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ストレスと心身症


ストレスという言葉は最近では聞かない日がないくらい私たちの日常に入りこんでいます。確かにストレスは色々な病気に関係しますから、心身の健康のためにはたくさんの人が関心を持たれるのは当然のことです。ストレスと病気の関係を考えるにあたって、第一に大切なことは、

ストレスは主観的なもの

だということです。同じ状況でも、それをストレスと感じるかどうかは、人によってまちまちです。たとえば、仕事で時間が切迫してきた時、それをストレスと感じる人もいれば、逆にやる気が高まる人もいます。また、まわりに困っている人がいる時、それを面倒なこと、ストレスになることと感じる人もいれば、逆に助けることに喜びを感じる人もいます。どちらになるかを決めるのは、主観的な感じ方です。このことは、実際にストレスにどう対処するかを考える場合にとても重要なことです。ストレスはエネルギー源にもなれば、一方で病気の原因にもなるのです。

ストレスによる病気はたくさんあります

というよりも、ストレスが関係しない病気はないと言っても言い過ぎではないでしょう。こころの状態はあらゆる病気に関係します。その中で、特にストレスとの関係がはっきりしている病気を心身症といいます。胃かいようやぜんそくは代表的な心身症で、ストレスを無視しては治療できません。そのほか、高血圧、過敏性大腸症候群、片頭痛、リウマチ、じんましん、円形脱毛症などもあります。自律神経失調症も、心身症の一種と言えるでしょう。

ストレスと病気の関係は科学的にも証明されています

ストレスをキャッチするのは脳です。脳はストレスに対応しようとして、自動的に神経系に命令を発します。神経系は免疫系と密接につながっていることがわかっています。免疫系とは、病気と戦うために元々からだにそなわっている装置のようなものです。病気への抵抗力は免疫系の状態によって決まります。つまり、外からのストレスそのものではなく、ストレスに対するこころと脳の反応が病気につながるのです。昔の人はそれを経験的によく知っていて、「病は気から」と言ったのです。

病は気からも他からも

ただし、「病は気だけから」ということはありません。「心身症」とか「ストレス性」とかいっても、ストレスだけが原因ということはあまりないことです。他の原因とからみあって病気が発症するというのが正確な表現になります。

また、今の医学のスタンダードな診断手順というのは、身体の検査をしても原因が見つからない時に、ストレスが原因と推測するのが普通です。ということは、本当は身体に原因があって、検査で見つからなかっただけということもあるので、注意が必要です。

それから、こころの病気はストレスによると漠然と考えている方もかなりおられるようですが、それは誤解です。実は、精神医学で正式にストレスが原因とされているのは、PTSD、急性ストレス反応のふたつしかありません。もうひとつ、国際的には認められていませんが、反応性うつ病もストレスが原因と言えます。それ以外の病気は、ストレスが関係するのは確かでも、原因とまでは言い切れないのです。ストレスというものは主観的なものであるということがその理由でしょう。PTSDのように、客観的に誰が見てもストレスによって発症したと認められない限り、なかなか「ストレスが原因」とは言い切れないのです。

 


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