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抗うつ薬についての質問にお答えします。


1957年にはじめて抗うつ薬が発表された時、学会ではほとんど無視されました。悲しみや悩みを薬で解決できるはずがない、当時の医師たちはそういう先入観を持っていたのです。ところが、抗うつ薬がとてもよく効く薬であることはすぐにわかり、現在ではうつ病の治療の中心となっています。

うつ病の薬にはどんなものがあるのでしょうか?
副作用の心配は?
抗うつ薬はどうして効くのでしょうか?
抗うつ薬をのむと性格が変わると聞きましたが本当ですか?
副作用を軽くする方法はありますか? 
中毒にはなりませんか?
先生が薬の説明をしてくれないのですが?   
どのくらいの期間のむのでしょうか?
抗うつ薬をのんでも効果がないようですが?
ほかの薬と一緒にのんでも大丈夫ですか?
アルコールと一緒にのんでも大丈夫ですか?
健康な人が抗うつ薬をのんだら明るくなりますか?
SSRIとは何ですか?

新しいSSRIのルボックスとはどういう薬ですか?
リチウム(リーマス)は、うつ病に効くのでしょうか?


Q. うつ病の薬にはどんなものがあるのでしょうか?

A. うつ病の時に出される薬は、抗うつ薬、抗不安薬、その他の薬の3種類があります。

(1)抗うつ薬
うつ病治療の中心となるもので、必ずといっていいほど処方されるものです。一定の量を2-3週間のみ続けてはじめて効果が出るものなので、のむと決めたら途中でやめてはいけません。三環系と呼ばれるトフラニール(イミプラミン)、トリプタノール(アミトリプチリン)、四環系と呼ばれるルジオミール(マプロチリン)、テトラミド(ミアンセリン)、速効性のアモキサン(アモキサピン)などがあります。
(2)抗不安薬
うつに伴う不安やイライラを抑えるもので、効果は速やかに現われるため、抗うつ薬と一緒に処方されることがよくあります。セルシン(ジアゼパム)、ワイパックス(ロラゼパム)、ソラナックス(アルプラゾラム)などがあります。
(3)その他
元々はほかの病気の薬として開発された薬で、うつにも効果があることがわかってきたもので、ドグマチール(スルピリド)、リーマス(リチウム)などがあります。
このほか、症状に応じて睡眠薬、便秘薬などが処方されるのがふつうです。



Q. 副作用の心配は?

A. 重い副作用が出ることはまずありません。しかし薬である以上ある程度の副作用はあります。比較的多いのは、便秘、口の渇き、排尿困難、眠気などです。ただしのみ続けるうちに軽くなることが多いものです。
まれな副作用としては、肝障害、皮膚の発疹などがあります。
いずれにしても、副作用ではないかと思った症状はすべて主治医の先生に話すことが大切です。




Q. 抗うつ薬はどうして効くのでしょうか?

A. 脳内のモノアミンという物質のはたらきを調整すると考えられています。詳しいことは医学部講堂へどうぞ。



Q. 抗うつ薬をのむと性格が変わると聞きましたが本当ですか?

A. 性格が変わることはありません。あくまでもうつ病の症状を治すもので、性格や人格には影響しません。



Q. 副作用を軽くする方法はありますか? 

A. 眠気や口渇などの副作用はのみ始めた時が一番強く、日がたつにつれて自然に軽くなるのがふつうです。我慢できる程度なら、何日かは様子をみた方がいいでしょう。また、副作用と思っていたのが実はうつ病の症状のこともよくあります。
日がたっても軽くならない場合の対策のひとつは、昼間にのんでいた薬を寝る前にのむようにすることです。もちろんこれは主治医の先生と相談して決めることです。



