【3734】息子が薬が要ると思い込んでいる

Q: 20代の息子は発達障害で2年半くらい前にショックな出来事があった後2年くらい前から色々な症状があります。私は50代の母親です。
主な症状としては、こだわりがひどく、たとえばメモをしないと気が済まない、 写真を撮らないと気が済まない、パンフレットを取らないときが済まないなどの症状があります。
このあいだ、ドライブの練習として近くの施設に行きましたが、パンフレットを事前に何枚にしましょうねと言ったものの、結局気が済まなかったようで、早く帰ろうと言って帰らせようとすると大声を出して喚きだしたり、踊りだしたりしたので仕方なく好きにさせました。
このこだわりによりバイト先に迷惑をかけて、具体的にはジュースの容器(集めているようです)をゴミ袋を漁って持って帰ったそうで、それでクビになりました。
なお、こだわり自体は以前からあったようですが、少なくとも6年前から3年くらい前は比較的落ち着いていました。
正確に言えば、他の趣味に拘っていたので、ある程度害のないこだわりになっていたという面はあるかもしれません。
このこだわりにより不眠?と言いますか、昼夜逆転も出ているようです。

8ヵ月前から精神科に通っていますが、本人の姿勢が間違っているためか改善しません。
本人は病気なんだから理解してほしい、薬がほしいと言いますが私としては自己努力でもう少しどうにかなると思っています。
自己努力の意思がなければ薬を飲んでも治らないと思っています。
一応サプリとして飲んでいたということを伝えて漢方は出してもらっていますが、本人は「リスパダール?」(調べてみると統合失調症の薬だそうです)や鬱の薬がほしいと言っています。
本当に必要であればすでにお医者さんが出していますよね?もしかしたら伝え方が足りないかもしれないが。
一応自分で努力してみなさいと言っていますがどうすればいいかわからないと言います。
私としては、自分で頑張れると思っているのでやってみなさいとか言うのですが、無理なのでしょうか? それとも本人が言うようにお薬が必要なのでしょうか?
最近は薬漬けではなく、薬以外の方法で何とかするとよく見ますが。
本人を直すのは諦めてしまった方がいいのでしょうか。
ちなみに、障害者手帳は出してもらっています。

 

林: 発達障害の治療では、薬が必要なことも必要でないこともあります。

私としては自己努力でもう少しどうにかなると思っています。

それは正しいかもしれませんし、正しくないかもしれません。
ただ確実に言えるのは、仮に質問者が「薬を飲まなくてもよくなる」と思い込むことによって、息子さんに薬を飲むことを禁じているとすれば、それは正しくないということです。
おそらくこのように言えば質問者は、

自己努力の意思がなければ薬を飲んでも治らないと思っています。

と考えているだけであって、決して薬を飲まなくてもよくなると思い込んでいるわけではないし、薬を飲むことを禁じているわけでもない、とおっしゃるでしょう。しかしこのような場合、客観的には、「薬を飲まなくてもよくなると思い込んでいる」「薬を飲むことを禁じている」という状況であるというのは非常によくあることです。その背景には、母親として息子に、精神科の薬を飲むようになってほしくないという願望があると考えられます。しかし願望は願望にすぎないのであって、薬さえ飲めば改善し明るい未来が開けているのに、偏見によって薬を飲むことを禁じてその未来をとざすようなことがあれば、本人をサポートすべき家族として逆のことをしていると言わざるを得ないでしょう。

一応自分で努力してみなさいと言っていますがどうすればいいかわからないと言います。
私としては、自分で頑張れると思っているのでやってみなさいとか言うのですが、無理なのでしょうか?

無理です。そのような指示は、発達障害の人をコーナーに追い込み苦しめる典型的なものです。しかしそれは質問者に非があるのではなく、頑張り方を適切に指導するのが発達障害を治療する医師の役割です。それが薬以外の治療の重要な手法の一つになります。

最近は薬漬けではなく、薬以外の方法で何とかするとよく見ますが。

「薬漬け」というのは、本来必要のない量の薬を投与することで過剰に鎮静することを指しますから、この一文は「薬漬け」という言葉が誤用されています。また同時に、薬物療法についての偏見も垣間見えています。「薬以外の方法で何とかする」ことは、できる場合もできない場合もあります。質問者は息子さんについて、それができると決めてかかっているように見えます。

なおこのように書いてきますと、私がこのケースに薬物療法を勧めているように読まれるかもしれませんが、決してそうではありません。このケースに薬が必要かどうかはわかりません。ただ質問者のように薬が不要と決めつけるかのような姿勢が正しくないことを指摘しているにすぎません。発達障害の薬物療法についてはADHDの薬、それは治療か商売かもご参照ください。(ADHDと発達障害は同じではありませんが、薬物療法の適否の考え方については共通点があります)

この質問メールのタイトルは

息子が薬が要ると思い込んでいる

ですが、同時に、

母親(質問者)は薬が要らないと思い込んでいる

のではないでしょうか。

(2018.10.5.)

05. 10月 2018 by Hayashi
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