【4384】病院に行くと怒りや悲しみが突出して現れます

Q: 20代女性です。解離性障害で精神療法と投薬を受けています。お尋ねしたいのは、病院で度々起きる不思議な症状についてです。病院に行く日は朝から腹痛などがして調子が悪くなります。ひどい時は、頭の中で色々な人の声が聞こえたり、実際にその声が診察を受けることもありました。主治医には「違う人格になっている」と言われました。最近はその様なことはないのですが、緊張状態に陥り、怒りが湧いてきます。そして診察室では一言も言葉を発することができなくなります。逆にカウンセリングでは悲しみが湧いてきて、身動きもせず泣き続けます。意識ははっきりしているので、主治医やカウンセラーの言葉は聞こえています。しかし、反応することはできません。頭の中で過去の色々なイメージが湧き、固まってしまうのです。あとでその時のことを思い返すと、外側から自分を眺めているような映像が浮かびます。普段の私は喜怒哀楽に乏しいのですが、なぜ病院では「怒り」や「悲しみ」が突出して現れるのか分かりません。これらも解離症状なのでしょうか。
また、私は記憶が非常にあいまいで悩んでいます。起こった出来事が次々にぼんやりしていきます。これまでの人生を思い返しても希薄です。人と話していても、自分とその人との間に薄い膜があるように感じます。普通、人は経験したことを積み重ねていくと思いますが、私にはそれがないのです。とても不安です。この症状が改善していく見込みはあるでしょうか。回答よろしくお願い致します。

 

林: すべて解離の症状です。かなり典型的で、解離であることに間違いありません。
特に病院に行く日に症状が出ること、そして病院では普段とは違う症状が出ることは、意味深長です。「特に病院に行く日に症状が出る」のは、表面的には、病院に行くことが強いストレスだから、と解釈できます。そして、「病院では普段とは違う症状が出る」のは、病院での治療が強いストレスになっていると解釈できる一方で(その解釈は、「特に病院に行く日に症状が出る」ことと整合性があり、一面では正しいと言えるでしょう)、その治療が成功しつつある証であると解釈できます。心理的な治療(精神療法とほぼ同義です)とは、経過中に、何らかの苦しみがあってはじめて効果が現れるものであるからです。

そもそも病院で治療を受けている理由が、

解離性障害で精神療法と投薬を受けています。

としか記されていませんので、どういう症状と経緯によるものか不明ですが、解離性障害とは何らかのストレスに反応して発症することが大部分(または、すべて)であり、そのストレスを自分の中で適切に処理することができないため、いわば適切な処理の代替としての症状であることからすれば、ストレスの適切な処理を目指すこと自体が強いストレスになるのは当然で、精神科での治療はまさにそれにあたります。「適切な処理の代替としての症状」とは、最も典型的でわかりやすいのは、そのストレス自体を思い出せないという形で「なかったこと」にすることです。それが解離性健忘です。この【4384】の解離症状が解離性健忘か否かは不明ですが、仮に解離性健忘であったとして、その記憶内容を思い出すことが現在の治療の一目標になっているとすれば、「特に病院に行く日に症状が出る」「病院では普段とは違う症状が出る」ことは、いずれもその治療のストレスが原因であると綺麗に説明できます。また、【4384】の解離症状が解離性健忘ではなかった場合でも、解離である以上は、そこまで綺麗には説明できないにせよ、同じように説明できます。

私は記憶が非常にあいまいで悩んでいます。起こった出来事が次々にぼんやりしていきます。これまでの人生を思い返しても希薄です。人と話していても、自分とその人との間に薄い膜があるように感じます。

この記載からは、解離性健忘が、仮に主症状でないとしても、存在するとまでは言えます。また、「人と話していても、自分とその人との間に薄い膜があるように感じます」は解離の一症状としての離人です。

この症状が改善していく見込みはあるでしょうか。

この症状以外にも質問者には解離の症状があると推定できますが、どの症状も、今の治療で改善していく見込みは十分にあると思います。そう思える理由は、今回のご質問のテーマである体験、すなわち、 病院で度々起きる不思議な症状 です。なぜなら、その症状は、治療が成功しつつある証であるとみることができるからです。

(2021.9.5.)

05. 9月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 解離性障害 タグ: |