【3495】物静かだが、幽霊みたいにひんやりと不穏な感じの知人(【3408】のその後)
Q: 【3408】知人が突然悪の組織などと漫画じみた奇妙なことを言い立てて興奮している の質問者(40代女性)です。あれからその知人の家族が半ば無理矢理知人を入院させました。懸念していた薬物使用に関する指摘は医師からはなかったそうで、統合失調症にも用いる薬が投与され、当初は荒れていたものの治療が進むにつれ穏やかさが戻りました。ただ妄想はずっと強固なままで、その点薬の効きは良くなかったそうです。
退院後の現在、家族によれば、妄想は続いていますが暴力は幸い一切なく、近所迷惑な言動も今のところない。体調や気分の波も傍目にはなく穏やか、基本的に規則正しい生活が送れている。なので、過去はわからないが、現在何らかの薬物を摂取している可能性は低いと感じるとのことでした。
ただ猜疑心が強く周囲を信用しないのは入院前と変わらず、家族との会話も現在ほぼ皆無、頻繁な外出に際し誰かに行き先を告げることもない。病識もなく通院・服薬を拒否。家族が目を通してほしい書類を渡したりすると、常にではないですが、時に支離滅裂な批判を細かい字で何枚にも渡りびっしり書き込んで返してくる、などといった状況です。書類の現物を見せてもらいましたが、未知の単語がふんだんに文章に盛り込まれ、検索してもいずれもヒットしませんでした。どうやら知人が独自に編み出した単語だったようです。奇怪で不可解なその文章を一ページ読んだだけで、車酔いに似た気分に陥ってしまいました。
最近久しぶりに本人に会いましたが、何だか異世界の住人のようでした。物静かでもくつろいだ印象はなく、幽霊みたいにひんやりと不穏な感じの警戒心の塊。やはりこの時も車酔いに似た気分に襲われてしまい、申し訳ないと思いつつも、ごく短時間しか知人のそばにはいられませんでした。
前回頂いた先生のご回答に、実はかなりの衝撃を受けました。大麻の可能性は以前から度々考えましたが、覚醒剤は考えていませんでした。しかし質問には書かなかった事柄も含めて改めて照らし合わせると、覚醒剤の症状と言われるものに、確かに七割程度までは合致するような気がします。またこの薬物は再犯率の高さで有名ですが、特に中高年は八割近くが再び手を出すとも知り、さらに衝撃を受けています。大麻でも十分恐ろしいですが、覚醒剤となると恐ろしすぎて考えるのも辛いです。
ただ暴力的になる、多量の水分を必要とする、絶食の後過食するという特徴は、知人の場合当てはまっていません。口渇がない以上覚醒剤の影響ではない、などということは有りますか。それとも、暴力も口渇も反動の過食も無い覚醒剤乱用者も存在するのでしょうか。
また乱用によって慢性的な精神病状態に陥った場合でも、それでも大麻でそうなった方が覚醒剤でなるより予後がまだまし、などということは有りますか。それともいったんそうなってしまったら、使用した薬物が何であれ予後は同じようなものなのでしょうか。
そして、知人がそもそも薬物など一切使用していない可能性も、もちろんまだ残っていますよね。何よりそうであってほしいです。
林: 何はともあれ治療が開始できてよかったと思います。まだ改善は不十分のようですが、さらなる改善を目指して、慎重に治療を受け続けていくことが望まれます。
なお質問者は、どうも「薬物による精神病のほうが統合失調症より重大で深刻」というイメージを持っておられるようで、それは、
知人がそもそも薬物など一切使用していない可能性も、もちろんまだ残っていますよね。何よりそうであってほしいです。
という文章にも表れていますが、的外れな感覚と言わざるを得ません。
もちろん違法行為という意味では、薬物使用のほうが重大な問題ですが、病気としてどちらが重大ということは言えません。薬物による精神病は薬物をやめれば回復すると一般的には言えるのに対し(但し慢性化することはあり得ますが)、統合失調症はそうではないので、病気としてはより重大と考えることもできます。
なお、
何だか異世界の住人のようでした。物静かでもくつろいだ印象はなく、幽霊みたいにひんやりと不穏な感じの警戒心の塊。
という描写は、昔から統合失調症に特徴的とされている プレコックス感 に一致するものです。現代ではこの言葉はあまり使われなくなっていますが、統合失調症の方の一部に特徴的に見られるという事実は昔も今も同じです。
(2017.8.5.)