【3579】あれから家族にしつこく言われながら服薬しています。実は私は統合失調症なのでしょうか(【3526】のその後)

Q: 【3526】薬をやめて本来の自分を取り戻すつもりですの質問者である20代男性です。あれから私は家族にしつこく言われながら服薬しています。現在飲んでいるのは朝がリスペリドン1.5mg、夕がリスペリドン2.0mgとプロプラノロール60mgです。尤も、現在行っているコンビニのアルバイトでは不規則なシフトが組まれているので、起きている時間がバラバラである影響もあって週2、3回は忘れて飲まないことが多いのですが。
それで、私が【3526】で質問した高校3年生に相当する時期のことなのですが、さらに今回説明できる部分があります。しかしこの時期を振り返ると、どうも統合失調症と見做して辻褄が合うのです。 すると、実は私は統合失調症なのでしょうか。
まず被害妄想・関係妄想です。自分の前を高速で通り過ぎる自転車があると、私は「アイツ俺にぶつかろうとしやがった!」と腹を立てることがあり、コンビニに行くと「店員は俺をニートだと思ってんだろうな」と考えることがありました。世界没落体験もあり、核爆弾が落とされるイメージなどは常に頭を駆け巡っていました。常に誰かが見張っている、身上調査されていて自分の個人情報が漏れている、といった注察妄想もあり、前回質問した通り追跡妄想もありました。
心気妄想と言えば心臓に違和感を覚えましたし、自分は寝たら二度と目が覚めないのではないかと恐怖を抱くことがありました。このように、妄想ならかなり該当するところがあります。
自我意識の障害は自生思考と強迫思考見られる程度でしたが、創作話が頭の中を駆け巡り、ピーク時は1日3時間ぐらいはそれを楽しんでいました。常に思考の海であり、物事に関して連想ゲームのような考察(黒人はカレーを食べ過ぎだから肌が黒いのではないか?などのような)をすることもありました。
陰性症状だと外出、食事、趣味に関する意欲の低下があり、普段は2、3人前の食事を摂っていたのに陰性症状のピークだと思われた時期(大学入学直前の年の瀬から年明け頃)にはお粥一杯で食事が終わるほどでした。1週間ぐらい家から一歩も出ないこともありました。無関心といえば曜日や日付の感覚がなくなるなどがあり、これは陰性症状が始まったころから大学1年の夏頃まで続いていました。認知機能にも問題があり、高校3年生に相当するころから字を目で追えない、単語の綴りを間違える、読んだ参考書の内容が頭に入らないなどがありました。【3555】のような連合弛緩もありました。「サヨナラと、スキゾスキゾは言って係る。ウザいとキモいは言って係る。旨いとまずいは言って係る。職と食は言って係る」のようにです。
これらの症状がリスペリドンを常用してからピタリと収まったということは、統合失調症に薬が効いたということなのではないでしょうか。他の薬が効かなかったのは、やっぱり発達障害ではなかったということでしょうか。人の話が理解できない、物覚えが悪い、注意力が無い、というのは薬を飲んでからほとんどなくなったので、どうも発達障害というのは違うのではないかと思うのですが。実際、今やっている仕事場でも「助かっている」「できている」という評価を責任者から受けており、これは発達障害らしからぬ現状だと思います。

仮にですが、私が早期からリスパダールを服用していれば人生の質の低下は早い段階で食い止められましたか。学業はもっと伸びましたか。私は安定剤を飲んでいれば大学卒業までにもっと時間がかかっただろうと思っていますし、というより大学へ入学できるほどの学力を身につけることはできなかっただろうと思います。

今も服薬や通院が社会生活における障害になっているのを感じます。私が今コンビニのアルバイトを行っているのは素性を隠して働けるからであり(今の店は保険証の確認すら取っていません)、社会保険が無いため健康保険組合の通知から通院がばれずに済むからです。私はたとえ2ヶ月に1回の通院でもそれをしていることがばれたら通常通り働かせてもらえないだろうと思っていますし、実際入院前は病気のことを明かしたら「うちは接客業だから」「健康な人じゃないと無理」と断られました。

もしこれから私が正社員として働くとしたら保険組合にばれないように通院は保険証を使用せずに行うつもりですし、そうすると経済的な理由から通院回数も貰う薬の量も減らさざるを得ません。薬が足りない分はトリプトファンの含まれる食べ物を増やしてチロシンやカフェインの含まれる食品を減らそうと思います。

 

林:
実は私は統合失調症なのでしょうか

そうだと思います。今の治療をぜひ続けてください。

仮にですが、私が早期からリスパダールを服用していれば人生の質の低下は早い段階で食い止められましたか。学業はもっと伸びましたか。

これはとても意義深いご質問です。統合失調症の前駆期の方にとって、非常に重大なテーマにかかわる質問ですが、現在のところ精神医学はこの問いに対する明確な回答を出せる段階まで発展していません。
ただしそれは一般論としては回答できないという意味で、この【3579】のケースにおいては、早期からの服薬はメリットが大きかったと思います。(このように、結果論としての振り返りであれば、服薬すべきだった と言うことは可能です。けれども前駆期の場合、そもそもそれが本当に前駆期なのか、治療しないと本当に統合失調症を発症するのかが不明ですので、早期の服薬にメリットがあるかどうかは、一般論としては言うことができません)

今も服薬や通院が社会生活における障害になっているのを感じます。

統合失調症に限らずどんな病気でも、通院すること自体、他の活動の時間を削ることになりますから、何らかの障害になっていると言うことができます。けれども通院しないことによる障害(病気の悪化など)のほうが大きいからこそ、人は通院をするのです。この【3579】のケースは、質問者のおっしゃる通り、「服薬や通院が社会生活における障害になっている」は事実であっても、通院・服薬をしないことの障害のほうがはるかに大きく、通院・服薬しなければ結果は破滅的にさえなり得ます。必ず通院・服薬が必要です。

薬が足りない分はトリプトファンの含まれる食べ物を増やしてチロシンやカフェインの含まれる食品を減らそうと思います。

それは無意味です。食事療法は統合失調症の薬物療法の代用にはなり得ません。その考えはきっぱりと捨ててください。破滅につながる考え方でしかありません。

なお、元のメールの文章は、「質問」という単語にあたる部分がすべて「回答」と書かれていましたが、掲載にあたってはすべて「回答」に修正しました。この「質問」という記載が単なる誤記や勘違いか、それとも統合失調症の症状に関連した病的意義のある誤記かは不明です。

(2017.11.5.)

その後の経過(2020.9.5.)

05. 11月 2017 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: , , |