごく一部が夕日に照らされている景色。なぜかは分からないが、その建物は昔の赤線地帯にある建物だと思う。この景色が頭に浮かぶとき、なぜか懐かしいような、そこに行かなければならないような思いに駆られる。

・とても大きな空中に浮かぶ都市?のような景色。私はそれを地上から眺めている。私の周りにはひまわりが咲き、辺り一面が草に覆われている。何故か私はその景色は夏のものだと思う。まれにそばに一人の少女が立っていることがある(顔は分からない)。この景色も思い浮かべると懐かしいような気がする。

・この景色は上記の2つと比べるとかなり異質。私は鉱物のビスマス鉱のような素材で作られた建物?の中にいる。私はそこは宇宙だと思う。その建物は圧倒的な大きさであり、果てが見えない。この景色を私は怖いと思う。

・橋のような洞窟?のような景色。そこには少女が立っていて、何故か海が見える。そこは戦時中である気がする。やはりこの景色も懐かしいような気がするが、同時にとても恐ろしいと思う。

以上がいくつかあるうちの代表的なイメージです。私はこれを解離性障害の症状として子供の頃に見た幻覚だと思っています。私が自分は解離性障害だと判断した理由は、既に述べましたが幼少期に怖い思いをしたことや、子供の頃に家に誰かがいると感じたことがあること。また頭の中に誰かがいるということを感じた記憶があること、そして子供のころにあまり具体的には覚えていないが何かしらの幻覚を見たことを記憶していることなどです。更に、小~中学校の出来事をほとんど覚えていません。

先生にお伺いしたいのは、
・これは解離性障害の症状としての幻覚である可能性はあるのか
ということです。
もちろん、単に昔見た夢や絵画などの記憶という可能性もあります。しかし、私にはどうしてもそうは思えません。
私は今、この記憶には続きがあると感じています。そしてそれを取り戻したいとも思っています。解離性障害の幻覚であった場合、それをより鮮明に思い出すことはできますか? よろしくお願いします。

 

林:
・これは解離性障害の症状としての幻覚である可能性はあるのか

その可能性は十分にあると思います。
けれども他方で、てんかん発作の症状である可能性もあります。一度は脳波検査を受けることをお勧めします。

解離性障害の幻覚であった場合、それをより鮮明に思い出すことはできますか?

できる場合もできない場合もあります。そして、解離のメカニズムによって記憶が失われているとき(もっと正確に表現するとすれば、「記憶が取り出せなくなっているとき」)、その記憶内容を思い出すことが適切かどうかは、慎重に考える必要があります。思い出さないことで、心の安寧が維持されている可能性がある、言い換えれば、思い出せば安寧が崩れるおそれがあるからです。

(2019.12.5.)

05. 12月 2019 by Hayashi
カテゴリー: てんかん, 精神科Q&A, 解離性障害