【4414】弟は統合失調症として治療を受けていますが、症状は身体中の痛みだけなのです

Q: 30歳の弟について先生のご意見を頂きたいです。私は30代の姉です。
5年前に統合失調症と診断されましたが症状が何も変わらず困っています。
かなり長文になりますが、読んで頂けると嬉しいです。

弟に異変が起きたのは弟がまだ3、4歳の頃でした。
毎日元気に幼稚園へ通っていましたが、少し運動をすると身体中の関節や筋肉が痛いと泣くようになりました。痛みに加えて全身の怠さと頭痛も頻繁に訴えていました。
病院へ行くも原因は分からず、よく身体中に湿布を貼っていました。
それは小学生になっても変わらず、湿布を貼っている日のほうが多かったです。
身体の痛みさえなければ、性格はとても明るくて賢く、友達も多い子でした。
小学5年の頃、弟のクラスに誰かれ構わず叩く、蹴る、つねるという問題行動を起こす子がおり、ある日その子に叩かれ蹴られた弟は泣いて帰ってきて、もう学校へ行きたくないと言い出し、それ以来保健室登校が増えました。
問題児のせいで行きたくないのかと思っていましたが、実は理由は別にあり、授業中身体中が痛む為イライラして集中できないと私にだけに話してくれました。
中学校へ上がるも保健室登校が続き、ある日フリースクールへ転入しました。
それでも小学生時代からの友達は減る事なく、ほぼ毎日家へ遊びに来ていましし、休みの日は釣りやゲームセンターへ遊びに行き、引きこもりではありませんでした。
中学2年の頃より昼夜逆転生活になってしまい、フリースクールも休みがちになりました。
これは私の友達が夜に入り浸っていた事で、弟はこの私の友達と遊びたくて夜一緒に起きていた事が原因です。
フリースクール卒業後は高校へは進学せず、父親の会社で働いていました。
身体中の痛みは治らずでしたが、頑張っていました。
弟が20歳の頃父親が癌で突然他界しました。翌年に祖父、また翌年に祖母が続けて他界し、親戚は遺産問題で揉めに揉めました。
私はすでに嫁いでいた事と、父親に似て怒るとズバッと切り捨てる物言いをする性格なので、母親は更に揉めると思ったようで親戚の話し合いには参加させて貰えずシワ寄せは全て母と弟へ行きました。
温厚な性格で人を悪く言わない弟はそれを機に不眠になりました。
眠りについた途端、起きろ!と言われる悪夢を見て飛び起きるという事が1ヶ月続き、かかりつけの内科でうつ病と診断されました。ただ本人も言っていましたが、不眠以外にうつ病のような症状は見られませんでした。
薬を飲み1週間で不眠は改善されましたが、薬の副作用と元々の身体の痛みで寝込む事が多くなりました。
その後何とか私の主人の会社で働くようになり、仕事の要領もよく他の従業員から可愛がられていると聞いて安心していました。
ですがそれからしばらくして、身体中の痛みが更に酷くなった事、膝に水が溜まるのを繰り返すようになり退職。
整形外科に通い膝は治りましたが、身体中の痛みはやはり原因不明。
その後心療内科へ行き、うつ病ではないとの診断でうつの薬を断薬。
痛みが治らずペインクリニックへ転院。
2年通うも痛みは取れず、膠原病ではないかと大学病院へ紹介されました。
そこの膠原病内科では検査は一切せず、見ただけで膠原病ではないと言われ、同じ大学病院の精神科へ回され統合失調症と診断されました。 検査は一般の血液検査と精神科での検査のみで、MRIやCT、自己免疫性疾患の検査もしていないようです。

