【3026】双極性Ⅱ型障害と、光トポグラフィ、磁気治療、栄養療法について

Q: かれこれ約10年前【0914】診療に不満なのですが、このくらいは普通なのでしょうか(2005.11.5.)
として質問させていただきました際には、ほんとうにありがとうございました。現在は就労できず障害者3級を取るまでになり、年齢も39歳になりました。

このたびは、そのようなつらい病状がいつになったら消えるのだろうかという忸怩たる思いで受けた光トポグラフィーからたどり着いた、栄養療法というアブローチについてお訊ねしたくご見解をうかがえれば幸いに存じます。

脳の血流量を計る光トポグラフィー検査での結果、わたしは双極性障害Ⅱ型と判断されました。
現在の主治医も同じ診断で、薬はリチオマール200mg(1錠/朝・晩・寝る前)、コントミン(1錠/寝る前)、エビリファイ6mg(1錠/朝)、ミルナシプラン(1錠/晩)、リボトリール0.5mg(頓服6錠まで)、ブロチゾラム(2錠/寝る前)を処方されております。

ですが、一向によくならず、この10年間より悪くなっているような印象すらあり、仕事も転々と去就を繰り返さざるを得ずみずからの人生に疲労を感じていたときに出会った光トポグラフィー検査でした。そしてその際の、この磁気刺激治療の提案は魅力的でした。

ですが、保険適応外であること、症例数がまだ少ないということ、治る確率もあまり高いとは言えないこと、を理由に家族から反対をされました。
また、以前わたしが家族が当たっていた腰の磁気治療器に座ったとき、気分が悪くなったことを覚えていた母が、「あなたには磁気はあわない」と言い出したのです。

わたしは薬で限界があるならば、受けたいという気持ちが正直強かったのですが費用とリスクを考えた結果、脳に血流が行けばいいのではないか、と思い至り、調べたところ、栄養素から鬱を治していくというアプローチがあることを知りました。

いま、一筋の希望と思い、すがりつく思いでサプリメントを飲み始めています。
一週間ほど経ちましたが、気分は偽薬効果もあるのか、そんなにすぐ効くはずもないのに上々で、主治医にも「なんでもいいから、いいと思うものは取り入れなさい」と言っていただいております。

長くなりましたが、光トポグラフィー検査という方法に関して、また栄養療法というアプローチがどれくらい有効であるかどうかにつきまして、ご意見をうかがえれば幸いです。
何卒宜しくお願い申し上げます。

 

林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。

この質問者には、信頼できる精神科医をみつけ、その先生の指示にすべて従うことをお勧めします。なぜなら、中途半端な知識に基づくと思われる誤解が、このメールの記載の中にはあまりに多いからです。これでは、誤った自己判断に基づき深刻な事態に陥るか、悪意をもった人間に騙されるという結末になることは明白です。ですから繰り返します。信頼できる精神科医をみつけ、その先生の指示にすべて従うことをお勧めします。

「中途半端な知識に基づくと思われる誤解」とは、次のようなものです。

脳の血流量を計る光トポグラフィー検査での結果、わたしは双極性障害Ⅱ型と判断されました。

光トポグラフィー検査で、双極性障害Ⅱ型と診断することはできません。光トポグラフィー検査は、あくまでも診断の補助としてしか使えず、確定診断のツールとして使うことはできません。
この誤解(脳の検査に対する過剰で非現実的な期待)は比較的蔓延しているので、この【3026】の質問者に特有な誤解とは言えませんが、以下の誤解は平均から逸脱しています。

・・・出会った光トポグラフィー検査でした。そしてその際の、この磁気刺激治療の提案は魅力的でした。

光トポグラフィー検査と磁気刺激治療は全く別のものです。したがってこの文章は意味不明です。質問者は、ご自分の理解を超えたハイテクの診断や治療について、大きく誤解し、非現実的な期待を持っていると思われます。

また、以前わたしが家族が当たっていた腰の磁気治療器に座ったとき、気分が悪くなったことを覚えていた母が、「あなたには磁気はあわない」と言い出したのです。

お母様のこの意見も荒唐無稽です。腰の磁気療と脳の磁気刺激には何の関係もなく、そもそもお母様の治療経験に基づき娘の治療適応を語るのはでたらめです。

わたしは薬で限界があるならば、受けたいという気持ちが正直強かったのですが費用とリスクを考えた結果、脳に血流が行けばいいのではないか、と思い至り、

浅薄で非科学的な思い至りです。

調べたところ、栄養素から鬱を治していくというアプローチがあることを知りました。

エセ治療です。

いま、一筋の希望と思い、すがりつく思いでサプリメントを飲み始めています。

お金の無駄です。
しかし、

一週間ほど経ちましたが、気分は偽薬効果もあるのか、そんなにすぐ効くはずもないのに上々で、主治医にも「なんでもいいから、いいと思うものは取り入れなさい」と言っていただいております。

という考え方もあるでしょう。治療という観点からはそのような考え方は否定できません。しかし精神科Q&Aは事実を伝えるものですので、無意味な治療は無意味であると回答します。うつ病に対するサプリメントはお金の無駄です。

長くなりましたが、光トポグラフィー検査という方法に関して、また栄養療法というアプローチがどれくらい有効であるかどうかにつきまして、ご意見をうかがえれば幸いです。

上記の通りです。光トポグラフィー検査は、診断の補助としては有効ですが、診断を確定することはできません。またこれは検査であって、治療ではありません。栄養療法はうつ病には無効です。

それはそうと、経過のご報告をいただいたことに感謝いたします。

(2015.8.5.)

05. 8月 2015 by Hayashi
カテゴリー: サイトの方針, 精神科Q&A, 躁うつ病