Q. 中毒にはなりませんか?

A. 抗うつ薬には依存性や習慣性はなく、うつ状態が治れば薬もやめることができます。



Q. 先生が薬の説明をしてくれないのですが?

A. 説明なしにただ薬をのむように言われてものめるものではなく、ふつうは十分な説明がなされると思います。ただし、いろいろな理由であえて詳しい説明をしないこともあります。説明しすぎることで病状が思わしくない方向に変化することを心配することもそのひとつです。
しかしそうは言っても、説明に納得できない時は早目に医者をかえた方がいいでしょう。精神科では医者と患者さんの相性というものもあり、相性が合わないと治療はうまくいかないものです。
なお、最近では病院の薬が写真入で紹介されている本がたくさん出ているので、これを調べれば大体の薬は何であるかわかりますが、あまりおすすめできる方法ではありません。信頼できる先生にかかりなおす方が病気を治す早道です。




Q. どのくらいの期間のむのでしょうか?

A. まず2-3週間はのんでみてください。抗うつ薬が効くまで最低でもそのくらいはかかります。これで効果がなければ薬を少しずつ強くしたり、種類を変えたりするのがふつうです。1-2カ月でほとんどのうつ病がよくなります。よくなったあとどのくらい薬を続けるかは人によって違います。抗うつ薬はうつ病再発の予防効果もあるので、ずっと続けることもあります。これは主治医の先生と本人の話し合いで決めるのがよいでしょう。



Q. 抗うつ薬をのんでも効果がないようですが?

A. 何日くらいのんだのでしょうか。抗うつ薬の効果が出るまでには2-3週間はかかります。はじめは少ない量を処方するのがふつうですから、効果が思わしくなければ量を増やしていくことになります。この場合、必ず処方された量をきちんとのむことが大切です。中途半端なのみ方をすると治療が長引き、最終的にのむ量はかえって多くなりがちです。うつ病は治る病気ですから、根気が大切です。
十分な量の抗うつ薬を一定期間のんでもよくならない場合、薬の種類の変更が考慮されます。精神療法の強化が行われることもあります。元々の性格がうつ状態に強く関連している場合は、薬だけではなかなかよくなりません。



Q. ほかの薬と一緒にのんでも大丈夫ですか?

A. 市販の風邪薬や頭痛薬と一緒にのむ分にはまったく問題ありません。ただしほかの科の先生に薬をもらう時は必ずその時のんでいる薬を見せてください。



Q. アルコールと一緒にのんでも大丈夫ですか?

A. だめです。酔いが回りやすくなったり、薬の副作用が強く出たりします。



Q. 健康な人が抗うつ薬をのんだら明るくなりますか?

A. なりません。抗うつ薬はうつ病には効きますが、健康な人には効きません。どんな薬も病気の人のためのもので、健康なのに薬をのむのは、それがどんなものであれすすめられません。



Q. SSRIとは何ですか?

A. 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (Selective Serotonin Reuptake Inhibitor) の略です。シナプス末端から放出されたモノアミンのうちセロトニンの再取り込みだけを阻害する抗うつ薬という意味で、アメリカではプロザックという薬が代表的なSSRIとして非常によく使われています。テレビなどであたかも夢の特効薬のように報道されたこともありますが、アメリカで実際に処方している医師に聞くと、それほど騒ぎたてるほどのものではないということです。とは言っても優れた薬であることは確かです。日本では1999年4月にフルボキサミン(ルボックス)が認可されました。書斎も参考にしてください。

 


Q. 新しいSSRI、ルボックスとはどういう薬ですか?

A. 1999年4月7日にSSRIとしては日本でははじめて認可された抗うつ薬です。

● 今までの薬とどこが違うのですか?

● どういう人に効果がありますか?

● 副作用は?

● ほかの薬との飲み合わせは?