それから5年。薬を服用するも痛みは改善せず、元々痛み以外の症状がなく、何が改善しているのか分からない状態です。
本人に何回聞いても幻聴や妄想は一度もないようで、周りから見ても普通で、昔から何も変わっていません。またよく聞く考えがまとまらない、操られている、監視されている、悪口を言われている気がするなどの経験もないと言っています。 見ていても寧ろ他人の目は全く気にしていません。 独り言もなければ意欲がないという事もなく、本人は働きたいのに身体の痛みで動けなく情けなくなるとよく言っています。
ただ本人が言うには、精神科での検査結果に被害妄想少しありと書いてあったそうで、自分では全く自覚がないけど、気が付いてないだけで被害妄想があるのかな?
と言っていました。
ただそれも周りから見ても何も変なところはありません。
(弟は母と住んでおり、親子仲は良いので常に会話があります。私も家が近いのでしょっちゅう実家に寄っては弟と話します。)
親戚が揉めている時に不眠になり、悪夢で起きろ!と言われたのが間違いなく幻だとも言われたようです。
それに、受診のたびに幻聴はどう?と聞かれるから、幻聴は聞いた事ないと言っても、主治医は幻聴は自分では気付かないものだ、家族と話しているのも自分がそう思い込んでいる妄想で、実は一人で話しているのかもしれないよ。と言われたそうで、弟の主治医の言いようはさすがにおかしいのではないかと思ってしまいます。
毎度診察の度にそう言われて怖くなったそうで、弟から一度診察について来て欲しいと言われました。
どうしてセカンドオピニオンをしないのかについて本人に聞いたところ、今まで散々たらい回しになり、やっと今の大学病院で障害認定をしてもらって、障害者二級で年金を頂いているので、痛みで働けなくてもとりあえず生活ができるという安心感がある為だそうです。
弟の気持ちも分かりますが、本当にそれでいいのか疑問です。
本当に統合失調症ならこのままの治療でいいのかもしれませんが、もしそうじゃない場合を考えると怖いです。

また統合失調症は遺伝も関係あると聞きますが、両親、祖父母更には曾祖父母、親戚誰一人精神病の人がいません。
ただ従兄弟に発達障害2人と小さい頃に脳梗塞になり後遺症を持った人がいますまた母方に自己免疫性疾患がおり、私もリウマチを含め3つの自己免疫性疾患があります。

とても長文になり申し訳ございませんが、弟は本当に統合失調症でしょうか?
身体中の痛み以外に症状がない状態でこのままの治療を続けて何が改善されるので しょうか?
またセカンドオピニオンを受けるべきでしょうか?

 

林: このメールの記載から判断する限り、弟さんが統合失調症であると考える根拠は存在しません。
ただし、言うまでもなくそれは「このメールの記載から判断する限り」であって、メールの筆者である質問者が、「弟さんは統合失調症ではない」と推定していることは明白ですので、メールに書かれていない症状があり、それが統合失調症を強く示唆するものであることは否定できません。
一般に、「〇〇と診断されているが、誤診ではないか」というメールは、そこに記載されている内容を見ますと、本に出ているような典型的な症状ではないが、○○であることと矛盾しないので、誤診とは言えない、少なくとも誤診とは言い切れない、というケースが大部分ですが、この【4414】は、その内容を見ますと、統合失調症であるとは到底考えられませんので、逆に記載のバイアスが相当にあるのではないかという疑問を拭えません。しかしご記載の通りであれば、統合失調症は誤診(それも、話にならないレベルの誤診)と思われますので、セカンドオピニオンを受けるべきです。

弟さんの正しい診断として最も考えられるのは膠原病(自己免疫疾患)です。これまでの経過でそれが疑われたこともあったようですが、

そこの膠原病内科では検査は一切せず、見ただけで膠原病ではないと言われ、同じ大学病院の精神科へ回され統合失調症と診断されました。 検査は一般の血液検査と精神科での検査のみで、MRIやCT、自己免疫性疾患の検査もしていないようです。

とのこと、これは医師の診断手順としては考えられない、論外というべきものです。
と言うより、「ありえない」ことですので(大学病院の膠原病内科で、検査をせずに膠原病を否定することはありえない。これは「絶対にありえない」といっていいレベルです)、逆に、メールの記載の正しさに疑問を持たざるを得ません。検査についても、「・・・していないようです」という曖昧な情報では判断を保留とせざるを得ません。

質問者ご自身が複数の自己免疫疾患をお持ちとのこと、病名を開示されたくない理由があると推察いたしますが、弟さんの診断名を推定するためには姉である質問者の具体的な病名も重要な情報になります。

以上の通り、このメールの記載内容は大いに疑問がありますが、もちろんこれらの疑問はすべて失当で、記載はすべて正しい可能性も十分にあります。そうだとすれば弟さんは統合失調症ではなく他の病気、おそらく自己免疫疾患ですので、信頼できる病院で検査・診断を受けることをお勧めします。

(2021.11.5.)

05. 11月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 病院を変えたい・変えるべきか, 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: |