【3726】双極性障害で買い物依存症の母を措置入院させたいのですが

Q: 私は20代女性です。 もうすぐ60代になる母親についての相談です。

母は30代から双極性障害にかかって、以来精神科に通っていますが、10年ほど前からインターネットを通じて買い物をすることにハマり込んでしまい、ほぼほぼ毎日自宅に何かしら商品が届くようになってしまいました。中には高額なものや、海外からの輸入のダイエット薬 (この間確認したのはサノレックスというもの)あり、更にネットで精神科の薬を仕入れている可能性も最近浮上し、金銭面だけでなく、精神的に何かしら悪影響が与えているのではないかと心配でなりません。

毎日お金を使うことに危機感はあるのか、働けないからアフィリエイトでお金を稼ぐ!と言い、高額なインターネット講座に毎月参加し、アフィリエイトブログを開設したりしていますが、まったく稼げず損をしているとわかっているのに、自分の実力不足といって講座参加をやめません。
また、インターネットで詐欺にあい、お金を失っても数か月たってしまえば、詐欺にあったことを忘れてしまい、何度も詐欺にあいそうになっています。

被害妄想が強く、何かを指摘すると物を投げつける・叩かれるなど暴力的になってしまったり、「全部わたしのせいにしたいのね!」と話にならず、治る気配は全くなく、パソコンやスマホのショッピングサイトを夜遅くまで見て買うだけの毎日で、父親が仕事や家事全般を行っていましたが最近では精神的・金銭的に限界のようで「俺が殺してしまいそうだ」と口走るほどです。

家族にこれ以上なにか起きる前にと母親をインターネットが断絶された環境に置きたい、どこかに入院させ冷静にさせたいと考え、措置入院を考えるようになったのですが、精神保健福祉法を見ると自傷と他人に害を及ぼしていることが、条件のように解釈いたしました。

母は自傷や、外部の人への害はまったく行わないため、そういった人は措置入院の対象にはならないのでしょうか

 

林:
精神保健福祉法を見ると自傷と他人に害を及ぼしていることが、条件のように解釈いたしました。

その解釈は誤っています。措置入院のための最も重要な要件は「自傷他害のおそれ」であって(質問者の文章にあてはめれば「自傷と他人に害を及ぼすおそれ」)、「及ぼしていること」ではありません。また、「他人」とは自分以外を指しますので、対象が家族であっても「他害」とみなされます。
ですから

母は自傷や、外部の人への害はまったく行わないため、そういった人は措置入院の対象にはならないのでしょうか

という質問に対しては、理論上は「対象になり得ます」になりますが、実務上は、「おそれ」をどう解釈するか、つまり、どのくらいの「おそれ」があったときに、措置入院させるほどの「おそれ」と判断するかは難しい問題で、この【3726】のケースでは自傷他害のおそれありとは判断されず、したがって措置入院の対象にはまずならないでしょう。

もっとも、精神保健福祉法上の主な非自発入院(本人の意思によらない入院)には、措置入院のほかに医療保護入院があり、これは家族等の同意があることが要件で、自傷他害のおそれとは関係ありません。この【3726】は医療保護入院を考慮すべきケースであると言えます。地域の保健所にまず相談されることをお勧めします。

(2018.9.5.)

05. 9月 2018 by Hayashi
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