【3656】彼氏が過呼吸を起こし、口調が幼くなり、その間の記憶をなくす

Q: 恋人の精神状態に不安を覚えているので、メールさせていただきます。
私も彼も18歳です。 (彼の名前を仮にNとします)
普段の彼は、自慢話が多く、いつも会話でより優位に立とうとします。私が何か話をしても、「俺の方が出来る」という返し方が非常に多い人です。また、私が出来ない事に関して小馬鹿にしてきます。しかし、私のことを熱心に愛してくれる人です。会話でマウントを取ろうとしてくることに関しては、もしかして彼は自分に自信が無く、その裏返しなのかもしれない、と勝手に解釈しています。とにかく弁が立ち、他人に厳しい人です。

ただ昔から、反面打たれ弱いところのある人でした。最近、その弱い面が、少々シャレにならない状況まで落ち込んでいるように思うのです。
悪いことが重なると、不安感がどんどん大きくなり、テンションが下がってしまい辛い状態になる、と本人は言っています。彼にはそこまでの記憶しか無いようです。しかし、その後彼の状態はもっと悪化します。
彼の言う「テンションの下がった辛い状態」まで落ちると、だんだん呂律が回らなくなり、大体は過呼吸を起こします。この時、私の呼びかけには反応しなくなります。
呼吸が落ち着いてくると、だんだん会話ができるようになりますが、まるで子供のような口調になります。もちろんいつもとは全く違う拙い言葉で、素直に自分の感情(離れたくない、苦しい等)を伝えようとします。
その状態の彼を抱きしめたり、なだめたりしているうちに、ふっと急にいつもの彼に戻ります。本人曰く、過呼吸直前からいつも通りに戻るまでの記憶は無いそうです。

私は、私とやり取りをしている時の彼しか知らないのですから当然なのかも知れませんが、彼が過呼吸を起こすきっかけが私であることが多いように感じます。
今までには、喧嘩をして私が怒っていたら、震えだして過呼吸を起こし、幼い口調になる。
「死にたい、消えてしまいたい」と言っているので話を聞いていたら過呼吸を起こし、「離れちゃやだずっといっしょ」と言って泣き出す。
「もし私が音信不通になったら…」という話の音信不通という語に反応し、過呼吸を起こして「いやだ」と訴える。
などがありました。

彼の不安の原因の中で、主要なものは2つなのかなと私は思っています。
一つ目は金銭的な不安(彼の家は経済的に苦しく、彼は高校の奨学金や自動車学校のローンの返済、生活費を稼ぐことに追われている)、
二つ目は自分に対しての不満(頑張らなければならないのに朝起きられない、不安感で行動が出来ないことがある、などのことに歯がゆさを覚えている)

また、私が彼から離れることを不安がっているようにも見受けられます。

これからも彼とお付き合いをしていく上で、彼のような状態は病気であるのか、また私はこういった状態の彼とどう向き合うのが適切なのかが知りたいです。
心療内科などに連れていくことも考えるべきでしょうか。

 

林: 彼は自己愛性パーソナリティ障害にあたると思います。

普段の彼は、自慢話が多く、いつも会話でより優位に立とうとします。私が何か話をしても、「俺の方が出来る」という返し方が非常に多い人です。また、私が出来ない事に関して小馬鹿にしてきます。しかし、私のことを熱心に愛してくれる人です。

まずこの記載から、彼の自己愛(ナルシシズム)はかなり強いことがわかります。そしてそれはそのまま自己愛性パーソナリティ障害の特徴でもあります。

会話でマウントを取ろうとしてくることに関しては、もしかして彼は自分に自信が無く、その裏返しなのかもしれない、と勝手に解釈しています。

これは質問者の鋭い洞察を表しています。自己愛性パーソナリティ障害(または障害レベルまでいかなくても、自己愛の強さが表面化している人)が、自分の優位性を事あるごとに強調しようとするのは、実は自分に自信がないことの裏返しであるというのはよく言われていることです。自信のなさから自分を守ろうとしているということもできるでしょう。

ただ昔から、反面打たれ弱いところのある人でした。

これも、自信のなさを反映しているとみることができます。自己愛性パーソナリティ障害(または障害レベルまでいかなくても、自己愛の強さが表面化している人)は、自尊心を傷つけられることに過剰といえるほど敏感なのが常です。(それが暴力のような攻撃行動として現れるケースもあります。【3653】暴力をしてくるのに特に異常なしと診断されましたはその典型例といっていいでしょう)

彼の言う「テンションの下がった辛い状態」まで落ちると、だんだん呂律が回らなくなり、大体は過呼吸を起こします。この時、私の呼びかけには反応しなくなります。
呼吸が落ち着いてくると、だんだん会話ができるようになりますが、まるで子供のような口調になります。もちろんいつもとは全く違う拙い言葉で、素直に自分の感情(離れたくない、苦しい等)を伝えようとします。
その状態の彼を抱きしめたり、なだめたりしているうちに、ふっと急にいつもの彼に戻ります。本人曰く、過呼吸直前からいつも通りに戻るまでの記憶は無いそうです。

これは解離です。それもかなり典型的な解離です。このような時、別人格が現れれば、解離性同一性障害と診断されることになります。
自己愛性パーソナリティ障害は、解離性障害とかなり重なる部分があります。というより、現代の診断基準では仮にそれぞれを別の障害に分類していると言ってもいいでしょう。両方を包括するB群パーソナリティ障害という用語もあります。美少女L、その他、の虚言をご参照ください)

彼の不安の原因の中で、主要なものは2つなのかなと私は思っています。
一つ目は金銭的な不安(彼の家は経済的に苦しく、彼は高校の奨学金や自動車学校のローンの返済、生活費を稼ぐことに追われている)、
二つ目は自分に対しての不満(頑張らなければならないのに朝起きられない、不安感で行動が出来ないことがある、などのことに歯がゆさを覚えている)

また、私が彼から離れることを不安がっているようにも見受けられます。

どれも的確な推定です。質問者(18歳)の洞察力は素晴らしいと思います。

心療内科などに連れていくことも考えるべきでしょうか。

考えるべきです。けれども、この【3656】のケースに適切に対応してもらえる心療内科・精神科は多くないかもしれません。

これからも彼とお付き合いをしていく上で、彼のような状態は病気であるのか、また私はこういった状態の彼とどう向き合うのが適切なのかが知りたいです。

「自己愛」「解離」「パーソナリティ障害」などをキーワードにお調べください。精神科Q&Aの中の関連したケースと回答もある程度は参考になると思います。

(2018.4.5.)

05. 4月 2018 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 精神科Q&A, 解離性障害 タグ: , |