【3830】激しい症状が落ち着いてからの統合失調症の妹への接し方について

Q: 私は30代女性です。 妹が統合失調症で4ヶ月程前に幻覚、幻聴、様々な妄想など発症し、異常行動を起こし無理矢理病院に連れて行き即医療保護入院となりました。
妹は5年程前から誰かに尾行されていると発言したり、関わった事の無い他人のブログを一方的に毎日閲覧したうえで、そのブログをやっている方が自分の生活を監視していて自分の真似をしてくる、などと姉である私にだけ話してくれていました。初めはそのような発言も頻度が少なく、私が冗談めかして「それって統合失調症なんじゃないの?」と言ったところ本人も「そうかなぁ。考え過ぎなのかも」と発言していたため私自身も深刻に考える事がありませんでした。しかし5年間で妹の統合失調症による症状は着々と悪化していってしまいました。妹が医療保護入院する前日に起こした行動、発言を箇条書きで記載します。

・妹が長年ファンである歌手がノアの方舟に乗って迎えに来ているからと、私と両親と妹の旦那と旦那の両親を呼び出し、近所の他人の家にノアの方舟が停まっているとインターホンを連打し、家主がその歌手ではないと分かるとワァァと叫び出した。

・黒は悪の色であると好きな歌手がテレパシーで語りかけてきたと言い、家中の黒い物を全て排除し自分の髪の毛も切ってしまった。呼び出された家族全員が身につけていた黒い衣類も全て脱がせた。

・水道業者は悪の組織だからトイレやお風呂は使用できないと発言し、子供用のオムツに排泄をしていた。

・色による戦争が行われており、その戦いを止めることができるのは白色の自分だけだと発言する。

・家族で病院に連れて行ったところ、受診した医師の髪が黒かったので悪の組織の人間だ!と言い、病院から逃亡してしまい近くのコンビニに入り、未精算の白いおにぎりを開封して追いかけて行った私に無理矢理食べさせてきた。(後に妹に前述の行動の理由を聞くと姉の私も病院に無理矢理連れて行こうとしたりしたので黒に染まりかけているから白い物を食べさせて浄化させようとしたとの事)

ご迷惑をおかけしてしまった近所の住民の方やコンビニの方には事情を説明し謝罪をし、警察沙汰にはならずに済みました。

その他にも様々な被害妄想、監視妄想、恋愛妄想、宗教妄想、誇大妄想、関係妄想、幻聴、幻覚といった統合失調症の症状を発症していました。
特に妹が過剰に反応するのは好きな歌手と黒色に対してです。

その後2ヶ月間入院し現在は退院して投薬治療を続けながら何とか生活していますが、好きな歌手のSNSは毎日確認しており、黒色に関しても黒い食べ物は一切口にしなくなってしまいました。しかし症状は落ち着いて消耗期にはいったようで幻覚、幻聴、妄想などについて自発的に発言することは無くなりましたし、家族に対して妄想に関することを強制することも無くなりました。
しかし最近、その好きな歌手のライブに行きたいと言いだし一度両親が承諾し行かせてしまいました。妹は既婚者で子供もいるのでその歌手とは勿論恋愛関係などありませんが、両想いであるように急性期にはしきりに妄想をしていました。そのような理由があって、今後その歌手のライブに行きたいと言ってきた際にどう対応するのが良いのでしょうか?
両親や妹の旦那は息抜きにもなるし、行動を制限し過ぎるのも良くないんじゃないかと考えており、本人が行きたいのなら行かせてあげたいと考えているようです。私も行きたいなら行かせてあげたいと思いますが、それによって症状が悪化してしまったりしないか心配です。また4月から妹の子供が幼稚園に入園することもあり、環境の変化などからくる症状の悪化も心配です。
消耗期に入り無気力、無表情で常にぽーっとしておりますが、急性期のまるで悪夢の様な支離滅裂な行動、発言をしていた妹の姿に比べれば落ち着いてきたようにみえて安堵しております。症状に一番に気がついてあげられた姉である私がもっと早く適切な対応をしていればここまで深刻化しなかったのではないかと自責の念に駆られています。今後妹と共に統合失調症に向き合い、再発する事のないように支えていきたいと思っております。このまま何とか消耗期を乗り越えて、回復期に向かい普通の日常が過ごせるようになって欲しいです。