● そのほか

 

今までの薬との違い

日本ではじめて認可されたSSRIです

SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (Selective Serotonin Reuptake Inhibitor) の略です。うつ病は脳内の神経伝達物質(ニューロ・トランスミッター)の変調によると考えられています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、SSRIは脳内でこのセロトニンだけに作用する薬です。今までの抗うつ薬は、セロトニン以外にも、ノルアドレナリン、ドーパミンなどに対する作用も持っていました。

副作用が少ない薬です

今までの抗うつ薬と違ってセロトニンだけに作用するため、SSRIは副作用の少ない薬であると言えます。

外国では15年以上前から使われていました

フルボキサミンは1983年よりヨーロッパでは抗うつ薬として広く使われていました。現在、うつ病の治療薬としてはスイス、フランスなど79か国、強迫性障害の治療薬としてはアメリカなど31か国で承認されています。

過大な期待は禁物です

セロトニンだけに作用する薬が、抗うつ薬として本当にいいことかどうか、実は誰にもわかりません。ノルアドレナリンが関係するタイプのうつ病があることも間違いのない事実です。ドーパミンも関係しているかもしれません。副作用が少ないことはSSRIの最大の特長で、この意味ではとてもいい薬と言えますが、抗うつ薬としての効果は今までのものとあまり変わらないというデータがほとんどです。

 

どういう人に効果があるか

今までの薬が副作用のために十分のめなかった人には最高の薬です

 うつ病の8割以上は薬で治ります。ただし十分な量を十分な期間のむことが条件です。うつ病が治りにい場合は、抗うつ薬の治療が不十分であることが大部分です。

 今までの抗うつ薬には、口の渇き、便秘などの副作用がかなりの頻度で出ていました。これは抗コリン作用と呼ばれるもので、アセチルコリンという物質の関係する神経を抗うつ薬が抑えることにより起こるものです。人によってはこの副作用が強くでるため、どうしても十分な量の抗うつ薬を飲むことができず、なかなかうつ病が治らないということがありまた。SSRIには抗コリン作用はないので、こうした副作用が出ることはほとんどありません。そのため、副作用に悩むことなくうつ病の治療を続けることができるわけです。

 

副作用

副作用が少ないことがSSRIの特長です

今までの抗うつ薬のような抗コリン作用はありません。このため、非常にのみやすい薬であると言えます。

ただし、SSRIに独特の副作用もあります。これはセロトニンの関係する神経が、脳内だけでなく、からだの色々な部分に存在するためです。特に腸管に多いため、吐き気、下痢などがSSRI特有の副作用として現れることがあります。また、アカシジア(じっと座っていられない)も現れやすいと言われています。吐き気や下痢はSSRIを少量から始めれば出にくく、アカシジアにはアキネトンなどの薬が有効です。

 

飲み合わせ

モノアミン酸化酵素阻害薬のエフピーとの併用でセロトニン症候群(錯乱・発熱・発汗など)が、トリルダン、ヒスマナール、アセナリン・リサモールとの併用で心電図異常が現れることがあり、これらの薬との併用は禁止されています。

 

その他

医者が薬の良し悪しを判断する時は、医学論文、製薬会社からの情報、実際に処方してみた感触を総合的に参考にします。この三つのどれが欠けても正確な判断はできません。フルボキサミンについては、私は処方したことがありません(1999年7月5日現在)ので、本当はよくわからないというのが正直なところです。ただし副作用が少ないことだけは間違いないと思います。一方で、SSRI特有の副作用があるとされていますが、副作用というものは、そういうことが「あり得る」ということだけでなく、発生頻度の方が問題なので、どの程度まで気にする必要があるか、この薬については私はよくわかりません。プロザツクが日本のマスコミで紹介された時のSSRIフィーバーが一部ではまだ続いているようですが、冷静な判断が必要だと私は思っています。

 

 


Q. リチウム(リーマス)は、うつ病に効くのでしょうか?

A. ふつうの抗うつ薬があまり効かないときに、処方されることがあります。

リチウム(リーマス)は、本来は躁うつ病の薬ですが、うつ病でも抗うつ薬の効きが十分でないときに処方されることがあります。だいたい半数の人に効果があるとされています。ただし、効く・効かないがわかるまでには、最低でも3週間くらい続ける必要があり、また定期的にリチウムの血中濃度を検査する必要があります。

 


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