図書室
躁うつ病
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●●こころと体の対話
神庭重信著 文春新書 1999年私のサイトのタイトルも「こころと脳」の相談室ですが、医学が人のこころを扱う場合、人の脳を問題にせざるを得ません。しかし、脳はあまりに複雑なために、つい脳を無視してこころの問題を語ったり、逆に脳についてわかっている限られた事実から、こころについてすべてわかったような飛躍した結論を出すこともありがちなことです。本書、「こころと体の対話」の著者の神庭(かんば)先生は、こうした傾向を避け、科学的な事実に忠実に従う一方で、人のこころを大切にするという医師の基本的な立場を最大限に重視した立場を固守しておられます。「こころと体の対話」とは、脳やこころの状態がいかに体の病気に影響するかについてを研究する「精神免疫学」についての入門書です。まさに「ストレスと心身症」を科学的に解説した本と言えます。
歴史上の症例や現代の症例から始まり、かなり専門的なことまで書かれています。新書としてはやや難しい本と言えるかもしれません。けれども、頑張って読むだけの価値がある本です。
●●「図解雑学 ストレス」
長嶋洋治監修 ナツメ社 1998年読みやすい本です。ストレスをまず科学的に解説し、これに対応するからだのしくみや、そのしくみが破綻した場合の病気の発生について説明されています。「図解雑学」という題に示されているように、見開きページの左が文章による解説、右が図解(というよりマンガ)になっており、どこから読んでもスムースに理解できるようになっています。わかりやすく説明することを第一にしているので、細かい点は厳密にはやや不正確な部分もあるのですが、ストレスに関する現代医学の概観を知るには手頃な本といえるでしょう。
●●「ストレス危機の予防医学」
森本兼曩(もりもと・かねひさ)著 日本放送出版協会 1997年
ストレスは現代の流行語でもあります。流行に便乗していい加減な解説をする本もたくさん出ているように見えます。そんな中にあってこの本は、すべてデータに基づいた確かな根拠のある解説がされています。逆に理屈っぽいという面もありますが、正確な記載のためにはある程度やむを得ないことでしょう。
ストレス度のチェックなどの質問表もたくさん紹介されており、これを順番にやっていくのも面白いかもしれません。本サイトの診察室で使用している健康評価表の解説もあります(本の131ページ)。