【3795】スマホでやることがあると言って入院を拒否している息子

Q : 20代の息子のことについてお伺いします。私は父親(50代)です。
4年前、息子は統合失調症と診断され幻覚が強くそれに踊らされることもあり入院しました。
そのときは大学の都合もあり1ヶ月ほどで退院しました。
その後、思考力の低下もありつつもなんとか大学は卒業したのですが、就職できず、しばらく家で過ごしていました。

1年ほど前に一旦就職の訓練もやったのですが朝起きれない、起きても余計なことを考え込んで出れないということが続きしばらく無理そうだと断念しました。
ここ半年では、疎通性は一応あり感情が昂らなければ普通に会話はできます。幻覚に操られるなど激しい症状はないものの昼夜逆転傾向があり、(朝4時に寝て昼に起きたり)生活リズムの乱れ、食事のみだれ(一食しか食わなかったり逆に何回でも食う)そして最近困ったことには、妻に対してひどくキレるということがあります (もちろんもともと甘やかし気味であり、その点もあるとは思うのですが、キレることはもともとは無いのです。)。
主治医にお伺いしたところ、薬の調整だけではちょっと難しい、一旦入院も視野に入れた方がいいのではとのことでした。
ただ、その入院先として提示された病院(現在はクリニックに通っており、そのグループだそうです)では、息子が調べた限りではスマホを使えないそうで、それを嫌がります。息子いわく、「スマホでやらないといけないことがある。代わりにやってくれるならいいが」とのことでした。例としては、ゲームの「ログインボーナス (起動するとボーナスアイテムがもらえるそうです)」 とか、○○を登録してほしいとか言われましたが、正直私にはちんぷんかんぷんでした。
もちろん、スマホなどがあまり良くないと言うことは知っています、ただ、本人の希望を拒んでフラストレーションを溜めてもいけないので、せめて数時間くらいでしたらいいのではと思い、調べてみましたところスマホは許可次第だが使える病院もあるという情報もあるので、そうした病院への入院を検討しようと考えているのですがいかがなものでしょうか。主治医に意見するというのも気が引けますので、まずこちらで意見をいただけたらと思い質問させていただきました。

 

林:
調べてみましたところスマホは許可次第だが使える病院もあるという情報もあるので、そうした病院への入院を検討しようと考えているのですがいかがなものでしょうか。

このご質問にお答えする前に、二つのことを確認する必要があると思います。

入院先として提示された病院(現在はクリニックに通っており、そのグループだそうです)では、息子が調べた限りではスマホを使えないそうで

まずこれについて、息子さん任せでなく、ご自分で確認していただくことが必要だと思います。入院という重要な事項について意志決定をしようとするとき、「スマホを使えないそうで」ではあまりに頼りない情報です。その病院ではスマホは一切使えないのか。条件つきなら使えるのか。院内では使えなくても、外出などのときに使うという方法はないのか。など、質問者ご自身で病院に問い合わせるなどして確認することがまず必要でしょう。前提となる事実確認が曖昧では、本来は話を先に進めることはできません。

それからもう一つは、

主治医にお伺いしたところ、薬の調整だけではちょっと難しい、一旦入院も視野に入れた方がいいのではとのことでした。

こちらは医学的判断になりますので質問者がお一人でお考えになるのは難しく、また、主治医の意見である以上は従うことが基本であるとは言えますが、入院の必要性がどれほどのものであるかの確認は必要でしょう。「薬の調整だけではちょっと難しい」とのことですが、ご本人が薬を拒否せず素直に服用されるのであれば、外来での処方調節と生活指導等で改善が望めないとまでは通常言えません。おそらくこのケースは「どちらかと言えば入院したほうが望ましい」という段階の状態だと思います。そのような状態では、入院に抵抗がなければもちろん入院したほうがよいと思われますが、この【3795】のようにご本人に入院に抵抗がある場合には(そして、メールの内容からは、外来での治療には抵抗がないように思われます)、入院せずに治療を続けるという選択肢も積極的に考えるべきでしょう。

以上のとおり、入院するという決定の前に確認すべき問題がありますが、仮にこれらの問題は十分考慮したうえで、「入院治療が必要である」「主治医が勧める病院ではスマホは一切使えない」ことが確認されたとして、

調べてみましたところスマホは許可次第だが使える病院もあるという情報もあるので、そうした病院への入院を検討しようと考えているのですがいかがなものでしょうか。

という質問にお答えするとすれば、答えは「そうすることが勧められます」になります。
理由は質問者がおっしゃる通りで、

本人の希望を拒んでフラストレーションを溜めてもいけない

からです。
仮にこのケースが非常に重い症状があり、たとえ本人の意志に反してでも入院させて治療しなければならないという状態でしたら話は別ですが、【3795】はそこまで重症とは判断できず、そして統合失調症という病気の性質上、今後も長い期間にわたって治療を続けることが本人の回復に資する以上、今の時点で本人の意に反することを強要して医療への抵抗感を高めることは、仮に一時的には症状が改善したとしても、長期的にはむしろマイナスになります。したがって、なるべくご本人の意にそった形での治療が勧められます。

(2019.3.5.)

05. 3月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 病院を変えたい・変えるべきか, 精神科Q&A, 統合失調症