【3052】平気でどこまでも嘘をつく知人‏

Q: 私は50代女性です。知人についての相談です。

もともと社会運動などに興味を持っていた人物ですが、ある時期から、「最高裁事務総局が日本を支配している」などと言い出すようになり、さらに、重要人物から「告白の電話」がかかってくるようになると言い出すようになってきました。

具体的には、(検察の起訴を審査する)検察審査会が架空であるとブログで主張するようになり、それ自体は表現の自由であるとは思いますが、2012年の検察書類がインターネットに流出した事件の真犯人から告白の電話をもらったなどとブログで主張しています。

その挙げ句、この検察書類ネット流出事件は元国会議員が黒幕だとブログで書いて、名誉毀損で訴えられました。ただし、所詮は個人のブログである上、あまりに内容が荒唐無稽だということで、そもそも信じる人がいないだろうという理由と、公人はそういったことも含めて批判に晒されることはやむを得ないという理由で、裁判自体は、元議員の賠償請求は棄却になったのですが、本人は、これに勢いづいて(自分の主張が認められたと勘違いしたようです)、言動をエスカレートさせるようになりました。

その他、実際には自分から押しかけたシンポジウムの懇親会に、「地図をもらって誘われたから、その気はなかったのに、渋々行った」などと次から次に嘘をつきまくっているのですが、どうも、嘘をついている自覚は全くなく、真犯人から告白の電話をもらったというようなことも含め、本当にそう信じているようです。また、それ以外にも、裁判でこの人物に都合の悪い証言に関しては、その証言者は、「裁判で嘘の証言をするから」という告白の電話をかけてくるのだそうです。

いずれにしても、明らかに事実ではないことでも、おそろしいほど自信満々に、事細かに微に入り細にうがった話をするので、気味が悪いです。(しかし考えてみれば、3年も前のことを、詳細に記憶しているというのも不自然な感じもします)

この方の言動は、どう解釈したらよろしいでしょうか。

 

林: この方には「病的な虚言あり」ということができます。
病的な虚言とは何か。現在、それには答はありません。

この方の言動は、どう解釈したらよろしいでしょうか。

どう解釈するか、また、これを病気とみるべきかどうか。虚言をめぐるこうした問題については 虚言癖、嘘つきは病気か をご参照ください。本一冊全体をご参照くださいというのは回答とては適切とは言えないかもしれませんが、虚言は現代の精神医学の死角にあり、残念ながら簡潔に説明することは不可能です。

しかしそれではあんまりですので、ほんの少しだけ説明をつけ加えますと、虚言癖、嘘つきは病気か で挙げている虚言キーワードのうち、この【3052】は、

たくさんの嘘をつく
普通では考えられない嘘をつく
かなり細かい話を作り上げる
は確実に満たし、
虚実の混乱
湧き出るストーリー
もありそうです。
さらには
自己顕示
自己肥大
もありそうです。
ここまででも、【3052】は病的な虚言者としてかなり典型的といえます。
虚言キーワードのその他の項目、たとえば
虚言の瞬間は無自覚
我こそは被害者なり
メリット欠如 — 虚言のための虚言
懲りない
独特の倫理道徳観
などはどうでしょうか。是非ご確認ください。おそらく虚言癖、嘘つきは病気かのどれかの実例にかなり似たケースだと思います。

(2015.9.5.)

05. 9月 2015 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 虚言