【4516】私は急性一過性精神病性障害と統合失調症のどちらなのか

Q: 現在3年ほど急性一過性精神病性障害と診断されている30代の男です。

診断としては初期は適応障害、次に急性一過性精神病性障害となりました。
発病から現在までの流れとしては発病当初は幻覚(本が早く読める、テレビに監視されてる、様々な色の勢力から狙われている、)、幻聴(居ないはずの同僚の声が聞こえる)、幻臭(道路から甘い匂いを感じる)、休みの日なのに通勤するなどの症状が十日間程あり最終的に自宅で妄想状態が酷くなり、赤い虫に襲われるという妄想に襲われて、入院となり薬を飲まされたかはわからないですが一日程で症状がなくなり、3ヶ月の入院を経てその後9ヶ月程リワークに通い現在は転職先の会社に勤めてます。
病気にかかる前の心当たりのある原因としては仕事は残業が月十時間あるかないかくらいと、国家資格の教育に二週間程土日に通い詰めたり、お酒を一気飲みしていました。
あと妄想状態のときには胃薬のような漢方を10袋くらい同時に服用などがありました。

服薬の状況としては当初アリピプラゾールを12mg、一年半後9mg、6ヶ月後6mgと処方されてます。
今の精神面の状況としては普通で楽しく過ごしていて、発症前と変わらない仕事がこなせていて残業は一日一時間あるかないか位で、国家資格の取得や勉強などできてます。また旅行や運転などもできています。認知や判断や行動面思考力も変わらない感じです。生活も規則正しく行ってます。

質問としては
1.私は急性一過性精神病性障害と統合失調症のどちらなのか、主治医的にはどちらかわからないと言われているのですがどちらなのでしょうか?

2.何年間治療したらいいのか?当初の担当の先生には一年で薬飲まなくて良くなりますと言われていたのですが半年で担当が変わり減薬の治療方針の連携が行われずに一年たったあとまた担当が変わりその時に改めて減薬の依頼をして調整してもらってます。6mgが最低維持容量だとの話しでそこから先は慎重にと伺いました。

3.減薬の方法としては次に3mgになったのですがネットの論文などを見ると25%未満ずつ調整していったほうがいいとあったのですが隔日で服薬したりして一週間の平均をそれくらいにしたほうがいいのでしょうか?

4.米国のHollandという薬理学者の話で最初の5年間投薬していたらその後の再発率が20%で投薬しなかった場合は50%というのは本当でしょうか?

5.Dr.Fusar-Poliの文献で急性一過性精神病性障害の約33%が8年後までに少なくとも1回の入院をするとあったのですが本当でしょうか?治療としては抗精神病薬を推奨しなく、綿密な監視と認知行動療法を推奨するとあったのですが本当でしょうか?

 

林:
1.私は急性一過性精神病性障害と統合失調症のどちらなのか、主治医的にはどちらかわからないと言われているのですがどちらなのでしょうか?

【3149】急性一過性精神病性障害とは? などの回答にも記した通り、急性一過性精神病性障害とは、「急性」で「一過性」の「精神病性障害」です。このうち「急性」と「一過性」は文字通りの意味です。「精神病性障害」とは、ごくシンプルには「幻覚や妄想が現れる精神障害」を指し、より正確に説明するとすれば、診断基準(ICD-10)で「典型的な症候群」とされるもので、その中には統合失調症と、いわゆる「多形性」と呼ばれる、多様な状態が含まれています。

定義は上の通りですが、実際に急性一過性精神病性障害という診断名がつくのは、次の二つの場合です。
(1) その精神病症状が、急性で、かつ、一過性であった場合
(2) その精神病症状が急性に現れたが、その後どれだけ持続するかは不明の場合

これに照らしてこの【4516】のケースを見ますと、すでに発症から3年が経過している現在でも治療が続けられているわけですから、「一過性ではない」と判断されているということになります。一過性であれば治療を続ける必要はないからです。

急性一過性精神病性障害と統合失調症のどちらなのか、主治医的にはどちらかわからないと言われている

ということは、現在は、「治療の必要はないかもしれないが念のため治療を続けている。」ということになるでしょう。

私は急性一過性精神病性障害と統合失調症のどちらなのか

それは治療を中断してみない限りわかりません。
そうなりますと、当事者やご家族は「統合失調症でないなら治療を続ける必要がないのであれば、いったん治療を中断して診断を確定したい」とお考えになるのが自然だと思われますが、現実には、治療を中断して再発した場合のことを考えると、「診断確定のために治療を中断する」のが適切かどうかはかなり慎重に考える必要があります。「再発したらまた治療すればいい」と単純に考えることは危険です。再発したときの症状は壊滅的になるおそれもありますし、また、再発を繰り返すと統合失調症の治療薬は効きにくくなるという事実もあるからです。

2.何年間治療したらいいのか?当初の担当の先生には一年で薬飲まなくて良くなりますと言われていたのですが半年で担当が変わり減薬の治療方針の連携が行われずに一年たったあとまた担当が変わりその時に改めて減薬の依頼をして調整してもらってます。6mgが最低維持容量だとの話しでそこから先は慎重にと伺いました。

このご質問に対する回答は上の1.の通りです。

3.減薬の方法としては次に3mgになったのですがネットの論文などを見ると25%未満ずつ調整していったほうがいいとあったのですが隔日で服薬したりして一週間の平均をそれくらいにしたほうがいいのでしょうか?

必ずしもそこまで厳密な手順を取る必要はありません。(そもそも「ネットなどの論文」の記載内容を信ずることはお勧めできません)

4.米国のHollandという薬理学者の話で最初の5年間投薬していたらその後の再発率が20%で投薬しなかった場合は50%というのは本当でしょうか?

このご質問は二つの意味に解釈できます。一つは、(1)この「米国のHollandという薬理学者の話」が本当か、という意味。もう一つは、(2)この「米国のHollandという薬理学者の話が本当」だったとして、それは統合失調症全体に一般化できるのか、という意味です。
(1)については、そういう論文がある以上は「本当です」というのが答えになります。(2)については、この薬理学者の話に限らず、「研究結果のデータというものは、その研究の条件下でのデータでしかない」というのが答えになります。それがどこまで一般化できるかはケースバイケースです。

5.Dr.Fusar-Poliの文献で急性一過性精神病性障害の約33%が8年後までに少なくとも1回の入院をするとあったのですが本当でしょうか?治療としては抗精神病薬を推奨しなく、綿密な監視と認知行動療法を推奨するとあったのですが本当でしょうか?

このご質問に対する回答は上の4.の通りです。

(2022.6.5.)

05. 6月 2022 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: , |