【3600】その後診断名が双極性障害になりました(【2896】のその後)

Q: 【2896】はじめは適応障害、後にうつ病と診断されましたが、本当は甘えではないでしょうかでご回答いただいた30代女です。その節はありがとうございました。あれから3年近く経過しましたが、自殺未遂などもせずに何とかやっております。今回はその後の経過をお知らせしたくメールしました。
【2896】で林先生から「典型的なうつ病である」とご回答を頂き、私も、おそらく主治医もそう考えていたのですが、X年1月頃より躁状態が起こり、現在の診断名は双極性感情障害となりました。今考えれば【2896】林先生へ長文の質問メールを送ったのも、躁状態からなのかもしれません。このメールを書いているX+2年11月現在も躁の時期のようです。

普段はあまり喋らない方なのですが、多弁になったり、頻繁に外出するようになったり、出費が多くなったりという傾向が年に1回くらい、1〜2か月程度続くように思います。ただ、出費については通常の時期でもあまり使わない方なので、ネットショッピングで月に1万円ほどの買い物をしたり、ソーシャルゲームへの課金を千円程度といったところです。元々ギャンブルや飲酒、タバコはやりません。小遣いは基本的に会社員時代の貯金から出しています。ポケモンGOをプレイしている関係もあり、ここ1年ほどは外出が多めです。
私にとってはあまり居心地の良い状態ではないようで、なんとなくそわそわしているな、とか、ちょっとお金を使いすぎたかな、といったことで気付くようです。一番最初に躁転した時は自分ではわかりませんでしたが、母と一緒に受診した際に、母が「いつもよりよくしゃべるし動く」と主治医に伝えたのが発覚するきっかけだったと思います。

天気が悪い時に頭が重くなるなど調子が悪くなることはありますが、ストレスをできるだけ避けていることと、薬が合っているのか、前回のメールからはひどいうつ状態はありませんでした。希死念慮についてはほとんど出ることがなくなりました。働いてはいないのですが、あの後障害者手帳3級を取得し、就労移行支援B型の作業所に週3回通っています。

現在の処方は炭酸リチウム200mg、トレドミン50mg(躁以外の時期は65mg)、ゾルピデム酒石酸塩10mg、フルニトラゼパム2mgです。今回の躁と同じくらいの時期から中途覚醒が出るようになったので、フルニトラゼパムが追加されました。

林先生のご回答で、これは病気の症状なんだと気が楽になりました。完治することはないのかもしれませんが、無理をせず、気長にやって行こうと思います。どうもありがとうございました。

林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。ご自身の病気を認識し、受け入れ、適切な治療を受け安定しておられるご様子をお知らせいただき、嬉しく思います。

林先生から「典型的なうつ病である」とご回答を頂き、私も、おそらく主治医もそう考えていたのですが、X年1月頃より躁状態が起こり、現在の診断名は双極性感情障害となりました。

このように、双極性障害(躁うつ病)の最初の症状がうつ状態で、その時点ではうつ病と診断され、後に躁状態が現れて双極性障害と診断が確定することは精神科臨床ではよくあることです。

今考えれば【2896】で林先生へ長文の質問メールを送ったのも、躁状態からなのかもしれません。

確かに、診断が双極性障害と確定した今、振り返ってみればそうだったかもしれないと言えるでしょう。「うつ状態が続いていて、ある時期に急に長文のメールを書く」のは、躁転の兆しであることは時にあります。この時、その内容が【2364】永きにわたりましたが、確かにうつ病は治りましたのような突き抜けた明るい内容であれば、躁転という判断は容易ですが、【2896】のように、うつ状態を切々と訴える内容の場合は、躁転の兆しの可能性はあるものの、逆に重いうつ状態のつらさの反映と考える余地もあるでしょう。(もっとも、それであってもやはり躁転の兆しであると見る考え方もあります)

このメールを書いているX+2年11月現在も躁の時期のようです。

文面からは躁状態とまでは言えず、うつ状態が改善して生まれた前向きな気持ちを反映しているように思えますが、これはメールからの判断の限界ということになるのでしょう。

完治することはないのかもしれませんが、無理をせず、気長にやって行こうと思います。

完治」という言葉の意味範囲が問題ですが、服薬を続けることにより、躁状態にもうつ状態にもならずに生活できることは十分に期待できると思います。そして「無理をせず、気長にやって行こうと思います」という姿勢は、再発防止のためにも重要かつ有効です。今後、病状がさらに改善し、安定が続くことを願っています。

(2018.1.5.)

05. 1月 2018 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A, 躁うつ病