【3675】夢に入る前の相談です

Q: 私は29歳の女です。 お忙しいところすみませんが、私の長年の疑問に答えを出してください。

15歳の頃、ある日突然眠りに入る直前に肉体が起きず脳だけ起きるという、所謂金縛りというものなのでしょうか。それが18歳頃までほぼ毎日起きていました。
目の奥や耳の中の映像や音で恐怖感にかられ、早く目を開けなければいけないと力を入れて目を開けると、これは肉体の方は起きていないのだということが経験を積み重ね分かっていくようになり、先程よりももっと力を入れて肉体の目を開けます。
脳だけの状態で実験的に外を徘徊したりもしました。肉体の起きる感覚は無いことと、もっと力を入れて肉体の目を開けた時はいつも通りの布団の中なので、夢遊病みたいなものでも無いと思います。今は好奇心がその時の恐怖心に勝てないのでしていません。
19〜21歳くらいには週1程になり、今では月に1回程です。

夢について遡ると、物心がついた時から小学校高学年まで、同じ人物の人さらいの夢しか見たことが無く、夢とはこういうものだと思っていました。友人と夢の話しをし、私のは人と違うと分かったと同時くらいに違う夢も見始めました。
それからは楽しい夢も見るようになり、あの人を出そうと思って出したり、夢の内容自体を自在に変えることが出来ました。今でも恐怖心が来ない限りはしますが、恐怖心を変えることは出来ません。
対処法は肉体の目を開けて、すぐに寝てしまうと必ず繰り返すので30分〜1時間ほど時間を潰してリセットしてから再度寝ます。また同じ目にあってしまった場合は、また肉体の目を開けて再度繰り返します。これが何かを知る為に長い間ネットで調べてみましたが、これだと思えるものはありません。
オカルト的なものなのか精神病のようなものなのか分からず、これが何なのかを教えて下さい。

 

林: これは睡眠麻痺という、ごく平凡な現象です。オカルトでもなく、精神病でもありません。けれども本人にとっては恐ろしい体験で、オカルト的なものであると思い込んでいる人もたくさんいることが知られています。2002年の精神科Q&A 【0236】金縛りについてでも解説していますのでご参照ください。(その【0236】で引用した文献を下に「付」として転記しておきます。)

【3675】の質問者が

これは肉体の方は起きていないのだということが経験を積み重ね分かっていくようになり、

とおっしゃっている通り、睡眠麻痺は、いわば「肉体は起きていない」という状態です。人間の睡眠は大きく分けてレム睡眠とノンレム睡眠があり、夢を見るのはレム睡眠で(これは単純化した説明です)、このときは全身の筋肉は弛緩しています。夢にあわせて動き出さないようになっているという解釈もできるでしょう。そして本来はそのときは文字通り「眠って」いるのですが、意識が覚醒している場合があり、それが一般にいう「金縛り」で、医学用語では睡眠麻痺といいます。
十代には金縛りをよく経験していても、年齢が上がるにつれて自然になくなっていくことが多いものです。ナルコレプシーなどの病気の症状として現れることもありますが、そうでなければ特に心配ありません。

私の長年の疑問に答えを出してください。

睡眠麻痺というよく知られている現象です。心配ありません。

(2018.5.5.)


以下は【0236】からの転記です。

●    Sleep paralysis (by Dahlitz M and Parkes JD)
Lancet 341: 406-407, 1993
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睡眠麻痺はナルコレプシーとは別に起こり得ることが明言されています。
また、睡眠麻痺は症状の性質上、超自然的な原因だと信じられていることが多く、いろいろな国でどういった名前で呼ばれているかの一覧もあります。JapanではKanashibariと呼ばれているということも記されています。

 

● High prevalence of isolated sleep paralysis: Kanashibari phenomenon in Japan
(by Fukuda K, Miyasita A, Inugami M, Ishihara K)
Sleep 10: 279-286, 1987.

日本での睡眠麻痺の頻度についての論文です。635人の大学生のうち、40%が睡眠麻痺の経験があることとか、その中で、男の46%、女の70%が超自然的な原因によると信じているという興味深いデータも出ています。

05. 5月 2018 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A