【4381】曖昧な記憶、ヴェールを通して物を見ている感じ、子どものころからの自殺願望(【1563】のその後)
Q: 【1563】私の頭の中の声たち の20代女性です。質問にお答えくださりありがとうございました。 今は諸事情により別の病院の精神科に行っています。林先生にはおそらく解離性障害だと思いますと【1563】でご回答いただきましたが、前の医師も今の医師も私が何の病気かがわからないとのことです。(林先生には私のメールに書かれた情報が少なかったことや数多くのメールが届く中で回答してくださったことを心から感謝しております。)そのため今の医師はこれからどのようにしたらよいかもわからないので、性格判断のテストをして今後の方針を決めたいと言っておられました。ちなみに、声のことはどちらの先生にもお話しました。また、脳のCTを撮っても特に異常は見られませんでした。
【1563】では書かなかったことですが、あまり長くならないように書きたいと思います。 私は子どものときから自殺願望があり、どうやったら確実に死ねるか毎日考えていました。小学校のときに本気で死のうと思って手首をカッターで切ったのですがうまく切れませんでした。その後かその前からなのかはっきり思い出せませんが、カッターで足を傷つけたりするといったことをしていたように思います。 今はそのようなことはしていませんし、自殺を考えはしますが以前ほどではありません。ただ、死ぬのを待っているという感じです。
今はあまりありませんが、子どもの頃から3年ほど前までは全身が非常にだるく、疲れやすく、頭がぼーっとするなどがありました。
以前私と住んでいた人に指摘されたことなのですが、「さっきのお前は私と話しているときとまるで別人のようだった。」と言われました。私は意図的に態度を変えたりしたことはありませんが、指摘した相手は私が同じ人間とは思えない言動をすることが何度かあったようなので、そのことが結構気になっていたようでよくそのことについて言っていました。また、この間約束したことをすると言われて当時全く約束を思い出すことができなかったとか、他にもいろいろとあったように思いますが今は思い出せません。その時の数ヶ月の生活がどうも体験したような感じがしません。いろいろと辛い事楽しい事含めあったのですが。
以下に今の状況を書きます。
以前勤めていたところでもそうなのですが、今でも仕事に支障があります。集中力や注意力がないということを医師に指摘を受けたわけですが、そのとおりだと思います。私は記憶にも問題はあると思っていますが医師にはそれは集中力がないからだと言われました。仕事に関することでは、指示されたことを忘れるなどがありますが、これは集中力を欠いているから起こることなのでしょうか?小学校の頃から聞こえてきた頭の中で音楽や声は、聞こえてきてもそれで集中できなかったりすることは今までありません。
私は人が多く密集しているところにいると必ずといっていいほど方向感覚を失ったり、ヴェールというか膜というかそういうのが濃くなってそれを通して見ている感じになったり、もしくは気持ち悪くなったり吐き気がしたりするのですが、これは医師の言うようにただ緊張しているからこのようなことになるのでしょうか? 今ではちょっと前のことでも記憶が曖昧になり、現実感がなく、自分という存在が現実に存在していることはわかりますがどうも夢の中にいるようなそんな感じがいつもするのです。 また、さっきまで疑いようもないくらい本気で考えていたことがいきなりさっきまで受け入れられなかった考えに変わっていることがあります。でも、なぜ変わったのかはわかりません。 幻視はたまにしかありませんが、花が落ちていくのが見える、人が変な顔をしているのが一瞬目を閉じたときだけだと思いますが見えたりしました。特に気にもなりませんが。 今は死にたくなるくらいの不安がないですが前に何度か何ヶ月間かその間毎日のようにありました。不安の理由もわかりませんし、あまりのつらさに本気で死を考えていたのでまたあの不安が来たら耐えられないかもしれないと思います。あの不安はなんだったのでしょうか? 私は解離性障害だと思われますか?それとも別の病気が考えられますか? そもそも知り合いが言うように私はただなまけてるだけで病気でもなんでもなく性格の問題なのでしょうか? 主治医が私が病気かわからないというので正直言うと不安です。それに病気でも何でもないとか、病院に行かなくても治るものなら病院に行きたくないので。 わかりにくい文章ですみませんが、お願いいたします。
林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。【1563】の回答の通り、あなたは解離性障害だと思います。かなり確実に解離性障害であると言えます。そう診断できる理由も【1563】の回答の通りで、今回の【4381】のご報告によって、解離性障害であるという診断はより確実になったと言っていいでしょう。
以前私と住んでいた人に指摘されたことなのですが、「さっきのお前は私と話しているときとまるで別人のようだった。」と言われました。私は意図的に態度を変えたりしたことはありませんが、指摘した相手は私が同じ人間とは思えない言動をすることが何度かあったようなので、そのことが結構気になっていたようでよくそのことについて言っていました。また、この間約束したことをすると言われて当時全く約束を思い出すことができなかったとか、他にもいろいろとあったように思いますが今は思い出せません。その時の数ヶ月の生活がどうも体験したような感じがしません。いろいろと辛い事楽しい事含めあったのですが。
これらはいずれも典型的な解離の症状として説明できます。
ヴェールというか膜というかそういうのが濃くなってそれを通して見ている感じになったり、
これは離人です。離人は様々な原因で現れますが、このケースでは解離性障害の一症状であるとみて間違いありません。
今ではちょっと前のことでも記憶が曖昧になり、現実感がなく、自分という存在が現実に存在していることはわかりますがどうも夢の中にいるようなそんな感じがいつもするのです。
離人と解離性健忘の両方の要素がある体験です。集中力や注意力の低下についても同様です。幻視や幻聴も、このケースでは解離によるものとしてかなり典型的です。
あなたが解離性障害になった原因については、【1563】で、
【1563】のケースで最も考えられるストーリーは、小学校より前の何らかのトラウマ的な出来事、おそらくは虐待が関係して、現在の解離性障害の症状が表れているということです。
と回答しましたが、この推定は今回のご報告でさらに確定的になったと言えます。
すなわち、
私は子どものときから自殺願望があり、どうやったら確実に死ねるか毎日考えていました。小学校のときに本気で死のうと思って手首をカッターで切ったのですがうまく切れませんでした。その後かその前からなのかはっきり思い出せませんが、カッターで足を傷つけたりするといったことをしていたように思います。 今はそのようなことはしていませんし、自殺を考えはしますが以前ほどではありません。ただ、死ぬのを待っているという感じです。
今はあまりありませんが、子どもの頃から3年ほど前までは全身が非常にだるく、疲れやすく、頭がぼーっとするなどがありました。
こうした体験は、上の推定、すなわち、小学校より前の何らかのトラウマ的な出来事、おそらく虐待によるものとして説明できます。
以上の通り、【1563】、【4382】のいずれの内容もかなり典型的な解離性障害として説明がつものです。
病院に行かなくても治るものなら病院に行きたくないので。
治療を受けずに治ることはあまり期待できません。
しかし、
主治医が私が病気かわからないというので正直言うと不安です。
これだけ典型的な解離の症状があるのにもかかわらず、いまだ診断がつけられいないというのは不可解です。医師は診断を確定していてもその診断名を患者に告げないこともありますので(診断名を告げること自体が精神科では重要な治療の一部になることも多々ありますので、診断が確定したらそれをすぐに患者に告げるとは限りません)、実は診断は確定しているのかもしれません。もし本当にその医師が診断がわからないとおっしゃっているのだとすれば、別の医師にかかった方がいいでしょう。
(2021.9.5.)