【4409】統合失調症の友人の適切なサポート方法

Q: 私は30代男性です。私がここ数ヶ月で出会った統合失調症の友人について、症状や関わり方についてご相談させてください。
友人は遠方に住んでおり、精神科に同行するなどはできないため、このようなメールをさせていただきました。

前提として、友人の症状をある程度正しく理解できるよう、貴サイトの統合失調関連の解説記事を50程度拝見し、かつ林先生の著書:「統合失調症という事実」も拝読させていただいた上で、疑問点等があるので、ご質問させていただいています。

== 友人について ==
・現在32歳
・29歳の頃に統合失調症を発症
・病識があり、陽性症状/陰性症状が表出している時でも病気の影響である自覚がある
(が、コントロールができないという感覚のよう)
・現在定期的な通院+毎日の投薬を継続しており、服用している薬はレキサルティ2mg
(一日一回)
・平時は、陽性症状/陰性症状ともになく、やりとりにも明らかなプレコックス感も見受けられない(ただ、自分が林先生のサイト上でしかプレコックス感を感じたことがないだけですが)

・発症のきっかけはスピリチュアル系の学問にのめり込んだこと
・その後、たびたび陽性症状を発症(投薬していても発症)
・直近3ヶ月前に救急車で運ばれる
・話を聞いた限り、見出した共通点としては、著しい睡眠不足がトリガーとなっているように思われる
・陽性症状は半年に1度ぐらいの間隔で発症しており、定期的に発症するわけではなく、前述のようなのめり込むコンテンツに半年に一度ぐらい出会っている (過去はドラマのテラスハウス、最近はクラブハウス)

・過去に薬を飲まなかった時期もあり、その際は強い陰性症状(無気力、自殺欲求)に苦しむ
・その時の体験が本人の中ではトラウマとなっており、現在の薬を飲む習慣につながっている

== 相談内容 ==
以下の疑問4点について、事実に基づいた林先生の所見を伺えると幸いです。

疑問1:眠気が強い時に発言が支離滅裂になるのは、病気と関連があるか?

眠気が強くなると、会話の途中でも瞬間的に睡眠状態になり、見ている夢の話を急にしだす(いま空を飛んでいた。雪山に行っていたなど)
その内容もファンタジーな内容が多いのですが、あくまで本人の特性なのでしょうか?(私は特性だと思っていますが)
それとも、病気に関する何らかの兆候でしょうか?
ケアするポイントがあれば、教えてください。

疑問2:3ヶ月前の陽性症状発症を機に、「生まれ変わった」という感覚を持っていることは危険因子か?

3ヶ月前の陽性症状発症時に、スピリチュアル系の職業の人(ヒーラー)と話しており、別の世界に行くような感覚を持ったそうです。
現在本人はその時の感覚を信じて、陽性症状はもう出ないだろうと考えているようですが、この考えを持っていること自体は注意すべきポイントはありますでしょうか?
※この考えを持っているから薬を飲まないということはなく、前述のように薬を飲むこと自体は習慣化しています。

疑問3:記載の経過から、回復期になっていると判断し、やりたいことをやらせる(見守る)スタンスで良いだろうか?

これまで記載の通り、3ヶ月前に救急車で運ばれている点から、通常は消耗期に該当していると思いますが、直近の精神科での診療の結果でも、経過は順調と言われており、回復期に入っているとも考えられるかなと思っています。

友人は色々なことがやりたいという活動的になる兆候が出てきており、(地方ですが、東京に来ていろんな人と話そうとしたり)
色々と行動していますが、病気の兆候等も見られないので、特に心配しなくても大丈夫そうでしょうか?

疑問4:自分が心がけているサポートの考え方が適切か?

友人の病気の回復に力になりたいと思っているので、以下の点を心がけてサポート的に接しているのですが、病気の回復において悪影響となっている点はないでしょうか?

