【2810】号泣議員は単なる嘘つきですか、それともパーソナリティ障害ですか

Q: 私は10代女性です。 最近、西宮の野々村議員の会見が話題になりました。彼は、会見で議員としての活動内容について記者から追及があったにも関わらず、それらをはぐらかして適切な説明をしませんでした。その「はぐらかし」の内容も不明瞭で、到底本当とは思えないものも含まれているようです。これは「虚言」ですか。 コラム「美少女L、その他、の虚言」の1に、

ここで「障害」と診断するうえの重要な条件は、項目Cで、この虚偽(病気でないのに病気を装うこと。または障害でないのに障害を装うこと)による利益が本人にないことである。

とあります。この会見の場合、「はぐらかし」は議員にとって「不正の疑惑から逃れる」という利益があります。ということは、「単なる嘘つき」なのでしょうか。 また追及が核心に迫ると、過剰な感情表現をし、公的な場として不適切な態度で、会見で問われている内容そのものとは関係のないことを主張しました。 これは私の勝手な憶測ですが、何らかのパーソナリティ障害の疑いがあるのでは、と思います。林先生はどう思われますか。【2745】嘘つきについてもっと知りたいの方の質問に通ずるものがありそうですが、もしお時間ありましたらご回答頂けたら嬉しいです。

 

林: ご指摘のコラム「美少女L、その他、の虚言」の1の引用部分の、「虚偽による利益がないことが、障害と診断する条件」というのは、あくまでも虚偽性障害の診断基準であり、虚偽性障害以外には適用できません。虚偽性障害とは、たとえば虚言癖、嘘つきは病気かのCase32のような人につけられる診断名で、【2810】の質問者がご指摘の野々村議員は虚偽性障害にはあたりません。もちろん病的な虚言は虚偽性障害以外にもたくさんの種類がありますから、野々村議員が虚偽性障害以外の病的な虚言者にあたるかどうかはまた別に検討する必要があります。そこで野々村議員について実際に検討したのが、虚言癖、嘘つきは病気か のCase24です。

診断基準上は、「虚偽による利益がないことが、障害と診断する条件」というのは虚偽性障害にしかあてはまりませんが、その他の病的な虚言者と思われる人々についても、それを病的と判定するか否かにおいて、「虚偽による利益がないこと」は重要なポイントです。これを虚言癖、嘘つきは病気かの中で私は、「メリット欠如=虚言のための虚言」として、重要な虚言キーワードの一つに位置づけています。ですからこの【2810】の質問者のお考えは、的確なものと言えます。「メリット欠如」のほかにも虚言キーワードは多数あり、それらにも基づき総合的に検討すると、野々村議員の虚言の病的レベルはとても高いとはいえません。但しそれは、虚言癖、嘘つきは病気かに紹介した44の虚言者(または、虚言者かもしれない人々)の中で相対的に見れば、とても高いとはいえないという意味です。これに関しては出版社のブログもご参考になると思います。より詳しくは虚言癖、嘘つきは病気かをお読みください。

(2014.10.5.)

05. 10月 2014 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 精神科Q&A, 虚言