【3925】何か病気なんでしょうか、親からは甘えだと言われます

Q: 僕は27歳になる男です。
昔から悩んでいることを中々人に相談することが苦手です。話してねなんて友達に何度も言われ、悩みに悩んで思いきって相談すると「ん?」という困った顔をされます。自分の悩みはたいしたことはない、言えば相手を困らせる、そう思ってしまい既に27年経ちました。人に打ち明けることがとてつもなくめんどくさく感じます。なのに人からは沢山相談してきます。話を聞いて、アドバイスできるところはして、側に駆けつけたりもします。そしたらみんな「ありがとう、あなたがいてくれてよかった」と言うのです。僕は感謝されることなど何もしてません。相談されることもめんどくさく感じながらいるからです。

一番問題なのが、仕事が長続きしません。仕事の昼休憩が苦手で、吐き気がするくらいご飯が喉を通りません。食堂にて誰かに見られている、見張られている感じがして、とても苦痛です。人に会えなくなり体が重くなり外に出れなくなり、仕事を辞めてしまいます。でも仕事場の人とはコーヒーをおごってもらったり良い人たちばかりなのに、苦しくなって辞めてしまいます。自慢できるほど記憶力がよかったのに、今は記憶力が一気に低下しました。一人で帰っている時もそうです。誰も見ていないのは当たり前ですが、見られていると感じてしまい、車や人がこない道を選んで遠回りをしてしまいます。
車とすれ違っただけで、見られていることを誤魔化すためになぜか咳払いをしてしまったり、口から勝手に「車早く走れよ」と言ったりしています。何で今声に出したんだろうと不思議になることもしばしばです。
仕事中も歩いている時などでも、頭の中は妄想でいっぱいです。気づいたらかなりの時間が過ぎている感じがあります。
仕事中はとにかく自分が死ぬ妄想ばかりをします。機械に腕が挟まる等を妄想します。酷い時は銃を持った人が工場に乗り込んできて等。
そんなことは起きないのですが、何故か死にたくて仕方ないのです。
すべてが嘘なんじゃないかと思うこともあります。今までのすべてです。お付き合いしてきた女性たちとの思い出も辛いものばかりで、いっそ嘘ならばと考えてしまいます。僕自身が存在することも嘘のように思えたりします。
最近夜中にすすり泣く女性の声がします。かわいそうですが、話すことも姿も見えません。これも嘘なんでしょうか。
僕は誰なんでしょうか。

ずっと家族に「精神病は甘えだ。お前は何も頑張らない」と言われてきました。10代の時に精神科に行くことを許してもらえませんでした。やはり甘えなんでしょうか。こんな僕にも夢があり10年以上やり続けていることがありますが、上手くいっていないから頑張っていないと言われるんでしょうか。
さっさと終わりにすべきだと誰かが言います。夢も諦めろとそいつが言います。正直もう自分がどれなのかわかりません。最近はひたすら眠り続けてしまいます。ずっと眠くて仕方ないんです。現実だからでしょうか。

 

林: 経過と症状の両方が漠然としか書かれていませんのでよくわかりません。
すなわち、

一番問題なのが、仕事が長続きしません。

これが最もお悩みであるということはわかりますが、それはいつからなのか。
質問者は27歳とのこと、当初は仕事は普通にできていたのに、あるときから長続きしなくなったのか。それとも、社会に出た当初から仕事が長続きせず何度も転職を繰り返しているのか。また、どちらの場合にせよ、仕事を辞めるときには何かきっかけがあったのか。そのきっかけは辞めるときには共通しているのか。

食堂にて誰かに見られている、見張られている感じがして、とても苦痛です。

これは仕事を辞めるときは毎回そうだということなのか、それとも、最近になってこういう症状が出てきて、仕事が長続きしなくなったということなのか。

自慢できるほど記憶力がよかったのに、今は記憶力が一気に低下しました。

それはいつからなのか。仕事が長続きしないことの関係はどうなのか。

仕事中も歩いている時などでも、頭の中は妄想でいっぱいです。

その妄想とは具体的にどのようなものか。(その記載がなければ、そもそもそれが妄想かどうかがわかりませんし、仮に妄想だとしても、精神病的なものかどうかがわかりません)