心がけているポイント
4-1 自己肯定感の向上
病気の影響もあってか、過去の自分の行動について自信を持てていないので、人に話しづらいことも含めて聞き出す。
話した内容については、率直な感想はいうが、基本的に信頼関係が崩れる要素ではないことを示す。
結果として、なんでも話せる関係性を構築できている(と考えています)。

4-2 睡眠薬に頼らずに寝る
本人の好みもあるのですが、睡眠薬が好きではない。
話していると途中で安心感を抱いて寝るという傾向があるので、睡眠が取れれば良いと判断し睡眠薬の投薬は無理には進めていません。
→ 睡眠薬に頼らない方が睡眠の質が高まると考えている。
大体一日5時間程度の睡眠をとっている。

長文となりましたが、以上4点(+細々すみません)のご質問に回答いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。

 

林:
疑問1:眠気が強い時に発言が支離滅裂になるのは、病気と関連があるか?

わかりません。そもそも、これが具体的にどのような状態であるのかがわかりません。

眠気が強くなると、会話の途中でも瞬間的に睡眠状態になり、見ている夢の話を急にしだす

瞬間的に睡眠状態になり」とは、瞬間的に眠ってしまうという意味でしょうか。そうであれば話などできないはずですので、するとどのような状態になっているのかが不明です。朦朧となるとかそういった意味でしょうか。いずれにせよどのような状態になっているかが不明ですので、回答は不可能です。

疑問2:3ヶ月前の陽性症状発症を機に、「生まれ変わった」という感覚を持っていることは危険因子か?

明白な危険因子です。統合失調症の方がこのように、あるときから画期的に改善したという自覚を持つときは、逆に著しく悪化しているか、または、病気が一段重い状態になっていることが大部分です。

疑問3:記載の経過から、回復期になっていると判断し、やりたいことをやらせる(見守る)スタンスで良いだろうか?

急に積極性が出てきているのは、むしろ悪化の兆候であることが大部分です。このような積極性に引き続いて幻覚妄想が顕在化するというのが一つの典型的なパターンです。
ただし、質問者は一人の友人という立場ですので、悪化の兆候の可能性ありという理由で行動を控えさせるという対応は望ましくないでしょう。「悪化の可能性に注意しつつ見守る」というのが現実的だと思います。

疑問4:自分が心がけているサポートの考え方が適切か?
4-1 自己肯定感の向上
病気の影響もあってか、過去の自分の行動について自信を持てていないので、人に話しづらいことも含めて聞き出す。
  話した内容については、率直な感想はいうが、基本的に信頼関係が崩れる要素ではないことを示す。
  結果として、なんでも話せる関係性を構築できている(と考えています)。

この通りであれば適切なサポートですが、あくまでも質問者からの主観的な認識が示されているだけですので、適切かどうかの判断はできません。すなわち、「聞き出す」が過剰な介入ではないか、「なんでも話せる関係性を構築できている」のは独善的な解釈にすぎないのか、などは、客観的な視点からでないとわからないからです。(もちろん適切である可能性もあります。「判断はできません」というのは文字通りの意味です)

4-2 睡眠薬に頼らずに寝る

不適切な対応です。
第一に、薬については主治医の処方に任せるべきで、それについては一切口を出すべきではありません。主治医が処方している薬を飲まないことを勧めるのは最悪の対応で、悪化させる可能性がきわめて大です。友人や家族から服薬を控えるよう勧められて悪化したケースは枚挙に暇がありません。
第二に、本人が睡眠薬と呼んでいるものが睡眠薬とは限りません。抗精神病薬を睡眠薬と認識して服用を続けている統合失調症のケースはたくさんあります。
第三に、このケースで、睡眠不足が悪化のトリガーになっているという印象があればなおさら睡眠薬を中断すべきではありません。もっとも、「睡眠不足が悪化のトリガーになっている」という印象があっても、事実はそうではなく逆で、悪化すると睡眠不足がまず現れるというのが事実であることもしばしばあります。いずれにせよ主治医は睡眠が重要であるという認識の下に、必要十分な処方をしているはずです。その処方について友人が口を出すのは大きな誤りです。

(2021.11.5.)

05. 11月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症