【2973】10年以上ひきこもりの兄をようやく入院させました(【2822】のその後)

Q: 先生お久しぶりです。【2822】長年引きこもりの兄を受診させたいのですが、母は「あの子は可哀想なんだよ」というだけなのです、 【2187】長年引きこもりの兄についてで回答いただいた30代女性です。初めて相談した日から3年が経過しました。兄はというとさらに症状が悪化し、ガラスを割るなどや暴言、母への暴力まで進んでしまいました。先生の返事を受け、私がなんとかしなければと思い、母へ状況を聞くも私には状況すら教えてくれなくなりました。しかし、今年に入って状況がひどくなる一方だったようです。母よりSOSのメールが届いたのでなんとかしようと保健所へ連絡したりしたのですが相談などもしたくないといったりと困り果ててしまいました。警察の介入し措置入院についても話しても近所に知られたくないと言い張るのです。大声で叫んだりしているで知られていると思います。ただ母も父も毎日の攻撃的行動に疲れて入院させたい、どうしたらいいかとの相談を受けました。

母は嫌なことには目をつぶり、耳を閉じてきた結果なので現実に直視できないので、父に先生の統合失調症の本をお願いだから読んでほしいと渡しました。父は病気を認めていませんが、入院の必要性は感じてくれました。母への恨みとか母のせいだといつも暴言を吐くので母の同行はなしにしました。両親の気が変わらないうちにと入院施設に電話して相談しました。保健所は訪問もしてもらえないので家族で無理やりにでも引っ張って連れていくことにしました。前回よりさらにお風呂も入らず、髪も爪も切らずとひどい状態でした。病院に行くから話しをしようといっても部屋からでないので部屋から出し、暴れたら縛らなくてはいけないから一緒に病院へいこう、このままではみんなダメになる、助けてあげるからといいました。兄はよい子にするからと働くから嫌だといいましたが、なんとかといっても大人の男性2人に支えてもらい仕方なく手は縛って無理やり連れて行って診察を受けました。先生への受け答えはしっかりしていました。自分のことは話せていました。モラトリアムみたいなものですと。ただその先生は入院の必要があること、本人が嫌でも入院できることを話し、本人はとりあえず家へ帰って1週間後に来ますといいました。先生より入院といわれ、かなり抵抗したのでセルシンを打たれたようです。死にたいと思ったことはないかと聞かれるとありませんと答え、幻聴も聞こえないといっていましたが、同居の家族は1人で笑っているといっていたのでたぶん幻聴などありそうです。

先生は、無理やり連れてきてごめんね、家族の人のお話を聞いて僕が無理やりでも連れてきなさいと頼んだのだから家族を恨まないでほしいと伝えてくれました。きっと家族への恨みにならないようとの配慮です。その後先生と話をしたらたぶん統合失調症かと思いますといわれましたが今後も検査予定です。

入院した今は保護室にはいますが暴れないので鍵を解放にしていますが外に出てこないそうです。食事も食べられており、夜も眠れているそうです。また、主治医の方針で内服もしていないそうです。内服しないと意欲の低下は改善しないとおもうので不安もあります。一歩進みましたが、まだ入院して2日しか立っていないのでこの先についてもかなり不安が残ります。が、ただ言えることはもっと早くに行動していればよかったと悔やみます。いまさらですが無理やりにでも連れていって本当によかったです。家族に笑顔が戻れるように頑張りたいと思います。また、経過をお伝えします。ありがとうございました

林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。決断までには大変なご苦悩があったこととお察しいたします。しかし入院が実現し、大きな一歩が踏み出せたことは間違いありません。質問者の忍耐強い努力の賜物だと思います。

主治医の方針で内服もしていないそうです。

まだ入院したばかりですし、これまでの症状を医師は直接は見ていないので、まずは薬なしで状態を正確に把握したうえで、最適な薬物を開始するという方針であると思われます。
一般的には入院後すぐに薬物療法を始めるのが当然ですが、この【2973】のケースでは、すでにかなり慢性的に経過していますので、一日も早く薬を始めるよりも、状態の把握のほうが重要であるというご判断なのでしょう。

ご本人にとってもご家族にとっても、まだまだ険しい経過があると思われますが、これから改善に向かうことは確実に期待できます。ひとつ危惧されるのは、これまでのご両親の姿勢からみて、中途半端な時期に退院させてしまい、元に戻ってしまうことです。そうなると二度目に入院させるのはさらに大変になります。二度目のチャンスはないとお考えになるくらいのほうがいいかと思います。おそらくどこかの時点でご本人は強く退院を希望されるでしょう。そのとき、お母様は、可哀そうだというような理由で退院させてしまうことが危惧されます。今の時点から、医師から積極的に退院の話があるまでは入院治療を続けるという決意がご家族には必要です。

(2015.5.5.)

05. 5月 2015 by Hayashi
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