以上のように、経過も症状も漠然としており、よくわかりません。
ただし、

食堂にて誰かに見られている、見張られている感じがして、とても苦痛です。

一人で帰っている時もそうです。誰も見ていないのは当たり前ですが、見られていると感じてしまい、車や人がこない道を選んで遠回りをしてしまいます。
車とすれ違っただけで、見られていることを誤魔化すためになぜか咳払いをしてしまったり、口から勝手に「車早く走れよ」と言ったりしています。何で今声に出したんだろうと不思議になることもしばしばです。

これらは統合失調症の前駆期や初期にみられる被害関係念慮、ないしは被害関係妄想の色彩がある症状と言うことができ、これらだけではしかし何とも言えませんが、

仕事が長続きしません。仕事の昼休憩が苦手で、吐き気がするくらいご飯が喉を通りません。

自慢できるほど記憶力がよかったのに、今は記憶力が一気に低下しました。

このように機能低下が認められることや、

仕事中はとにかく自分が死ぬ妄想ばかりをします。機械に腕が挟まる等を妄想します。酷い時は銃を持った人が工場に乗り込んできて等。
そんなことは起きないのですが、何故か死にたくて仕方ないのです。

このような、一種不可解な死への傾倒、

最近夜中にすすり泣く女性の声がします。かわいそうですが、話すことも姿も見えません。

このような、幻聴と解し得る症状、

すべてが嘘なんじゃないかと思うこともあります。今までのすべてです。お付き合いしてきた女性たちとの思い出も辛いものばかりで、いっそ嘘ならばと考えてしまいます。僕自身が存在することも嘘のように思えたりします。

このような、説明し難い不全感、

これらを総合すると、統合失調症の前駆期または初期である可能性が浮上します。

また、メール前半部分は症状と直接関係がないように見えますが、おそらく質問者としては何らかの関係を自覚されており、また、メールの冒頭に書かれているということは、むしろその部分が重要であると自覚されていることも窺われ、すると、思考障害の可能性を示唆するものであるという解釈が可能です。

これらを総合しますと、回答の冒頭で述べた「経過と症状の両方がかなり漠然としか書かれていない」というこのメールの性質自体が、統合失調症の症状を反映しているという解釈も可能です。

統合失調症では、特に前駆期や初期には、ご自分の症状をうまく言葉で表現できないということがしばしばあります。その理由は、これまで体験したことのない症状であるため、それにあたる言葉がそもそも存在しないというのが一つの説明になります。たとえば 幻聴 という症状は、 声が聞こえる と表現されるのが一応は典型的ですが、実際には聴覚としての体験とは異なると考えられます。そう考えられる一つの根拠は、統合失調症の方の多くが、仮に「声が聞こえる」と表現されても、その内容を詳しく聞かれると、どのように聞こえているかがうまく答えられないという事実です。また、経過と時期によっては、聞こえているのか自分が考えているのかよくわからない、という場合もあります。幻聴の発生メカニズムを考えてみれば、現実に外界で声が発生しているはずはないので、「本人の脳の中で発生したものが外界からの声として本人には認識されている」と考える以外になく、すると、本来は自分の脳の中の「考え」であるものが、いわば他者性を獲得して(←ここに、おそらくは統合失調症という病気の本質があります)、時には圧倒的な力を持って迫ってくる、ということができます。

この【3925】に戻りますと、メールに書かれている複数の症状は、その一つ一つを取り上げてみただけでは病気の症状とみる根拠は薄弱ですが、すべてを総合すれば、統合失調症の前駆期または初期という全体像があぶり出されます。そして、メールの記載が漠然としていること、論理展開がやや不可解であることもそれを支持します。
結論としては、この【3925】は統合失調症の初期または前駆期の可能性がかなりあるということになります。精神科の受診をお勧めします。

(2019.12.5.)

05. 12月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: , |