【3821】主治医はなぜ私の不調に気づけるのでしょうか

Q: 30代女性です。私は双極性障害です。治療を10年近くしており、2回入院もしましたが、良くなったり少し悪くなったりを繰り返しながら、今は結婚して子供ももうけることができています。 私の先生は、とても不思議な人です。私は、自分の家族や友達には、自分が鬱でも躁でも、ある程度隠すことができます。10年で上手くなったと思います。とても隠したい気持ちが強く、家族が気づいた時にはかなり悪化していることが多くありました。 ですが、今の先生に出会ってから、なぜか先生の前ではきちんと演じることが出来ないのです。少し悪化して、家族に隠してる段階で見抜かれてしまいます。そして、話を上手く聞き出してくれます。結果、薬が増えることもありますが、大抵は調子の悪くなった原因を吐き出すことで、ゆっくり調子が戻ったりします。 質問は以下の二点です。
(1) 主治医の先生はなぜ、家族さえ気づかない私の不調に気づけるのでしょうか。専門家だから、とおっしゃるかもしれませんが、過去数人の先生に診て頂いて、今の先生以外には多少の不調は隠せていたんです。それが悪いことという意味でなく、単純に不思議なのです。
(2) 本当は、隠している状態と思っているほうが本当の私で、先生の前では調子の悪いフリをしているのではないか、と思うことがしばしばあります。だとしたら私はとんでもなく卑怯な、精神疾患のフリをして気を引きたいバカです。どちらが本当の私かわからなくなることがあります。調子が戻ると、ああ、やっぱりあの時は調子が悪かったと思うのですが、最中はそんな風に考えます。私が卑怯者かどうか見極める方法はありますか?  どうぞよろしくお願いいたします。

 

林:
(1) 主治医の先生はなぜ、家族さえ気づかない私の不調に気づけるのでしょうか。専門家だから、とおっしゃるかもしれませんが、過去数人の先生に診て頂いて、今の先生以外には多少の不調は隠せていたんです。それが悪いことという意味でなく、単純に不思議なのです。

それはよくあることです。精神疾患の症状とは、言葉で書くと「抑うつ」「不機嫌」「興奮」「いらいら」などで、健康な人に見られるものと区別がつきませんが、実際にはそれぞれの精神疾患特有の色彩があり、それは言葉では表現しにくいのですが、一定の経験ある精神科医が見れば健康な心理とはかなり区別がつくものです。長くみている主治医であればさらによく区別がつくものです。したがって、ご家族が気づかない不調に主治医の先生が気づいても全く不思議はありません。

(2) 本当は、隠している状態と思っているほうが本当の私で、先生の前では調子の悪いフリをしているのではないか、と思うことがしばしばあります。だとしたら私はとんでもなく卑怯な、精神疾患のフリをして気を引きたいバカです。どちらが本当の私かわからなくなることがあります。調子が戻ると、ああ、やっぱりあの時は調子が悪かったと思うのですが、最中はそんな風に考えます。私が卑怯者かどうか見極める方法はありますか?

世の中には精神疾患のふりをする人はたくさん存在しますが、この【3821】のケースはそうではないと思います。これもまた言葉で説明するのは難しいのですが、ご自分の症状についての書き方からみて、真の精神疾患であることは十分読み取れますし、しかも医師から双極性障害と診断されていることを加えれば、「精神疾患のフリ」の可能性は限りなくゼロに近いでしょう。

(2019.5.5.)

05. 5月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 躁うつ病