【2468】義姉は双極性障害なのでしょうか

Q: 私の義姉(40代)の事で質問します。まずはここまでの経緯について書かせていただきます。 義姉は元々真面目なところがありましたが、妹(私の妻です)、実母、義兄(夫)など身内に対して少々高圧的な態度を取るところもある、所謂「口うるさく神経質なところのある女性」でした。義兄と一緒にほぼ毎晩(20年以上)酒を飲み、酔うとそのまま眠ってしまうという一面もあります。また、彼女は会社の役員を務め、私も彼女の部下の一人となります。

1)昨年の春頃、義姉は会社で突然倒れ、その後数日間口をきけず、無気力な状態となり心療内科に通院しました。当時はほとんど義兄から介護を受けている状態だった様です。会社では横領疑惑があり、経理を務めていた義姉は犯人探しに必死になっていました。 その後、1週間ほどで無気力からは回復したものの、徐々に言動が常軌を逸してきました。顔が真っ赤になり、曰く、 ・「会社のお金を義弟(私)が横領している」 ・「今横領を白状すれば大目に見てやる」 ・「否定しても、現実にお金がない以上、調べればわかること」 最終的に税理士による調査の結果、人件費の増大などで出金が過剰になっただけで横領はなかった事がわかったのですが、今度は、  ・「義弟は妹を殺そうとしている」 ・「自分の家系は近親婚を繰り返しており血が濃い、天皇家と一緒だ」 ・「義兄は自分を殺そうとしている」 ・「自分はもう何人も殺しており、一人や二人増えてもかまわない」 などの言動が出てきました。義兄には早期の精神科受診を勧めたのですが、義姉に「自分(義姉)は正常だ」と受診を拒否され続けていました。後に分かった事ですが、義姉は自宅では「義兄に殺される」と叫びながら義兄に包丁を振り回す事も頻繁だった様です。

2)今年の春に錯乱を起こし、会社の中で大声で叫ぶ、備品や部下に暴行を働くなどの奇行を起こし、精神科に強制入院となりました。病院の診断は脱水で、約2週間程で退院しました。退院後1週間程は脱水症状を進めるという理由でお酒、コーヒーを控えていましたがほどなく再開しました。病院から薬は処方された様ですが、「飲酒しているので飲めない」と服薬を拒否していた様です。 

3)今年の夏に「自宅に爆弾が仕掛けられた」と友人に電話し出奔、その友人に保護されました。その夜は自宅で一晩中義兄を包丁で監禁、朝になり実父の説得で2)で入院した病院へ再入院しました。しかし入院後は「義兄に騙された、離婚する」、「人権保護団体に訴える」などと訴え、また、実母も「病院に二度も入院させるなんて可哀そう」と義兄を非難し、再び2週間程で退院となりました。なお、病院での診断名は「解離」となっていたそうです。 

4)退院後の義姉は、現在以下の薬を処方されています。 ・リスパダール ・セロクエル ・バレリン ・ユーパン
退院後1週間ほどで「飲まないとつまらない」と飲酒も再開した様です。薬は飲んだり飲まなかったりで、毎朝4時頃に目を覚まし義兄に離婚届に判を押す様強制したり、義兄を数時間に渡り罵倒しつづけたり、と思うと突然「死にたい」「殺して」と鬱状の言動を起こすなどの状態にあります。(躁鬱の切り替わりは大体30分~1時間位です)服薬後はエキセントリックながら比較的正常な応対ができる様になります。   義兄は義姉の事を双極性障害ではないかと疑っている様です。しかし本人が同意せず病院に連れて行くのが難しいと嘆いています。義姉本人は病識はあるものの、投薬治療のみなので通院する必要はない、義兄が薬を取ってくればいいと主張しています。  ・義兄の「双極性障害ではないか」という素人見立てはどの様に 思いますか?・処方されている薬から類推される義姉の病名は何でしょうか?・最終的な解決策は「義姉が病識をしっかり持ち、治療に前向きに なる」以外にありえないと思います。 そのために家族が義姉、義兄へ何か支援出来る事や相談できる機関と いうのはありますか?

 
林: お義姉様を双極性障害(躁うつ病)であると考える根拠は薄いと思います。
おそらく

毎朝4時頃に目を覚まし義兄に離婚届に判を押す様強制したり、義兄を数時間に渡り罵倒しつづけたり、と思うと突然「死にたい」「殺して」と鬱状の言動を起こすなどの状態にあります。(躁鬱の切り替わりは大体30分~1時間位です)

という状態をご覧になって、躁鬱が見られることから双極性障害(躁うつ病)という病名が浮かんだものと予想されますが、30分や1時間で躁鬱が切り替わる双極性障害(躁うつ病)というものは、皆無とは言えませんが、まずありません。また、このケースの全体の経過を見ても、躁うつ病らしくなく、むしろ統合失調症の可能性のほうが強いといえます。(アルコール問題もありそうですが、このメールの情報からはどの程度のものか判断しかねます)
但し、入院した病院で 解離 と診断されていることはそれなりに重視すべきでしょう。ということは、解離性障害か、または、統合失調症(などの精神病性障害)の経過中に解離の症状を呈したということも考えられます。

最終的な解決策は「義姉が病識をしっかり持ち、治療に前向きに なる」以外にありえないと思います。 

それはその通りですが、(1)まず病識を持ち (2)そして治療に前向きになる という形は、このような病態(統合失調症であるにせよないにせよ、病識が乏しい病態)では現実的ではありません。病識がないこと自体が病気の症状ですから、治療を受けることではじめて病識が生まれてくるものです。 【0919】 【1822】などもご参照ください。(なお、この【2468】の質問文には「義姉には病識はある」と書かれていますが、この状態を病識があるとは呼びません)

そのために家族が義姉、義兄へ何か支援出来る事や相談できる機関と いうのはありますか?

今かかっておられる病院に相談されるのが最善でしょう。すでに病院にかかっておられるのにもかかわらず、それ以外に何らかの機関に相談することで状況が改善するかもしれないとお考えになるのは、非現実的な願望です。今の病院での相談・治療を続けることが改善につながると考えるべきです。

(2013.11.5.)

05. 11月 2013 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 解離性障害, 躁うつ病