【3670】頭の中の友人は自分で作ったものです(【2972】のその後)

Q: 2015年5月5日に【2972】二年くらい前から落ち込んだ気分がずっと続いて、最近は頭の中の声が話しかけてきたり、相槌などをうったりしてきます。という相談で答えていただいた10代の女です。あの時は、ありがとうございました。

回答をいただいた後、病院には行かなかったのですが(経済的な理由で現在も行けていませんが、スクールカウンセリングの利用を考えています)、一番の不安が「病気なのか、サボりなのか」ということだったので、先生の簡潔な回答のおかげで少し冷静に自分と向き合えるようになりました。
そうなってより疑問がはっきりしたので、経過を含めて改めて質問させていただきたいと思います。

まず、先生から回答をいただいた後のことをお話します。
あの頃、私は学校の課題で大きなコンクールに参加することになっており、そのことで切羽詰った状況でした。
周りと比べて自分は努力が足りていない、これではいい賞がもらえない……など、焦燥感や疲労で普段以上にネガティブになっていました。何をしていても涙が勝手に出てきたりして、無自覚のうちにプレッシャーにやられていたんだと思います。あの頃のことを思い出すと本当に常にぼんやりしていた、という感じです。
先生から回答をいただいた後(具体的な時期は忘れてしまったのですが)、一度本当に自殺をしてしまおうと思い、食事をあまり取らなくなり、死ぬために学校を休みました。あの頃の私は一人でコンビニにも行けないほど臆病だったのですが、なぜか友人と帰宅中にホームセンターに寄りロープを買いました。
日中なら家族がいないため死ぬチャンスはいくらでもあったのですが、いざ死のうとするとやはり怖くなってしまい、母や当時の担任が気遣ってくれたこともあって、踏みとどまりました(周囲には死のうとしたことは言っていないため、不登校のなりかかりのように思われています)。休んだのは一週間ほどだったので、学校には問題なく復帰することが出来ました。
その時に買ったロープは今も持っています。あの頃の私がたくさん悩んで買ったものだと思うと捨てられません。

今はあの時のように死のうとするようなことはなく、自傷行為(腕を針や刃物で引っかく、足を殴る、血が出ても唇の皮を剥がしつづける)はありつつも、なんとかやっていけています。
当時の質問を読み返すと他人の話のように思えて少し寂しいのですが、頭の中の友達に関しては今でも仲良くしています。

前回のメールには書きませんでしたが、頭の中の友人は自分で作ったものです。中学一年の頃、周りに馴染めなくなったため一緒にいてくれる、離れていかない裏切らない友達を作ろうと思って考えました。それははっきり覚えています。友達と一緒にいるための部屋も頭の中にあって、私型ロボットの、コックピットみたいな感じに思っています。ただ、別に操縦権が複数人にあるとかはなく、あくまでも全部想像のものだと認識しています。
その友達とは楽しく会話することが多いのですが、実際の声と間違えるような感じではなく、全部が頭の中で行われます。私に害のあることは言ってきたりせず、むしろ励ましたり、私が興奮しているときにはなだめて落ち着かせてくれます(前回の質問で死をほのめかすと書いてありますが、たぶんあの時は私がそれを最善だと思っていたので、否定しないでいてくれただけだと思います)。

質問したいことの一つはその友達についてです。その友人達について困っているということはないのですが(一人で笑ってしまうくらいです)、これを誰かに相談しないまま続ければ、統合失調症などの病気に発展してしまったりするのでしょうか。私としてはいなくなってほしくないので、もし問題がないのであれば、これからも自分の中だけのこととして留めておこうと思っています。

