【4378】性的虐待を原因とする引きこもりを脱したい

Q: 20代男性、休学中の大学生です。
0歳で両親が離婚し母子家庭でしたが、8歳の時に金銭的な援助をしてくれるからと母の弟(当時30代独身、公務員)が同居することになりました。
ですが同居直後から叔父は入浴時に「洗いっこをしよう」と言い私の性器を触ったり、あるいは叔父の性器を触らせたりするようになりました。
当時自分がその行為をどう受け止めたのか覚えていませんが、ただそういう時は非常に緊張して身体が強ばったことは覚えています。母にその話はせずに過ごしていました。
小学校高学年頃になると二人で入浴することは無くなりましたが、代わりにそれまで静かだった叔父は頻繁に私を叱り、服を脱がせて殴るようになりました。母の前で脱ぐのは本当に嫌だったのですが、下着を脱がずにグズグズしていると「私の言葉が聞こえないのか」と怒鳴られ続けるので従うしかありませんでした。
そうして叔父は成績が悪い、態度が悪い、整理整頓が出来ていない等、様々な理由で怒鳴っては裸でリビングの床に正座する私の頬を何発も叩くのです。殴られている間は声が出なくなり、叔父に謝ることも出来ずただ泣きながら耐えていました。
母は私が折檻されている間傍観し、終わると「よく頑張ったね」等と言って慰めてくれましたが、止めに入ったことは一度もありません。
確かに私は勉強嫌いで、おまけに学校で度々同級生に暴力を振るってもいたので叱られたことに文句は言えません。けれど殴られる時に母の前で裸になることが耐え難い恥ずかしさで、そのせいで頭がおかしくなったと思います。
中学に進学する頃にはとにかく注意力が散漫になり、授業が聞けないのです。同級生への暴力もエスカレートし、瞬間的に激高しては相手を執拗に殴るようになりました。自分でも信じられないのですが女子の顔を殴ってしまったこともあります。何がそんなに腹立たしかったのか覚えていません。
殴った時には一瞬「殴るつもりはなかったのに、叔父に知られたらどうしよう」と思うのですが、そう思ったら余計にどうしたらいいかわからず相手を殴り続けてしまいました。
当然学校や相手の親から連絡が来て家でまた折檻され、勉強にはついて行けず、夜リビングで叔父に監視されながら勉強する日々です。
いつからか母はもう全てに無関心な様子で、何事も無いように私や叔父に接するようになりました。母も仕事に多忙で介入する余裕が無かったでしょうし、それに叔父から少なくない金銭的な援助を受けていたのだと思います。
現に私も中学の頃から月一万円のお小遣いや、年齢に不相応なブランドの服、パソコン等を買い与えられていました。

そうして母が無関心になり、中学三年の時に性的虐待が再開しました。ある夜叔父が二人で話をしようと言って部屋に来たのです。叔父は苛立った様子で「人として大事なものが欠けている、お前には心が無い」などと私を責め、そして服を脱ぐように言いました。それでそれから何を言われて、どうしてそうなったのか曖昧なのですが、とにかく身体を触られてキスをされました。ベッドに腰かけて触られている間は、子供の頃と同じように全身が硬直し、心臓がバクバクして足が震え、息を殺して耐えていました。散々私の性器を触った後、叔父も自分の性器をズボンから出し、私の手を掴み触らせてきました。口に含むようにも言われましたがそれは途轍もない拒否感で出来ずに固まっていたら「唇を押し当てるだけでいいから」と言われ、口に含むよりはいいと仕方なくその通りにしました。それでその夜は許されて叔父は部屋から出ていきましたが、その日は一晩中混乱した頭で眠れませんでした。
その日を境に叔父は奇妙に優しくなり母の前で私を殴ることをやめました。何かよく分からない、男同志の友情みたいなものを演出し始めた感じで、母の前で私に気さくに話し掛け、和解したアピールを始めたのです。そして今までリビングで勉強していたのが私の部屋に移って勉強を教え、身体を触ったりするようになりました。それは本当は殴られるより最低な行為だったのかも知れません。しかし当時の私にとっては身体を触られる恐怖よりも母の前で裸になることの恥辱が勝り、私も和解した振りに協力するようになりました。とにかく母の前で服を脱がされるという最大の苦痛が無い今の生活を続けたかったのです。
学校でも大人しくなり同級生への暴力も無くなり、叔父に勉強を見てもらっていたお陰で何とか地元の都立高校に進学できました。

