【3522】精神病の家族に優しい気持ちを持てるようになりたいです  

Q: 20代女性です。いつも興味深くQ&Aを拝読させていただいております。
皆様の深刻なご病状の質問などを拝見していると、わたしの悩みはほんとうに些細なことのようですが、出来れば先生のご意見をお伺いしたいです。

わたしは20代の女性です。精神疾患・精神障害への差別意識、嫌悪感、恐怖感が強く、精神疾患の家族に対して優しく接することが出来ずに悩んでいます。

まず、恐怖感を抱くようになったきっかけは、小学生の頃、当時同じく小学生だった妹が、親に叱責されたストレスで記憶喪失を発症したことにあります。
全く話が通じなくなり不登校になった妹、妹を労わりつつ毎日陰で泣いている親、そういう家族の姿を見て強いショックを受けました。そして、わたしは決して妹のようにはなりたくないという気持が生まれました。
その後、妹は中学まで不登校でしたが、高校は不登校の生徒でも通える学校に進学し、時折不調はあるにせよ、楽しく過ごしたようです。フリーターや専門学校等を経て、数年後には就職もすることが出来ました。

ところが、家族内で精神に問題を抱えているのは妹だけではありませんでした。
同居している父方の叔父は昔からパニック障害を持っておりましたし、ある時期には同じく同居の父方の祖母、そして父が、立て続けにうつ病を発症しました。
事ここに至って、わたしは『この家族には、あまりに精神疾患が多いのではないか。とりわけ父方の血筋に、問題を起こしやすい精神的素質があるのではないか』と考えるようになりました。そしてその発想は『それはわたしにも遺伝しているはずだ、わたしもいずれ精神疾患になるのではないか。もしくはわたしが子供を持った場合、その子供が精神疾患になるのではないか』という恐怖を引き起こしました。

そして今度は、精神疾患・精神障害への嫌悪感を強める経験が続きました。
就職した際、直属の上司ととても折り合いが悪くなり、いびられるようになりました。上司の支離滅裂な言動や行動を批判したことが原因です。のちに上司が解雇されると、同僚や先輩方が「あの人は発達障害の疑いで有名だった」と教えてくれました。実際に彼が発達障害だったかどうかは分かりません。しかし、そうと聞くと腑に落ちる部分は多く、また会話の出来ない様子が父や妹の病状の記憶とも重なり、元上司への憎悪がそのまま精神障害への嫌悪と差別意識につながってしまいました。
さらに、就職し、一人暮らしに挑戦した妹が、わずか数ヶ月でうつ病を発症して辞職、実家に帰ってきました。そこまではまだ同情していたのですが、病状が悪化して大きな自傷行為に及んだ際、うろたえて泣く家族たちを尻目に、自分の救急搬送の模様をSNSでテンション高く実況している様子を見て、同情心が完全に失望と軽蔑へ変わりました。「病気のせいにせよ何にせよ、彼女はもうどうにもならない、駄目な人間なのだ」と思うようになってしまったのです。

今現在、わたしを除いて、家庭内の関係は良好です。わたしと両親祖父母、妹と両親祖父母、それぞれ仲良く暮らしています。ただ一人わたしだけが、妹のことをどうしようもなく嫌悪し、蔑視し、努めてそこにいないかのように扱ってしまいます。
また、まだうつ病が完治していない父が時折意味不明な行動や言動を取る時にも、冷たい態度を取ってしまいます。
精神疾患の身内を持つ者として、最低の態度だと思います。疾患に対してあまりに理解のない子供じみた振る舞いだとも思います。わたしの態度が疾患を悪化させているのではないかとも思います。現に今、家族関係に問題を生じさせているのは疾患ではなく、他ならぬわたし自身だという自覚もあります。
しかしわたし自身ではこの嫌悪と恐怖をどうにも出来ず、かといってこんなことを相談可能な相手もいません。(一度だけ先輩に打ち明けたところ、「あなたは血に囚われすぎている、家族はあなた自身ではないのだから、そんなに気にすることはない」と言われました。なるほどという気持と、腑に落ちきらない気持が半々です)

ここまで書いて、あまりに自分本位な内容に我ながら幻滅してしまいました。
林先生、精神疾患の身内に対して、家族の者は一体どういった心持ちで接するべきなのでしょうか。
一体どうすれば、わたしは家族に優しくできるのでしょうか。
ご教示いただけましたら幸いです。

 

林:
精神疾患・精神障害への差別意識、嫌悪感、恐怖感が強く、精神疾患の家族に対して優しく接することが出来ずに悩んでいます。

まず上記の前半部分、すなわち、

精神疾患・精神障害への差別意識、嫌悪感、恐怖感が強く、

この部分については、ご自分の気持ちを否定せずに認識することが第一です。認識したうえで、ではどうすべきかと考えるのが出発点です。

そしてこの認識についてあらためて見直してみますと、このメールに書かれていたようなご経験からすれば、精神疾患とされるご家族のために苦悩されてきたことは事実ですから、そこから嫌悪感や恐怖感が生まれるのは理解できることです。

但し、それが「精神疾患・精神障害」一般に対する差別意識、嫌悪感、恐怖感に繋がるのは不合理です。

ここまで書いて、あまりに自分本位な内容に我ながら幻滅してしまいました。

とお書きになっていますが、メールに書かれている内容は「理解できる内容」と「自分本位な内容」の両方があると思います。
「精神疾患・精神障害への差別意識、嫌悪感、恐怖感」は不当なものですし、そもそも精神疾患・精神障害への誤った認識から生まれているものですが、ある特定の一人、あるいはある特定の一部に対しては、恐怖感をお持ちになるのは自然という場合があり得ることは事実です。これは対象が精神障害者でなく健常者であっても同じことです。健常者の一部に対しては嫌悪感や恐怖感を持ち、その一方で精神障害者に対してはいかなる場合も嫌悪せず恐怖もしないというのは非現実的ですし、欺瞞でさえあります。【0075】精神障害者の犯罪についてもご参照ください。

なお、この【3522】のケースの妹さんは、うつ病ではないでしょう。擬態うつ病です。(だから精神疾患ではない、という意味ではありません。うつ病ではないという文字通りの意味です)
また、お父様については、

父が時折意味不明な行動や言動を取る

しか記載がなく、具体的内容が不明なので何とも言えませんが、うつ病ではない可能性もかなりあると思います。

嫌悪し、蔑視し、努めてそこにいないかのように扱ってしまいます。

冷たい態度を取ってしまいます。

質問者のこうした振る舞いは、

精神疾患の身内を持つ者として、最低の態度だと思います。

最低かどうかはともかく、不適切な態度です。

疾患に対してあまりに理解のない子供じみた振る舞いだとも思います。

その通りです。

わたしの態度が疾患を悪化させているのではないかとも思います。

そうかもしれません。

一体どうすれば、わたしは家族に優しくできるのでしょうか。

嫌悪、恐怖など、ご自分の気持ちを正面から認識することがまず必要です。
また、精神疾患についての正しい知識も身につける必要があるでしょう。

ご自分の正直な気持ちを否定して発露される優しさは、偽りの優しさでしかありません。

(2017.9.5.)

05. 9月 2017 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A