【3642】嘘つきで無責任な教授  

Q: 私はある大学の研究室に事務員として勤めている40代女性です。
今の教授になり、新しくできた研究室なので、まだ7−8年しかたっておらず歴史が浅いのですが、ここ数年、この教授が非常に嘘つきで無責任であることに驚いています。
この教授は、プレゼンテーションが上手なので、それにつられて大学院生や、研究員が集まるのですが、たいてい賢い人は1−2年で教授の本性を見抜いて離れていきます。客人などが来ると、科学研究費を大量にとっているだの、海外からも講演を頼まれているだの、虚言を含めた自分の自慢をずっと語っています。学会などでもカリスマ性を発揮するようなプレゼンテーションをするので、たくさん人が集まります。研究室に入りたいという希望の研究者がいれば、「援助するから海外の学会にも積極的に発表してほしい」「海外の研究室も紹介できる」「うちには入れば科学研究費も使い放題だ」「学位も研究テーマが豊富だからすぐにとれる」というようなことを言い、集めますが、実際には海外の学会はおろか、国内学会で発表した人はほとんどおらず、大学院生の指導もろくにしないので、学位が取れずオーバードクターになったり退学になったりして辞めていった研究員が5人ぐらいいて、じつは研究室開設以来、一人も学位が取れていない有様です。取れなかった院生に対しては「無能だった」と言います。
私は研究室の業績を編集するので、わかるのですが、教授は周り中の人に海外のトップジャーナルに筆頭著者でたくさん掲載されている、と言っていますが、実際にはセカンドオーサーが2個ほどあるのみだったりします。また、教授がメインで研究しているテーマに関して、15年以上研究しているのに日本語の総説が数本、依頼原稿があるのみで、英語論文が一個もありません。
2年ほど前に他大学から、毎年英文の論文をジャーナルに載せている優秀な研究者の人が来られていて、教授の研究テーマの一部を分担する感じで研究しており、放置されていたデータを解析し、学会や英文論文の発表の準備をしていました。はじめは教授に発表してよいか、と聞いたらぜひやってくれと言われたとのことでした。ところが教授がのらりくらりとごまかして内容を見ようとせず、結局締め切りが過ぎてしまったり、学会発表の予演会をすると、大きな問題のないスライドに対してあきらかに不当だと思われるようなクレームをつけて長時間罵倒したことがあったようです。その研究者がなぜ論文を見てもらえないのか、と尋ねたところ、自分がまだ論文を出していないのに下の者が先にいい加減なものを出されては研究室の品位にかかわる。と言われたとのことで、うちの研究室にいる間は妨害されて一切論文を投稿できず、辞めてすぐに大学に戻られました。
また、最近分かったのですが、この教授がやっている研究テーマは、もともと他大学でやられていたものを教授が目を付けて、向こうの教授に口先でうまく取り入って騙し乗っ取ったものであるとのことでした。
また、会議などでも自分の気に入らない職員や自分の意見に逆らう職員がいると標的にして不条理な内容で怒鳴り散らして、うつ状態となり、退職に追い込まれた人が何人もいます。
研究室で話している雑談も、自分の車のほうがスピードが出るとか、自分の家のほうが高いところにあるとか、まるで小学生レベルの内容が多いです。
わたしはこの教授はサイコパスもしくは自己愛性パーソナリティ障害ではないかと疑っています。

 

林: ご指摘のサイコパス、自己愛性パーソナリティ障害ともに、虚言と深い関係があります。質問者の疑いは首肯できます。この教授は自己愛性パーソナリティ障害と診断できるといっていいでしょう。

この教授は、プレゼンテーションが上手なので、

学会などでもカリスマ性を発揮するようなプレゼンテーションをするので、たくさん人が集まります。

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分ないしは自分の仕事を良くみせることに長けているものです。そしてそれが注目を浴びることで、自己肥大感が高まるのが常です。

科学研究費を大量にとっているだの、海外からも講演を頼まれているだの、虚言を含めた自分の自慢をずっと語っています。

自己愛性パーソナリティ障害らしい性質の虚言です。

じつは研究室開設以来、一人も学位が取れていない有様です。取れなかった院生に対しては「無能だった」と言います。

虚言ないしはそれに伴う自慢が、虚偽であるという事実がつきつけられると、他人に責任を転嫁するのは、自己愛性パーソナリティ障害にしばしば見られる言動です。これは、肥大した自己像が、虚像であることを認めることを拒否し(その拒否が意識的か無意識的は難しい問題ですが)、自分の言った内容は本来は事実であったが、他の人間の無能や失敗のために結果的に事実にならなかった、というのが自己愛性パーソナリティ障害の人の定番の主張です。

会議などでも自分の気に入らない職員や自分の意見に逆らう職員がいると標的にして不条理な内容で怒鳴り散らして、

自分の意にそぐわない事実には耐えられないのも自己愛性パーソナリティ障害の特徴です。それは色々な形で現れますが、この教授のように地位が高い場合は、下の人間を激しく攻撃して黙らせる(または、追い出す)という形が典型的です。

研究室で話している雑談も、自分の車のほうがスピードが出るとか、自分の家のほうが高いところにあるとか、まるで小学生レベルの内容が多いです。

幼児的万能感、自己肥大感。まさに自己愛性パーソナリティ障害の特徴です。

というわけで、

わたしはこの教授はサイコパスもしくは自己愛性パーソナリティ障害ではないかと疑っています。

この教授は自己愛性パーソナリティ障害と診断できると思います。(通常はメールの情報からパーソナリティ障害の「傾向あり」とまでは言えても、「診断できる」とまでは言えないのですが、この【3642】は記載が具体的であり、かつ、典型的なので、「診断できる」と言っていいでしょう)
サイコパスについては、現代の精神医学ではまだ概念が統一されているとは言えないこと、また、そうはいっても、冷血さや残酷さがかなりのレベルに達していないとサイコパスは言いにくく、この【3642】の記載からはそこまでは読み取れないことから、この教授がサイコパスであるとまでは言えません。(サイコパスの概念を広く取れば、言えるという立場もあり得ます。心理学の領域では比較的広く取ることが多く、successful psychopathという用語もあり、この教授はそれにあたると見ることもできるでしょう)。
なお、現代の診断基準では、自己愛性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害(その中の少なくとも一部はサイコパスです)は、B群パーソナリティに分類され、何らかの共通点があると考えられています。虚言はB群パーソナリティ障害と大いに関係します。美少女L、その他、の虚言もご参照ください。

(2018.3.5.)

05. 3月 2018 by Hayashi
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