【4760】既に通院をやめた医療機関にカルテの開示を求められるのか

Q: 私は20歳の女性です。林先生のホームページには、1年ほど前から機会があれば訪問するという形でアクセスさせていただいております。  精神科か心療内科に通うようになって6年になります。診療科目が判然としないのは、この辺りでは明確に区分されている医療機関が少なく、また自分の病名が何であるか未だかつて言い渡されていないためです。ただし、双極性障害の「気がある」とは言われています。 が、だんだんと「精神疾患があるとは夢にも思わなかった」とか、「この待合にいるにしては表情が豊かだ」、「アンタ、こんなとこ来なくてもいいんじゃないの?」とか言われる頻度が増えてきました。稀に人目のないところでは波ができますが、頓服で調整できる程度、薬が効いて症状が落ち着いているのだろうと思っています。 それに当たって、もう一度、これまでの自分と向き合いたいと思っています。「自分と向き合う」という言葉にはいささか、メッキ様の薄っぺらさを感じますが、他に適当な言葉もなかったので、そのままとさせていただきます。 今回お答え願うのは、既に通院をやめた医療機関にカルテの開示を求められるのか、ということです。この質問に至る経過は、最大限に必要と思える分だけをお知らせしようと思います。
今の主治医に巡り合ったのは、約1年前のことです。 その2か月前、わたしはまだぎりぎりの状態で大学に通っていました。足元はふらつくし、眩暈もするし、何より頭の奥からくる眠気に苛まれて、いつでも倒れたって不思議ではないと思えました。屋外が怖い、けれど部活で慕ってくれる後輩ができて、ようやく頑張っていこうと心に決めた、週明けのことでした。 当初母には「眠らなかったのは、なんとなくそんな気がするからだ、ということにしよう」という軽い気持ちで、全身に痛みがある旨を伝えました。その頃は乳酸が溜まっただけのような、些細で鈍い痛みでした。するとみるみるうちにそれが本当に鋭い痛みになり、触れただけで、あまりの訳の分からなさに笑いだしてしまうくらいにまでなりました。そのうち誰も見ていなくたって、胸の痛みに喉が裂けるような悲鳴を上げるようになり、母に「仮病が本当になったのかも」と打ち明け、予約も取っていない中無理を言って、遠方の前主治医に面会したところ、「うちは精神科ですよ? 痛みのことなんて分かるわけがないでしょう」と切り捨てられ、心因性のものと告げられもしなければ、どこを紹介されることもありませんでした。 また、医療機関専属のカウンセラーにはこう言われました。 「眠いだの怖いだの今度は痛いだの……あなたいったい何から逃げているの? あんなに行きたがってた大学じゃない。理解できない。教えて」  わたしでさえ理解できませんでした。今でも同じ気持ちです。 矛盾しているのです。学友がいて、仲間がいて、好きなことについて沢山知ることができて、尊敬できる先生に師事できて、とても綺麗な、キャンパスに行きたい。けれど、そこがあまりに怖いのです。最初はふらふらの病人ゆえに人目が。ハードな部活の、息抜きをしているうちに『使えなく』なっている事実が。一歩キャンパスを出ると、誰もわたしを助けてくれないことが。背中から自分の声で「死ね」と囁かれているような気になることが。仕舞いには、精神疾患を持っていることをしつこく事務方に顕わにしたために、視線も合わせてもらえなくなったことが。 一瞬ではそれだけ多くのことを伝えることができませんでした。ただその時は、一番怖いものについて伝えました。自分の声です。わたしは死にたいのかもしれない。事実、そうしたいと、数年来何度も何度も思っていたのですから、そうなのかも知れなかったのです。でも、認めたくありませんでした。今ならはっきりと、事実に反しているからだと言えます。けれど、それを言ってしまったということが、さらにわたしを追い込みました。 帰路で何度か自殺を試みて、結局、ある賭けの結果としてやめました。母には感謝しています。