長文になってしまい申し訳ありません。何卒、統合失調症における消耗期の家族の対応の仕方アドバイス宜しくお願い致します。

 

林: 妹さんはかなり激しい幻覚妄想状態であった様子ですが、治療を受けられることができて何よりと思います。
今の状態、すなわち、

その後2ヶ月間入院し現在は退院して投薬治療を続けながら何とか生活していますが、好きな歌手のSNSは毎日確認しており、黒色に関しても黒い食べ物は一切口にしなくなってしまいました。しかし症状は落ち着いて消耗期にはいったようで幻覚、幻聴、妄想などについて自発的に発言することは無くなりましたし、家族に対して妄想に関することを強制することも無くなりました。

これは不完全寛解と呼ばれるもので、激しい幻覚妄想状態のために入院治療を受けた後の統合失調症の方の退院後の状態として、一つの典型的なものです。

幻覚、幻聴、妄想などについて自発的に発言することは無くなりました

この「自発的に」という表現は、質問者が妹さんの症状をよく把握されていることの表れと思われますが、このように自発的には発言しなくても、実は本人の中ではまだまだ幻覚や妄想があるというのは統合失調症の回復段階や初期段階ではよくあることです。だからこそこれはよくなっているといっても不完全で、まだまだ予断は許さない時期であると言えます。

もちろん入院中に完全寛解にまで回復することもありますが(完全寛解とは、症状が事実上まったくなくなることです)、それよりむしろ不完全寛解でも早めに退院して、家庭や社会で生活していく中でさらなる回復を目指すというほうが望ましいことが多いです。この【3830】のケースもそれにあたると思います。
ただし「さらなる回復を目指すというほうが望ましい」というのは、正しいとは言え抽象的な方針を示しているにすぎず、具体的にどのように接していったらいいかは、ご家族が苦悩されるのが常です。この【3830】の質問はまさにその典型的な一例と言えるでしょう。

今回のご質問のポイントは、

今後その歌手のライブに行きたいと言ってきた際にどう対応するのが良いのでしょうか?

に集約されるかと思います。
これに対する第一の回答は、「主治医の先生にご相談ください」になりますが、ここではそれを前提としたうえで、メールから判断できる範囲で回答いたします。
まず問題を整理しますと、

両親や妹の旦那は息抜きにもなるし、行動を制限し過ぎるのも良くないんじゃないかと考えており、本人が行きたいのなら行かせてあげたいと考えているようです。私も行きたいなら行かせてあげたいと思いますが、

もっともなお考えだと思います。
しかしその一方で、

それによって症状が悪化してしまったりしないか心配です。

そのご心配ももっともです。
そして、

また4月から妹の子供が幼稚園に入園することもあり、環境の変化などからくる症状の悪化も心配です。

環境の変化は、統合失調症の再発や悪化の原因になりやすいですから、そのご心配ももっともです。

ということは、ライブに行くことはメリットもデメリットも十分に考えられ、だからこそこうしてご質問されているということになりますが、ここは、「症状の程度を判断するためにも、ライブに行っていただき、その後に十分にコミュニケーションをとって十分に観察する」ことが勧められます。
家庭や社会での回復の過程では、この件に限らず、それまで慎重に控えていたことを試みなければ次のステップに進むことはできず、回復は停滞することになります。つまり全くリスクなしの前進を期待するのは非現実的だということです。他方で逆に、リスクを顧みずにどんどん先に進むというのはあまりに楽観的な姿勢です。こうした事情から、上記「症状の程度を判断するためにも、ライブに行っていただき、その後に十分にコミュニケーションをとって十分に観察する」という方針が導かれることになります。そしてその結果、症状が悪化するようであれば、次はより慎重に対応するということになります。このような試みを繰り返すことで、着実な回復を目指すことが望まれます。

ただし先に述べたように、主治医の先生にご相談するのが第一です。【3821】主治医はなぜ私の不調に気づけるのでしょうか の回答に記したように、ご家族が気づかない症状の変化や程度を主治医は把握しているものなので、ご家族としてはかなり落ち着いているとみて、ライブに行かせても大丈夫と考えていても、主治医がみればまだまだそれはとんでもないとわかっていることもしばしばあるからです。

(2019.5.5.)

05. 5月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: , |