【3213】急性一過性精神病性障害と統合失調症の違いは何ですか(【3149】の追記)

Q: 【3149】急性一過性精神病性障害とは?の質問者(父親。50代)です。丁寧な御解説、誠にありがとうございました。
ただ、私の説明が舌足らずであったため、一部誤解を招いてしまったようです。申し訳ありません。

経緯をもう一度簡単に整理します。

(1)3年ほど前
今から思えば、軽く発症していたようですが(誰かに見張られている、など)、そのときは精神病とも思わず、1か月ほどで自然治癒した。

(2)1年半ほど前
急性症状となり、2か月弱入院。急性一過性精神病性障害と診断。退院後、薬をコントミンからジプレキサに変更。その後、すっかり元通りになり、現在までこの一年強は何事もなく過ごしているが、ジプレキサは続けている。

そこで改めて質問ですが、上記の経緯からも、やはり急性一過性精神病性障害ではなく、統合失調症と考えるべきでしょうか?

すっかり元通りになっている現在、今後再発する可能性は高いのか、いずれは薬をやめてよい時期が来るのか、が気になっています。

たびたびすみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

 
林: 追加情報をありがとうございました。

上記の経緯からも、やはり急性一過性精神病性障害ではなく、統合失調症と考えるべきでしょうか?

はい、統合失調症です。

(1)3年ほど前 と (2)1年半ほど前 という2回の精神病症状が認められた時点で、すなわち、(2)は再発と判断することができますので、この時点で統合失調症と診断することができます。
【3149】の解説と重複しますが、急性一過性精神病性障害とは、「急性」で「一過性」の「精神病性障害」です。このうち「急性」と「一過性」は文字通りの意味です。「精神病性障害」とは、診断基準(ICd-10)で「典型的な症候群」とされるもので、その中には統合失調症と、いわゆる「多形性」と呼ばれる、多様な状態が含まれています。
この【3213】のケースは、ある横断面の(つまり、ある時期における)症状としては統合失調症に一致しています。するとそれが「急性」で「一過性」であれば「急性一過性精神病性障害」ですが、「急性」でないか、または「一過性」でない場合、急性一過性精神病性障害という診断は棄却され、統合失調症という診断になります。
【3149】の解説に記した通り、急性一過性精神病性障害という診断名がつけられるのは、ひとつはその症状が急性に現れ、その後どれだけ持続するか不明の場合です。本来はこのような場合は(これも【3149】に記した通り)一過性かどうかはまだわかりませんので、この診断名は厳密にはあてはまりませんが、実地臨床では様々な理由から暫定的に急性一過性精神病性障害という診断名をつけることがあります。しかしその後の経過により診断名は統合失調症に変更されることが大部分です。この【3213】のケースはそれにあたります。【2115】急性一過性精神病と診断された妻の経過
も同様です。

それに対し、急性一過性精神病性障害の可能性がありと言えるケースとしては、
【2139】妻の妄想が2,3日で消えました【2140】十代の時に統合失調症と診断されましたが、今は何でもありません。誤診だったのでしょうか。

などを挙げることができます。

(2016.5.5.)

05. 5月 2016 by Hayashi
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