二つ目の質問は、精神科Q&Aの他の質問にもたびたび出てくる「昔の記憶がない」ということについてです。
私も中学校以前のことがあまり思い出せず、特に小学校から前のことは部分的にしか覚えていません。それも前後の無いワンシーンずつという感じで、学校や学童保育のことばかりです。家の中にいる記憶は夢で見たものか現実にあったことかわからないものが指十本で足りるくらいしかありません。
いつからだったかはわからないのですが、父が無職で、母は仕事で忙しく、二人が不仲でした。特に特殊な家庭環境というわけではないのですが、自分も気を遣っていたのだろうと思います。離婚の原因や、父の職業や離婚後の行き先などは教えてもらっておらず、中学の頃までは家から無理やり放り出した母や私は人殺しなんだと思っていたこともありました。
私が小学校高学年の頃(おそらく五年生くらい)にクラスメイトに苗字が変わった理由を尋ねられたのでその時期に離婚したことはわかるのですが、私の中では今の家に引っ越すときに前の家に父を置いてきた、という記憶のされ方なので、事実がまったくわかりません。
本当は今の家に引っ越すまでの間(具体的な期間はわかりませんが2,3ヶ月くらい)祖父母の家に住んでいたそうですが、それは最近、母の口から偶然に聞かされて知りました。ですが、聞かされてもあったと思うことが出来ないままです。

精神科Q&Aでは「昔の記憶が無い」ことが解離の症状であるケースがいくつかありますが、「記憶が無い」の具体的な程度がわからないので、私の場合が普通の範囲内なのかがわかりません。
思い出すと知らない子供の話の一場面みたいに見えることや、完全な空白の期間があることは他の方の症状と似ています。自分がぶつ切りと言うか、連続していないように思えることや、記憶のワンシーンが中途半端なところで途切れているものばかりで一つも連続していないことは、普通のことでしょうか。

最近はずっと自分の肉体に起きていることを頭の中の部屋から見ている感覚です。今の背丈に驚くことや、自分がその場にいることに違和感(というより、正気に戻るような感覚)を覚えたり、集団の中にいると歯を食いしばってしまうほどの嫌悪感(初めて起こったのは小学校のプールの更衣室でした、次も着替え中でしたが、最近は入学した学校の初授業と、接客系アルバイトの初出勤のときでした)を覚えます。

あと、解離の症状の中で気になったのは、人の形の幻覚です。はっきり見えたり、見られているとかそういったことは感じないのですが、視界の端に人が映った気がしてはっとすることがしょっちゅうあります。誰かいる、と思って振り向くのですが、見間違えるようなものも何も無いということがよくあります。

上記のように解離の症状に共感できることがあるのですが、私の場合はそういったものではなく、正常の範囲内のことでしょうか。精神科Q&Aの【1031】や【1385】の質問者の方々が自分とすごく似ているので、私も単に性格の問題があるだけなのかもしれません。

 

林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。

頭の中の友人は自分で作ったものです。中学一年の頃、周りに馴染めなくなったため一緒にいてくれる、離れていかない裏切らない友達を作ろうと思って考えました。それははっきり覚えています。友達と一緒にいるための部屋も頭の中にあって、私型ロボットの、コックピットみたいな感じに思っています。ただ、別に操縦権が複数人にあるとかはなく、あくまでも全部想像のものだと認識しています。
その友達とは楽しく会話することが多いのですが、実際の声と間違えるような感じではなく、全部が頭の中で行われます。私に害のあることは言ってきたりせず、むしろ励ましたり、私が興奮しているときにはなだめて落ち着かせてくれます

これは、imagninary companion (IC: 想像上の友人)です。【3037】頭の中に友達がいますなどをご参照ください。【3037】の回答にもお書きしたように、統合失調症に発展する心配はありません。ICは解離の症状です。

このICをはじめとして、この【3670】は解離としてかなり典型的なケースと言えます。記憶を失っているのも、解離性健忘だと考えていいでしょう。また、

最近はずっと自分の肉体に起きていることを頭の中の部屋から見ている感覚です。

これは幽体離脱と呼ばれる症状で、やはり解離によく見られます。【2654】自分の正体がわかりません【3202】解離性障害、PMS、鬱、統合失調症、醜形恐怖症、他、併発しているようなのです。などをご参照ください。
また、幻視(人が見えるという幻覚)も、解離の症状として矛盾はありません。

精神科Q&Aの【1031】や【1385】の質問者の方々が自分とすごく似ているので、

その二つのケースとこの【3670】は、似ているところがあることはありますが、「すごく似ている」とはとても言えません。むしろこの回答で引用した解離のケースのほうによく似ていると言えます。【3670】は解離性障害です。質問者が心配しているように、統合失調症に発展する心配はありませんが、精神科的治療は受けたほうがいいと思います。

(2018.5.5.)

05. 5月 2018 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 解離性障害 タグ: |