数週間後、その医療機関には紹介状を書いてもらい、転院する形で通うのをやめました(余談ですが、最後のやり取りは、受付を兼ねる看護師によって会計皿に釣り銭を投げ渡されたことでした)。  初め転院先として考えていた医療機関には、「総合病院の精神科よりも、心療内科の診療所で話を聞いてもらった方がいい」と言われ、手探りで医師を探しました。投薬のない約1ヶ月の間は、何度も朝になるとおんおんと号泣し、包丁の切っ先と問答し、昼頃には胸の痛みに、窓を開け放したまま叫び声を上げました。  ですから、巡り合えた主治医、いえ診療所は本当に素晴らしいところだと思いました。常に何人かのケースワーカーが待合で患者との茶化し合いをするか、電話相談に応じるかしていて、また、患者同士仲のいい様子も見られます。それもそのはず、地元の医療機関なのですから。交通費も自転車ならばただ(以前のところは片道380~590円)で、診察代も半額以下というか、任意のカウンセリング込みで2000円台(以前のところはやはりカウンセリング任意で6500円+電話相談時に発生する診察代)。当初は「どこがバックボーンだろう」などと、両親とよく食卓の話題にしました。 なにより、躁状態に処方する薬剤に3種類があり、わたしの場合はリーマスが足りなかっただけで大きな落ち込みが現れたのだと、たった数回、約1か月強の診察で明らかにしてくれたのもその医師でした。といって、明言は避けられています(もっとも、セカンド・サードオピニオン先の医師も「躁症状があるならリーマス100しかない」としか言わなかったのですから、薬剤に種類があるということだけで充分に、本当に驚くべき事実でした)。以前のところは躁症状そのものを知るまでに2年の歳月と高校からの通報を要していますが、それまでとそれからはいったいなんだったのか。レキソタンの服用をやめた途端に、あの重く暗い靄が晴れ、眠気から解放されたのを新鮮な喜びで迎えられたのを覚えています。 またメイラックス錠にて痛みが軽減されたのをきっかけに、神経内科も勧めてもらうことができました。現在、LYRiCAの服用にて『ハタチの夏』を(療養者として許される範囲で)満喫しています。  それ以来、母とふたりで前主治医や、彼を紹介した児童相談所に関する陰口を叩いては、「どうにか仕返しがしたい」と結ぶようになりました。もっとも、そんな財力はとうになくなりましたし、その話題も次第に費えつつあります。 けれど、林先生のホームページを拝見するに、本当にわたしは病気だったのか(不必要な薬剤の副作用で病人に仕立て上げられていたのではないか)という疑念が再び沸き起こり、またさまざまな質問へのご回答を拝読するうちに、前主治医には彼なりのやり方が(もちろん)あって、決して不適切な処置を受けて歳月を過ごしたわけではなかったのではないかと思えてきました。 それを確認するにはもちろん、当時のわたし自身の状態を知る必要があるのだろうとも。  そこでお尋ねしたいのが、冒頭の、『既に通院をやめた医療機関にカルテの開示を求められるのか』ということです。通院をやめたのは当方の意思によるもので、たとえ開示請求が可能であったとしても、看護師の態度からもそれが歓迎されないことは明らかです。なにか代替手段がありましたらお示しくだされば幸いです。

 

林:
既に通院をやめた医療機関にカルテの開示を求められるのか

もちろんできます。カルテ開示には法律上、除外事由が存在しますが、「既に通院をやめている」ことは除外事由には相当しません。
但し、質問者がカルテ開示を求めようとお考えになった理由が、当時のご自分の状態を知るため、ということになりますと、カルテを読んでもそれはよくわからないと思います。
それよりも、今の状態の評価と、未来をより良くすることの方がはるかに重要で、そのためには今の主治医の治療をしっかりと続けることが第一です。

(2023.12.5.)

05. 12月 2023 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A, 躁うつ病