高校進学後も叔父と親しい振りを続ける内に、情けない話ですが本当に叔父と仲良くなった気がして気軽に話すようになり、休日に二人でドライブ等に行くことさえありました。身体を触られたりすることには慣れず、やはり緊張はするのですが、ひどい動悸や脚の震えは無くなり、叔父の身体に触ることの抵抗も大分消えていきました。荒れた中学時代と打って変わって高校時代は穏やかに過ごしたと思います。学校の授業も聞けるようになり、課題にも取り組み、家でも叔父との勉強を続け、そこそこの成績で地元の中堅私立大学の文学部に推薦で合格しました。叔父は大変喜び「今日まで根気強くお前の面倒を見てきて本当に良かった」と涙ぐみながら言うので、私も何故だか泣けてきて長年勉強を見てくれた叔父のお陰だと感謝を伝えました。その時、今までで一番叔父と親密になったと思います。

大学に進学してからは勉強を見てもらうことはなくなりましたが、それでも夜に叔父が部屋に来るので身体的な接触は続いていました。

ところが二年の秋に大学内で生まれて初めて恋人ができてから突如として私の頭は再びおかしくなったのです。付き合って2週間ぐらいで恋人にキスをされそうになった時、咄嗟に何故か相手の体を押し返して拒絶してしまいました。その場ではそういう経験が無くて恥ずかしかったからと取り繕いました。

が、その頃から今までの全てを否定したい、叔父も自分も否定したいような衝動が起きてどうしようもないのです。何故、自分は叔父と仲良い振りをして性的虐待する隙を与えたのかという後悔に襲われ、自分の最低な愚かさが急に耐え難くなったのです。叔父とも母ともまともに話が出来なくなり、二人を無視するようになりました。叔父は流石にもう私を殴りません。というより殴れないのです。高校時代にはもう体格は逆転していたのです。だから叔父に協力する必要はなくなっていたのに、何故それ以降も私は協力してしまったのか。叔父の親しげな態度に絆されてしまった自分の単純さ、愚かさに耐えられず夜毎部屋で泣き、オンラインの授業すら受ける気力が無くなり、出席日も外に出られず、課題も出さず試験も受けず、ただ部屋でぼーっとするだけになってしまいました。当然後期の単位を全て落としたので母に問い詰められましたが、何の説明もできずただ休学したいと泣いて頼み休学手続きをしてもらいました。恋人はそうやって何も言わず休学した私を見捨てず、毎日根気強くLINEや電話をして何があったのか尋ねたり、他愛ない話をして励まそうとしてくれますが、未だに何も話せていません。

母は精神科の受診を勧めますが、医師に話をする勇気が出ません。叔父は休学や私が引きこもってる事に何も言いません。自分が原因だと気付いているのかもしれません。
叔父が怖いとか憎いとか、そういう何か具体的な感情より、とにかく距離を取らなければいけないという焦りでこの家を出たいのですがそんな貯金も無く、禄に外出もせず部屋に引きこもる日々がもう数ヶ月続いています。昼夜問わず涙が出て自分の腹部をカッターや包丁で傷つけてしまいます。マンションのベランダから飛び降りようかと考えては恋人からのメッセージを読むことで思い留まる毎日です。ほぼ毎日連絡が来るお陰で今は生きていられます。けれどこの先もうどうしたらいいのかわかりません。先生は色々な相談に対して「精神科を受診してください」で言葉を結ぶことが多いですが、病院にはあまり行きたくないのです。
トラウマの治療は投薬よりカウンセリングというイメージがありますが、私の場合もやはりカウンセリングをしなければ快復できない気がしています。

