【4250】統合失調症ですが体重を減らしたい

Q: 32歳女性、統合失調症と診断されて8年ほど経ちました。
これまでエビリファイをはじめとする非定型抗精神病薬を飲んできて、今服薬しているのはロナセンを1日10ミリです。
この8年の間に体重が40キロ増えました。いまも増えています。原因は統合失調症の薬です。断薬や減薬をすると体重は面白いほど減りますので間違いはないと思います。薬をやめると再発するのでもうこりごりですが…
統合失調症の体重増加には定型抗精神病薬が良いと聞いていますが、今まで4つの病院でそれを勧められたことはありません。
SNSなどで定型抗精神病薬に変えても体重が減らないなどの意見を多く見て、今症状が安定しているのにこれ以上変薬することに意味があるのか分からなくなるので、ぜひ林先生の意見をお伺いしたいです。
これまでの症状
・電車やお店などで自分を笑われていると思う
・生活水準が低下してお風呂は週に2回程になる
・家に引きこもりがちになり感情を表に出さなくなる
・断薬などで再発を繰り返すうちに盗聴されていると思ったり変な妄想が強くなる

今は症状が8割がた消えています。セレネースなどへ変薬してくれる病院をこれからも探し続けて、間違いはないのでしょうか?

 

林:
統合失調症の体重増加には定型抗精神病薬が良いと聞いていますが

それは正確な情報ではありません。
非定型抗精神病薬は、他の副作用が比較的少ないこととの関係もあって、体重増加の副作用が強調されがちですが、定型抗精神病薬にも体重増加の副作用はあります。また、別の副作用が出る可能性は非定型抗精神病薬より高いと言えます。

この【4250】のケースの体重増加が非定型抗精神病薬の副作用であることはおそらく間違いないでしょう。体重は40キロも増加したとのこと、他の薬にかえることで何とかしたいというお気持ちはよくわかりますし、定型抗精神病薬にかえることは試みていい手段ではありますが、それによって体重が減る可能性が十分に高いとは言えません。したがって、

今症状が安定しているのにこれ以上変薬することに意味があるのか分からなくなる

という質問者の疑問はもっともです。

今は症状が8割がた消えています。セレネースなどへ変薬してくれる病院をこれからも探し続けて、間違いはないのでしょうか?

間違いです。それはお勧めできません。なぜなら、処方の変更には症状悪化のリスクを伴うからです。悪化したときの状態を実際に見ていない別の医師に処方変更を求めることはお勧めできません。処方変更の相談は今の主治医にするべきです。今の主治医の診察を継続して受ける中で、処方を変更してもらうことが最も勧められる方法です。ただし今の主治医が処方は変更しないほうがよいと判断するのであれば、それに従う方がいいでしょう。

この【4250】のケースのことに限らず一般論として、本人が求める治療をしてくれる医師を探し続け、ようやくそういう医師が見つかると、やっと良い医師に出逢えたと考える方が多いですが、それは大部分の場合間違いです。適切な治療法とは、本人が求める治療法と一致するとは限りません。本人が求める治療法は全く不適切なことは十分にあり得ることで、それでも本人の希望にあわせてその治療をする医師は、本人の満足とは逆に、最悪の医師であることもしばしばあるものです。これは統合失調症の治療に限ったことではなく、また、精神科の治療に限ったことでもありません。

(2021.3.5.)

05. 3月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 病院を変えたい・変えるべきか, 精神科Q&A, 統合失調症, 薬の副作用