【4063】解離性障害か、双極性障害か、それともただの思い込みか

Q: 20代女性です。
うつ病で2年ほど通院をしていたのですが、その治療の過程で
・高校生くらいの頃から、自分の中に2つの人格があるように思う
・1つはとても繊細でもろく、心も弱くて、人に嫌われないか、過去にいじめの経験があるのでまたいじめられたりしないかとびくびくして、何を言われても笑ってやり過ごしたり、嫌なことがあっても口に出せず、頼み事なども断れない
・もう一方はとても攻撃的で、ルールや規則を破ることに良心の呵責がなく、視線に入る人すべてに敵意をむき出しにしてしまったり、通りすがりの人を睨みつけたり、目の前にいる人を刃物などで執念に刺したり、鈍器で頭部がつぶれる程殴るなどの映像が頭の中に浮かんできて、実際にそうしてしまいたくなる衝動にかられる
・また、衝動性があり今後のことを考慮しない行動をとってしまい、刺激を求めてしまう傾向にある為、2つ目の人格の時には、捕まったことはないが犯罪歴もあることを話したところ、1つ目の病院では反社会性パーソナリティ障害の疑いがあると言われ、その後引っ越しをきっかけに転院した先の病院では、「うつ病ではなく双極性障害」と診断を受けました。

転院先の病院でこのことを相談する前に、ネットで反社会性パーソナリティ障害と自分の症状について調べたところ、いくつか疑問点がありました。
1.反社会性パーソナリティ障害は、別人格でのみその症状が現れるわけではなく、もともとの人格がそうだという内容に思えるので、該当しないのではないか
2.自覚している状態としては、2つは全くの別人格であり、入れ替わった瞬間が自分でもわかるし、目つきからして違う。双極性障害のようなハイテンション、全能感、多弁、注意力散漫になり落ち着きがなくなる、などの症状は全くない為、(むしろ冷酷になるイメージ)双極性障害ではなく解離性障害なのではないかと疑っている
3.ただ、長期に及ぶ虐待やいじめなどを経験しているので、原因としては思い当たる節があるものの、解離性障害の症状としてよく取り上げられている「記憶の喪失」がなく、どちらの人格である時も意識はあり、どちらの人格でどのようなことを行っているのかを把握しているので、解離性障害にも当てはまらず、ただの勝手な思い込みなのか

しばらくの間は双極性障害と診断してくれた医師のもとで治療を受けていたのですが、薬を飲んでも状況は変わらずだったため、病院を変えようか、このまま医師を信じて通院を続けるべきか迷っています。

 

林: あなたは解離性障害か、もしくは、解離の色彩のあるうつ状態です。
あなたの自己分析は、下記の通り、非常に冷静かつ正確なものです。

1.反社会性パーソナリティ障害は、別人格でのみその症状が現れるわけではなく、もともとの人格がそうだという内容に思えるので、該当しないのではないか

その通りです。あなたが正しく、あなたの主治医は間違っています。

2.自覚している状態としては、2つは全くの別人格であり、入れ替わった瞬間が自分でもわかるし、目つきからして違う。双極性障害のようなハイテンション、全能感、多弁、注意力散漫になり落ち着きがなくなる、などの症状は全くない為、(むしろ冷酷になるイメージ)双極性障害ではなく解離性障害なのではないかと疑っている

その通りです。あなたが正しく、あなたの主治医は間違っています。

3.ただ、長期に及ぶ虐待やいじめなどを経験しているので、原因としては思い当たる節があるものの、解離性障害の症状としてよく取り上げられている「記憶の喪失」がなく、どちらの人格である時も意識はあり、どちらの人格でどのようなことを行っているのかを把握しているので、解離性障害にも当てはまらず、ただの勝手な思い込みなのか

記憶の喪失がなくても解離性障害を否定する根拠にはなりません。
また、二つの人格の両方の自覚があることは、確かに診断基準上は解離性同一性障害にはあてはまりませんが、実際には別人格の自覚(記憶)があるケースは多々あります。その場合、厳密には解離性同一性障害とは言えませんが、解離と同じメカニズムによる症状であるとみるのが適切です。【3843】人格が切り替わる?【3922】私の症状は解離か、それとも病気のふりをしている詐病者か などもご参照ください。

(2020.6.5.)

05. 6月 2020 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, パーソナリティ障害, 精神科Q&A, 虐待, 解離性障害