【4382】25歳の息子の幻聴体験の詳細

Q: 25歳になる息子のことなのです。5年前から鬱症状が始まり1年前ごろから幻聴に悩まされております。先日幻聴内容を書かせたのでご判断いただきたいと思ます。
幻聴の症状、思ったこと等
・会話、対話ができる
・話しかけられる、自分を否定したり非難する
・男が二人、女が一人独立した人格の様に振舞う
・薬を飲んでも声は全く変わらない
・幻聴の相手もご飯を食べたり、寝たりと生活感がある
・キーンという高音をきかせられる、とても苦しい
・考えていることを言われる
・知らない考え、知識をきかせられる、知らない漢字も読める、まるでテレパシーのよう
・家族のいるところでは静かになり、一人のときやアルバイト、運転免許の教習など集中しなければいけないとき一転し煽られる、声は「お前を家族に怠け者だと思わせる」と言っている、幻聴の一貫した目的、意思を感じる
・意味不明なことをぶつぶつ言われるため、注意力が落ちたり物忘れがとても激しくとても困っている
・夢も幻聴の影響を受けている、寝ているときも幻聴が聞こえる、幻聴に睡眠を妨害され起こされたりする
・以前通院していたクリニックでリボトリールとアモキサンを出していただいたときは比較的幻聴の煽りにも耐えれた
・免許の教習の学科の勉強も全くできないぐらい声がひどい
幻聴君たちのプロフィールと主張を言われたまま書く
A君:生まれつきB君とC子とテレパシーのようなもの(思考伝播?)ができる能力者。東京暮らし。一年ほど前突然自分の思考、視覚、聴覚も伝わるようになる。脳みそを共有している感じ。その現象のことで普通の生活が困難になり自分は恨みをかう。そのため一日中テレパシーのようなもので嫌がらせをする。高音を聞かせたり、人格を否定したり批判したり、自分の過去を責める。ほんとうかどうかは不明、客観的に考えて極めて科学的でない 「馬鹿息子の人生ぶっつぶしてやる、殺してやる。人の人生台無しにしてお前がのうのうと生きているのが気に食わねえ。本当のことなんて言うわけねえだろ、こんなことしても人格障害だと思われるだけだ。いい子ぶってんじゃねえクソ息子。」
B君:自分の人生を台無しにするのが酒のつまみ。人生の半分ぐらいのところでA君とC子とテレパシーのようなもの(思考伝播?)ができるようになる、能力者。自分のせいで仕事を首になった。ほんとうかどうかは不明、客観的に考えて極めて科学的でない  「本当のことなんて言わねえよ、多分お前自殺するな。最高のエンターテイメントだよ。」
C子:生まれつきA君とテレパシーのようなもの(思考伝播?)ができる能力者。テレパシーのようなもののせいで今は施設暮らし。一年ほど前突然自分の思考、視覚、聴覚も伝わるようになる。脳みそを共有している感じ。その現象のことで普通の生活が困難になり自分は恨みをかう。そのため一日中テレパシーのようなもので嫌がらせをする。高音を聞かせたり、人格を否定したり批判したり、自分の過去を責める。一番ねちねちと自分の行動を批判し性格が悪い。ほんとうかどうかは不明、客観的に考えて極めて科学的でない 「人生台無しにしたなんて嘘八百、ただの道楽よ、ああ、今のうそ、だだの道楽でこんなことするわけないわよ、寝られないのよあなたのせいで、父さんに話してもキチガイと思われるだけ、無駄だと思うけど。ごくつぶし、家族に統合失調と思わすのが目的だったのよ、ざまあみろ、会って話をするわけないでしょ、話して何になる、苦しめてから殺すのよ、今日一日で父さんに『働けるのに働かない』と思われたでしょうね、ざまあみろ、あーちなみに今夜は徹夜よ、ざまあみろ」 例)ある日のバイト中の会話自分「幻聴に気を取られないようになんとか頑張ろう」
A君B君C子「早く下げもの下げろ、おせーよ馬鹿息子、料理でてるぞ、お前のせいでみんな迷惑してるぞ、辞めろ、お客様に迷惑かけるから比較的静かにしてんだ」自分「うるせーお前らは何もしてないくせに、働いてないくせに」
A君B君C子「テメーのせいで働けねえんだよ、思考垂れ流して、生きているだけで迷惑なんだよ」「~忘れてる」「こんなバイトあたしでもできるわ」(4時間働いている間こんなやり取り、効率的に営業できない、物忘れが酷い)

上記の内容で自立した人間と会話していると言っております。普通は幻聴で自立した人間がと会話できるのがおかしいと言っております。これはきっと実在する人間からのテレパシーだと言っております。 こんな症状に方おられるのでしょうか?病名は? よろしくお願いいたします。

 
林: この幻聴は、統合失調症の幻聴の性質と解離性障害の幻聴の性質をあわせ持っており、どちらによるものか不明です。3名の明確な人格から別々の内容が聞こえる、という点は解離性障害の幻聴にかなり特徴的な性質で、この点だけから見れば、統合失調症とは考えにくいです。しかしそれ以外の性質は統合失調症の幻聴にかなり特徴的です。

したがってどちらであるかわからないということになりますが、それでも推定するとすれば、統合失調症の可能性の方が高いでしょう。なぜなら、解離性障害らしい点は上記の「3名の明確な人格」という点のみだからです。このような場合、本人から直接説明を聞くと、そこまで明確な人格でないことが判明することも少なからずあり、すなわちそれは、間接的な報告に伴うバイアスがかかっているということです。(このケースで言えば、質問者であるお母様から本人に対する質問の仕方や、メールによる報告の仕方が関係しているということです)
もちろんそのようなバイアスは、メールの他の記述部分にもあると推定できますが、解離性障害らしい点はひとつのみであるのに対し、他の記述部分はすべて統合失調症らしいと言えますので、バイアスを考慮しても、統合失調症の可能性のほうが高いということです。「5年前から鬱症状が始まり1年前ごろから幻聴に悩まされております」という経過も、統合失調症の発症として矛盾はありません。

とは言え、これはあえて推定すれば統合失調症らしいということにすぎず、「どちらであるかわからない」という回答のほうが適切でしょう。現在の通院状況についての記載がなく不明ですが、精神科での治療が必須の状態であることは確実です。

(2021.9.5.)

05. 9月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 解離性障害