【4383】突然目が見えなくなりました

Q: 10代女性です。去年の夏の出来事なのですが、私が美容院で髪を切っているときにその美容師が髪を切るのを見ていて、左右対称に長さが違っていたりしていてイライラしていました。すると急にものすごい発狂しそうな気持ちがあふれ出てきました。今すぐに立ち上がって暴れたい、というような気持ちです。たまにこのような気持ちになるのですが、何も考えずぐっと一時的に耐えていれば引いていく感情だったのでその時もそうしていました。ところが、急にふっと辺りが真っ暗になって何も見えなくなったのです。え?と思って目をこすったりパチパチしたりしたのですが見えず、まるで部屋の電気を消してまだ目が慣れていない状態になりました。怖くて、もう失明するんだと思っていたら5分後くらいにだんだん治っていきました。 こんなことは初めてだったので眼科で見てもらったのですが特に異常はないと言われ、脳に異常があるのかどうか心配になりました。ですが、それ以降目が見えなくなることはありません。なので病院に行ったりすることはしませんでした。私は何か脳の病気なのでしょうか? ストレスがたまって目が見えなくなったのでしょうか? 回答お願いします。

 

林: 解離の一症状です。

ストレスがたまって目が見えなくなったのでしょうか?

そのように考えることができます。解離の多くは(もしくはすべては)ストレスに関連した反応です。この【4383】のケースでは、美容院での髪の切り方が不適切であると感じたストレスに対して、無意識のレベルで、「自分はそのような切り方をされていない」と信じたい気持ちが、現実から目をそむけることを生み、その結果、「目が見えない」という形に現れた、と解釈することができます。

このように解釈できる身体症状は臨床的にしばしばあり(「目が見えない」はその一つの典型ですが、他には、「耳が聞こえない」「歩けない」などがあります)、また、この解釈は精神医学で伝統的に正しいとされているものですが、証明まではできないという事情などのため、現代の公式の診断基準では解離性障害とは別に変換症 conversion disorder と名づけられています。ですから公式には解離とは異なるということになりますが、実際は解離であり、将来は再び解離のカテゴリーの中に公式にも統合されることになると予想できます。

たとえば一つの有力な考え方として、解離を、
(1) 離隔 detachment
(2) 区画化 compartmentalization
の二つに分類し、
(1)離隔(意識変容。日常からの分離感覚を特徴とする)として、離人、現実感喪失、体外離脱体験、記憶障害、情動麻痺
(2)区画化(通常は自分で制御できる知覚や運動が制御できなくなる)として、健忘、遁走、人格交代、知覚障害(「目が見えなくなる」はここに含まれます)、運動障害(痙攣、麻痺など)
とする考え方もあります。(1)と(2)に重なる症状もあります。

(2021.9.5.)

05. 9月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 解離性障害 タグ: |