【3810】脳腫瘍手術から8年半、再発もありましたが回復に向かっています(【2766】のその後)

Q: 【2766】遂行機能障害と脳腫瘍の摘出、精神症状の間に関係はありますか で 貴重なご示唆を頂きました30代男性です。その節はありがとうございました。遅すぎたお礼ではありますが、それからの経過をご報告いたします。

【2766】から4年半、髄膜種の初発からは8年半が経とうとしています。時期等は事情により伏せさせていただきますが、多発性髄膜種の再発があり、再摘出ないし短期間の定位放射線治療を受け、なんとか悪化は食い止められております。また、標準修業年数内にとはいきませんでしたが、お陰様で課程を修了し、現在は定職に就いております。

【2766】に記載した遂行機能障害に相当する症状に対しては、私は、掛かりつけの先生との相談を続けつつ、時間をかけて対処方法を身に付けていく道を選びました。一般社会からは一歩離れた環境の中で、少しずつ、同じ間違いを繰り返さないための方法(例:手書きメモを頻繁に取ることで物忘れに備える、カレンダーの活用による期限管理、実験装置の点検など手を動かし人と対面する仕事へ積極的にコミットすること)を実践していきました。その意味では、結果的に、大学という場で長めの認知リハビリテーションの時期を経たとも言えるのではと個人的に思います。(勿論、そこに通う目的はリハビリが主ではありませんでしたが)

現在は全てが快癒とまではいえないものの、生きづらさを感じることはかなり少なくなりました。【2766】での3つめの質問に対してお答えをいただいた、”4年前より繰り返している「自分は死ななければならない」と時折自分を責める行動” については、2日に1回あるかないかまでに頻度は低下し、あった場合も周期的なものとして客観的に捉えることができるようになってきています。

また、【2766】における林先生のご回答の、

> この問いは難問で、回答困難です。しかし、問題は「関連性」よりも、「いま、現に精神症状がある」こと、そして同時に「高次脳機能障害(遂行機能障害が主)」もあること、これらの事実に尽きます。

および

> 別個であるか否かは、医学を科学と考えた場合には重要ですが、【2766】のご本人にとってはあまり重要ではありません。遂行機能障害と精神症状を並行して治療(認知リハビリテーションを含む)していくことが必須です。

というご指摘により、専門外の科学を相手にして乏しい知識で愚考するのではなく、一人の患者として冷静に現状に向き合って、医療の適切なサポートを受けることがいかに大事なのかに気づくことができました。

メンタルクリニックでの診断は「うつ病性障害」でした。その後就職に伴う転院等ありましたが、髄膜種の治療状況も踏まえた上で真摯に向き合ってくださる素晴らしい医師の方に巡り合えたと思っております。薬はいま減薬の傾向にあり、レクサプロ 10mg 1日1錠、リーゼを頓服で出していただいています。「リーゼの使用頻度次第で、さらなる減薬を考えていいし、レクサプロは離脱症状がそれほど激しい薬ではないので、自分の判断で半錠にして様子を見てみるなど試みてもよい」というご意見です。

今後も、静かに自分の病気と向き合って生きていきたいと思います。林先生にご回答を頂けたこと、重ねて感謝申し上げます。

 

林: その後の経過をご報告いただきありがとうございました。
着実に回復に向かっているご様子を知り、大変嬉しく思っております。

髄膜種の治療状況も踏まえた上で真摯に向き合ってくださる素晴らしい医師の方に巡り合えたと思っております。

それはとても喜ばしいことです。
現実には、医療の世界では(他の世界でも同じような状況であることが常だと思いますが)、自分の専門分野以外についてはお手上げといった医師が多く、脳腫瘍とその手術による高次脳機能障害の影響を理解したうえでうつ病を適切に治療できる医師は少ないというのが現状です。質問者が 素晴らしい医師の方に巡り合えた とおっしゃるのは、まさにその通りだと思います。

あらためて、経過のご報告に感謝いたします。
質問者のさらなる回復を願い、また、信じております。

(2019.4.5.)

05. 4月 2019 by Hayashi
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