【4007】 ADHD の診断が思ったよりあっさりしていた
Q: 18歳で社会人1年目の女性です。質問したい内容は件名の通りです。
先日、精神科に行ってADHDだと思うんですがどうでしょうかときいてみたところ、過去の話を詳しく聞かれたりはしましたが、それだけであっさりと「典型的なADHDなのでお薬出してもいいと思います」と言われ、コンサータを処方してもらえました。
仕事で困っているというのを強調したからというのもあるかもしれませんが、周囲の発達障害の方に比べて診断にスピード感がありすぎて驚いています。
周囲の発達障害の方は子供の頃の話を親にもしてもらう必要があったとか(このかたは学生の頃に診断されたのでそのためかもしれませんが)、まずは知能検査を受けてから診断がなされたとか、とにかく私のように患者自身の自己申告だけ、それも初診でじゃあADHDですね~と診断はしなかったとのことです。
実際困っているのでありがたいにはありがたいのですが、例えば私の発言が虚言であるとかエピソード自体が私の思い込みであったとか、そういった可能性もあるわけで、こんなにあっさり診断を出す人を信用してもいいのだろうか?という気持ちになっています。
先生はどう思われますか?
ちなみに知能検査については予約がいっぱいなので数ヶ月後に受ける予定です。
林: ADHDの診断は、現在の状態、経過(生育歴を含む)、検査所見などを総合して行うものです。このうち、検査は補助的なもので、検査所見によって診断が確定したり否定されたりすることは、あるとしても例外的と言えます。
このケースでは、
過去の話を詳しく聞かれたりはしました
とのことですので、診断手法が適切だったかどうかは、ひとつは現在の状態を医師がどのように判断したかによります。それは「詳しく聞かれたり」の「たり」の内容によります。もうひとつは過去の話をどの程度まで聞かれ、それがどの程度まで正確なものであると判断されたかによります。それは「過去の話を詳しく聞かれたり」の「詳しく」の程度によります。どちらもメールに記載されていませんので、適切だったか不適切だったかの判断は不可能です。しかし、「詳しく」と書かれている以上、適切だった可能性が低いとは言えません(さらにご両親などから話を聞くことが望ましいですが、現在の状態と本人の話からかなり確定的に診断できる場合があります)。ですから、
それだけであっさりと「典型的なADHD
それを「あっさりと」というのは質問者の解釈にすぎず、その診断が「あっさりと」といえるものであったかどうかはわかりません。むしろ、「過去の話を詳しく聞かれた」ということは、決してあっさりではないと考えるほうが妥当です。逆にADHDを「あっさりと」(これは不適切という意味を含んでいます)診断する例としては、過去の話などをあまり聞かず、検査結果のみに基づく場合などを挙げることができます。
ただし、
「典型的なADHDなのでお薬出してもいいと思います」と言われ、コンサータを処方してもらえました。
ADHDだからといって、薬物療法を行うのが適切とは限りませんので、診断が適切だったとしても、この治療が適切かどうかは別の話です。むしろ、コンサータの処方などは慎重に行うべきものです。したがってこの【4007】については要約すると、
診断については妥当でないと判断する根拠は乏しい
治療については妥当であると判断する根拠は乏しい
ということになります。林の奥のADHDの薬、それは治療か商売かもご参照ください。
(2020.3.5.)