【4377】解離性健忘の疑いを持っているのですが、過去を掘り起こすべきでしょうか
Q: 30代男性です。 4歳と7歳の子供がいます。
私は小学生以前の記憶がほとんどなく、忘れっぽいだけだと思っていたのですが、林先生のサイトのケースを読ませていただいて解離性健忘の可能性があるのかも?と考えております。
父親は8年ほど前に亡くなっておりますが、悲しみは感じませんでした。
母親とは今も年に数回食事に行きますし、不仲とは思わないのですが、子供の話中心で他の会話はしません。(子供が産まれるまではほぼ交流はありませんでした)
子供たちの事は好きですが、家族団欒というのが苦手で一緒に食事をするのが苦痛です。
これらの事は性格的な問題で、そういうものだと思っていたのですが、もし過去に両親と何か問題があり、その問題を自分が認識していないだけだと仮定した場合、「虐待された親は子供にも虐待をする」という事を無意識で行なってしまうのではないかと不安に感じております。
その反面、過去を掘り起こし、向き合ったところで「家族団欒が苦手」という今の問題の原因がわかるだけで、解決になるとは思えないのです。
一般的にはその原因を知る事で今の問題点の解消につながるものでしょうか?
林: 質問者自身がご指摘されているように、解離性健忘の可能性が高いと思います。その原因についてもご指摘されているように、おそらくご両親との関係の中にあるのでしょう。
過去を掘り起こし、向き合ったところで
ここまではその通りで、解離性健忘では、記憶を取り戻すこと自体は「治療」になるとは限りません。【4369】などの回答の通りです。
過去を掘り起こし、向き合ったところで「家族団欒が苦手」という今の問題の原因がわかる
そもそもそれがわかるとは限りません。
が、仮にわかったとすると、
過去を掘り起こし、向き合ったところで「家族団欒が苦手」という今の問題の原因がわかるだけで、解決になるとは思えないのです。
それは何とも言えません。というより、解決の糸口になることは期待できると言えます。フロイト流の古典的な考え方によれば、それが「十分に」期待できると言うことができ、実際は「十分に期待できる」とは言えないまでも、「期待できる」とまでは言えます。
というより、他には解決できる可能性がある方法は考えにくいです。そうしますと、
過去を掘り起こし、向き合ったところで「家族団欒が苦手」という今の問題の原因がわかる
ということに賭けてみるというのは、質問者がいま持っておられる危惧への対処法としては一つの合理的な選択肢ということになるでしょう。
ただしこの時、解離性健忘では記憶を取り戻すことが精神的な安定の破壊に繋がり得るというリスクも考える必要があります。このリスクゆえに記憶を取り戻そうという努力はあえてしないほうがいいケースもあります(たとえば【4369】)が、この【4377】のケースではどちらがいいかわかりません。質問者ご自身でお決めになることだと思います。
(2021.9.5.)