【4143】 些細なきっかけで激怒する夫は躁うつ病なのでしょうか
Q: 主人は41歳、私は42歳、3人の子供がおります。去年の春より鬱病と診断され通院、投薬を受けております。
当初は、落ち込みがひどく、泣いたり、死にたいと典型的な鬱の症状でした。
最近は落ち込みもなくなり、主治医も本人も回復してきたと言っています。
しかし、私は何か腑に落ちないのです。
主人の父は家庭内暴力、母はその父にかまいっきりで淋しい子供時代を過ごしたようです。
そのためか、未だに甘えたいとの気持ちが強く、私に母のような愛情をもとめるのか、子供にさえ嫉妬します。
ACや境界性人格障害を疑ったこともありましたが、主治医には一笑されただけです。
特に思うのが感情の起伏の激しさです。
今笑って話していたかと思うと何かがきっかけ(それも私のささいな物音や態度)によってスイッチが入ってしまうというか、激怒するのです。
それも普通の怒り方ではなく、暴言、暴力が加わります。
出て行け!殺すぞ!離婚じゃ!と怒り狂ったあとは今度は泣き出したり、怒りの分だけ落ち込みがひどいのです。
最近は鬱がなくすごく強気です。
私を怒鳴り散らし、車の窓ガラスを割られそうになり、警察を呼びました。
警察にも市会議員に言って処分させたるとか、俺を誰やと思ってるんやと散々騒ぎました。
もう普通じゃありません。
それで何かがおかしいと思い始めたのですが。
主治医とは信頼関係があるようです。
躁うつ病ならば薬も違ってきますよね。
主治医は私のような素人が口を出すのを嫌がる雰囲気です。
本来の主人に何とか戻ってもらいたい気持ちでいっぱいなのですが、私も限界がありそうです。この前パニックになり過呼吸になってしましました。
林: このメールは診断名を推測するうえで最も重要な部分の記載が曖昧なため判定困難ですが、結論を先にお示ししますと、ご主人は躁うつ病の可能性が高いと思います。以下、この結論に至る考察を順に記します。
些細なきっかけで激怒する夫は躁うつ病なのでしょうか
「些細なきっかけで激怒する」というだけでは病気か否かはもちろんわかりません。
去年の春より鬱病と診断され通院、投薬を受けております。
当初は、落ち込みがひどく、泣いたり、死にたいと典型的な鬱の症状でした。
最近は落ち込みもなくなり、主治医も本人も回復してきたと言っています。
この時点ではうつ病の診断に間違いないでしょう。
しかし、私は何か腑に落ちないのです。
メールの文書はここで転じ、本題に入っています。
主人の父は家庭内暴力、母はその父にかまいっきりで淋しい子供時代を過ごしたようです。
そのためか、未だに甘えたいとの気持ちが強く、私に母のような愛情をもとめるのか、子供にさえ嫉妬します。
文脈からはこれが本題であると読めます。すると質問者は、生育歴が関係したパーソナリティの問題として、現在のご主人の問題をとらえているように読めます。
そしてその問題の一つとして
特に思うのが感情の起伏の激しさです。
この「感情の起伏の激しさ」が挙げられています。
今笑って話していたかと思うと何かがきっかけ(それも私のささいな物音や態度)によってスイッチが入ってしまうというか、激怒するのです。
それも普通の怒り方ではなく、暴言、暴力が加わります。
確かにこれは普通ではありません。しかしここまでの文脈からは、うつ病になる前のご主人にはこういう特徴があったと質問者が言っているようにも解釈できます。
出て行け!殺すぞ!離婚じゃ!と怒り狂ったあとは今度は泣き出したり、怒りの分だけ落ち込みがひどいのです。
一方でここには躁うつ混合状態の色彩があります。
私を怒鳴り散らし、車の窓ガラスを割られそうになり、警察を呼びました。
警察にも市会議員に言って処分させたるとか、俺を誰やと思ってるんやと散々騒ぎました。
もう普通じゃありません。
「市会議員に言って処分させたる」「俺を誰やと思ってるんや」は、躁うつ病の躁状態の特徴である万能感ないしは誇大的な考えを思わせます。この症状と、元々うつ病で治療されていたことをあわせれば、ご主人は躁うつ病で、最初の病相がうつ病相であったためにうつ病と診断されていたところ、躁転したこの時点で躁うつ病(双極性障害)であることが判明したという、躁うつ病ではよく見られる経過であると普通は判断できます。しかしここで、先に指摘したように、メールの文脈からは元々ご主人はこうした傾向をお持ちだったとも読めるので、判定困難ということになりますが、
それで何かがおかしいと思い始めたのですが。
という文章がここに現れているところをみると、質問者は、今の状態はご主人の元々の状態とはかけ離れているとみているということでしょうか。そうであれば上記の通り、ご主人は躁うつ病であると考えて矛盾はありません。
躁うつ病ならば薬も違ってきますよね。
その通りです。
主治医は私のような素人が口を出すのを嫌がる雰囲気です。
診断のためにはこのメールに書かれているようなご主人の状態を主治医に伝えることが必要です。躁状態は、とても重度であれば、診察室での様子だけですぐに診断できますが、それほどではなかった場合には、ご家族から普段の様子についての情報をお聴きしないと診断困難です。「主治医は私のような素人が口を出すのを嫌がる雰囲気」が事実なのか、質問者の一方的な印象にすぎないのかは不明ですが、もしその印象が前述の「ACや境界性人格障害を疑ったこともありましたが、主治医には一笑されただけです」からきているとすれば、診断名を示唆することと状態を報告することは全く違いますので、「口を出す」こととは次元が異なります。
本来の主人に何とか戻ってもらいたい気持ちでいっぱい
今の状態を正確に主治医に伝え、適切な治療をしていただければ回復できます。
(2020.10.5.)