【2897】うつ病が10年近く治らないので、主治医に電気けいれん療法について尋ねたのですが

Q: 40歳の専業主婦です。子供はおりません。夫との二人暮しです。うつ病と診断されて、十年近くになります。主なきっかけは、父の突然の死と、流産だと思います。今も苦しくて苦しくて仕方ないのです。ずっと薬物治療を行なっているのですが、私には効果が無いように感じられるのです。服用している薬ですが、トレドミン25mgを一日6錠、ルボックス25mgを一日3錠、デパケンR錠200を一日6錠、アモキサンカプセル25mgを一日3錠、デパス錠0.5mgを一日6錠、就寝前に、サイレース錠1mgを1錠、レスリン錠50を2錠、リボトリール錠0.5を1錠、テトラミド錠30mgを2錠、トリプタノール錠25を1錠  以上です。はっきり言って、少しも効いてくれてないというのが私の正直な気持ちです。量的に足りないのでしょうか? それとも逆に多すぎるのでしょうか? 主治医は、薬を変えようとはしません。どんなに辛くてもです。でも私は辛くてたまらず、料理を作ることなどほとんど出来ません。お風呂に入るのも、私にとってはものすごく大変なことなのです。先日、電気けいれん療法について知る機会があり、主治医に聞いたのですが、主治医は電気けいれん療法のことを知らない様子でした。そして、主治医からは、どこで行なわれているかを問い合わせてみるように言われました。果たして私は電気けいれん療法に向いているのでしょうか? なぜ私のうつ病は十年間も治らないのでしょうか?

 
林: うつ病は治ります。10年続くことはまずあり得ません。難治性うつ病のため10年続いているということも考えられますが、おそらくこの【2897】はそうではなく、治療が不適切なのだと思います。

まず現在の処方内容ですが、

量的に足りないのでしょうか?

量だけを見れば、足りないということはないでしょう。

それとも逆に多すぎるのでしょうか?

総量はともかくとして、うつ病の処方としては、薬の種類が通常より多いことは確かです。このような処方は一般にはよくない処方とみなされています。但し、薬があまり効かない場合、どうしても種類が増えてしまうことは実際の臨床ではあり得ることです。したがって、この処方を見ただけで、これが適切か不適切かはわかりません。
けれどもこの【2897】の質問者に対しては、これは不適切な処方であると判断できます。その理由は、

はっきり言って、少しも効いてくれてないというのが私の正直な気持ちです。

にもかかわらず、

主治医は、薬を変えようとはしません。どんなに辛くてもです。

という状況があるからです。
すなわち、うつ病の治療経過中で、薬の種類がかなり多くなってしまうのは、それだけの種類と量を用いてはじめて効果が出ているという場合です。しかしこの【2897】では、効果が出ていないのにもかかわらず、同じ処方が続けられているわけですから、不適切な薬物療法と言わざるを得ません。

もっとも、一つの可能性として、

はっきり言って、少しも効いてくれてないというのが私の正直な気持ちです。

これが実は質問者の歪んだ認知による自覚であって、実際には以前にははるかに悪い精神状態であったものが、今の処方により不十分ながらもここまで改善したという解釈も検討する必要があります。
けれどもこの【2897】ではそうではなく、主治医の診断・治療が不適切である可能性のほうがはるかに高いと思われます。

なぜなら、

主治医は電気けいれん療法のことを知らない様子でした。

それでは精神科医とはいえず、うつ病の治療はできません。

果たして私は電気けいれん療法に向いているのでしょうか?

それはわかりませんが、電気けいれん療法を検討する必要はあるでしょう。
もっとも、抗うつ薬の処方を再検討するのが先かもしれません。

なぜ私のうつ病は十年間も治らないのでしょうか?

治療が不適切だからです。

(2015.2.5.)

05. 2月 2015 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A, 電気けいれん療法