【2941】統合失調症の薬をやめたら、また悪口が聞こえてきました
Q: 20代女性です。
2年前に『死んじまえ』や『嫌いなら殺せ』等の幻聴で眠れなくなってしまい、病院に行ったら軽度の統合失調症と診断されました。
それから半年ほど通院してぐっすり眠れるようになり、勝手にもう大丈夫だろうと通院をやめてしまいました(今考えれば良くないことでした)。
そして、今また統合失調症のような症状が出始めています。
『何やってもダメ』、『トロすぎ』等の悪口が聞こえてきたり(実際には言われていなかったり、ちがう人への陰口でした)
誰かの動作が、私の真似をしてからかっているように見えたり(それに対して怒ったら、不思議な顔をされてしまったのでこれも被害妄想でした)。
更に、仕事中に突然イライラし、感情が抑えられず涙が止まらなくなってしまい仕事ができなくなってしまいました。
また通院したほうがいいんでしょうか?
よく、統合失調症の人は障害者年金で生活していると聞きます。
その場合、正社員を辞めなければならなくなるということはあるのでしょうか?
林: すぐに通院を再開してください。
軽度の統合失調症と診断されました。
それから半年ほど通院してぐっすり眠れるようになり、勝手にもう大丈夫だろうと通院をやめてしまいました(今考えれば良くないことでした)。
その通り、良くないことでした。統合失調症は薬による継続的な治療が必要な病気です。自己判断で(あるいは、人からの無責任な勧めで)通院を中断してはいけません。
なお、「軽度の」統合失調症と診断されたとのことですが、軽度であるからといって通院を中断していいということにはなりません。そもそも、医師が患者に「軽度」と説明するには、単に安心させるためということもよくあることです。(この【2941】が軽度でないということではありません。但し軽度だということでもありません)
そして、今また統合失調症のような症状が出始めています。
統合失調症で薬を中断すれば、大部分が再発します。
『何やってもダメ』、『トロすぎ』等の悪口が聞こえてきたり(実際には言われていなかったり、ちがう人への陰口でした)
統合失調症の典型的な幻聴です。
誰かの動作が、私の真似をしてからかっているように見えたり(それに対して怒ったら、不思議な顔をされてしまったのでこれも被害妄想でした)。
これも統合失調症の典型的な症状です。
今はまだ「それに対して怒ったら、不思議な顔をされてしまったのでこれも被害妄想でした」と、ある程度の病識があるようですが、このまま治療を受けずにいると病識は失われるでしょう。つまり、「それに対して怒ったら、不思議な顔をされてしまったので、何と卑怯な奴だと思いました」というような反応に変化するでしょう。
更に、仕事中に突然イライラし、感情が抑えられず涙が止まらなくなってしまい仕事ができなくなってしまいました。
これも統合失調症の症状です。幻聴や妄想とは異なり、こういった症状は統合失調症でなくてもあり得ることですので、統合失調症の症状であることがわかりにくいことも多いものですが(【1790】統合失調症の姉が、15年飲み続けていた薬をやめたら、とても怒りっぽくなりました、【1791】統合失調症の姉が薬を飲まなくなり、敵意とともに暴力も出てきたなどをご参照ください)、経過からみて、これも統合失調症の再発に伴う症状であることは明らかです。(経過を知らなくても、この様子を実際に精神科医がみれば、統合失調症の症状に違いないとわかることもあります)
また通院したほうがいいんでしょうか?
すぐに通院を再開してください。
よく、統合失調症の人は障害者年金で生活していると聞きます。
「よく・・・聞きます」というのは曖昧な表現で、事実を反映していません。「統合失調症の人の中には障害者年金で生活している人がいる」というのが正しい表現です。そしてこの表現の中に「統合失調症」を他の病気に変えても同じです。つまりどんな病気でも障害者年金で生活している人はいる ということです。
その場合、正社員を辞めなければならなくなるということはあるのでしょうか?
この質問文の「その場合」とは、「障害者年金で生活している場合」であると読めます。するとこの質問は論理が逆になっており、意味をなしません。つまり、「障害者年金で生活していると、正社員を辞めなければならない」ということはあり得ません。正社員であれば、障害者年金を受給して、その年金で生活することはあり得ないからです。
(2015.4.5.)