しかし医師にその話をしたことが叔父に知られたら、叔父は絶対に虐待ではなく合意だったと母や医師に言うでしょう。既に書いた通り私は身体を触られる隙を作ることに協力していました。それに、本当にお恥ずかしい話ですが、叔父と親しくなってからは身体を触られて少し反応してしまったこともあります。叔父の身体を積極的に触ったりもしました。性器を舐めたことさえあります。そうしたかったのではなく、叔父と良好な関係が保てるならばと、自然とそうせざるを得なかったのです。けれどこれら全ての行為が、もう自分を言い訳できない状態に追いこんでいます。叔父が保身のためにこんな話を母にする可能性を考えては受診を延々と躊躇しています、大学を卒業し、就職して自立するために、やはり私は病院に行く必要があるのでしょうか。もしそうなら、カウンセリングを受けず現在の症状だけを医師に伝えて適切な薬を処方してもらうことなど可能なのでしょうか。

もしそれが可能なら予め自分の病名を知っておきたいのですが、先生から見て私の病名は何ですか。
トラウマはあれど生命を脅かすほどの危害を加えられた訳でもないですし、PTSDではないとは思っています。けれど鬱はしっくり来ません。私は元来真面目な性格ではありませんし、恋人ができて自分の愚かさに気づくまでは割と快活な性格だったと思います。
もし現在の症状から判断するならば、どのような薬を飲めば復学できると思いますか。そしてその薬を貰うためにどのようなことを医師に伝えればいいのか教えていただけないでしょうか。
長くなってしまい申し訳ありませんが、これ以上推敲できそうにありませんのでこのまま送信させていただきます。

 

林: 精神科を受診することをお勧めします。
このメールの文章からは、質問者は、精神科とカウンセリングを全く別のものであると、さらには精神科の治療イコール薬物療法であると考えておられることも読み取れます。いずれも大きな誤解です。まずは精神科を受診し、先生と相談のうえで適切な治療を選択・開始することです。その適切な治療がカウンセリングになることも十分に考えられます。

しかし医師にその話をしたことが叔父に知られたら、叔父は絶対に虐待ではなく合意だったと母や医師に言うでしょう。

それはその通りだと思います。また、現に合意の要素があったことは否めません。最初の段階では合意はなく、質問者が被害者の立場であったことも確かですので、「合意の要素があった」という指摘は冷酷に響くかもしれませんが、質問者が自らお書きになっているように、ある時点からは拒否しようと思えば拒否できたわけですから、合意の要素があったという事実は動きません。この【4378】のケースのように、合意の要素があることは、家族内での性行為にはしばしばあるというのが厳然たる事実ですから、質問者がこれまで取ってきた行為はこの種のケースでは決して例外的なものではありません。【3473】17歳女。父の性的接触を受け入れてしまいます などもご参照ください。
それに、これまでの経緯を医師に話すことは治療のために行うのであって、過去の叔父様の行為を非難しさらには訴えるためではないわけですから、「叔父は絶対に虐待ではなく合意だったと母や医師に言うでしょう」という推定を根拠に医師に話すことをためらうという姿勢は不合理です。

もし現在の症状から判断するならば、どのような薬を飲めば復学できると思いますか。そしてその薬を貰うためにどのようなことを医師に伝えればいいのか教えていただけないでしょうか。

上記の通り、受診することは薬で治療することであるという前提が大きな誤りです。したがってこの質問には意味がなく、答えは存在しません。

精神科を受診し、このメールに書かれた内容をすべて医師に伝えてください。
ただし、トラウマや性的虐待を専門とする医師を選ぶことが必要です。実際にはそうした医師を見つけることは容易ではありませんので、そうした専門医あるいはカウンセラーへの紹介ルートを持っている医師を選んで受診することが現実には勧められます。

(2021.9.5.)

05. 9月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 性に関する問題, 精神科Q&A, 虐待