【2991】知的障害者の解離性障害について
Q: 私は30代男性です。近所に、知的障害のある20代の男性が住んでいます。 彼は、難しい言葉は理解できませんが、小学生くらいの会話であれば分かる能力があります。 その男性のことで心配なことがあり、お尋ねします。
その人の母親から、彼が最近になって精神科で「解離性障害」と診断されたと聞きました。突然意識を失ったり、手足のしびれを訴えたり、家から出られなくなる日があったり(体が動かないとのこと)、口が回らなくなったり、・・の症状が続き、そのように診断を受けたようなのですが。 最近、更に症状が悪くなっているようで、 ○家から突然飛び出して何時間も戻らない。本人はその間の意識がない。 ○死にたいと言って、首をひもで縛ろうとする。正気に戻ると、なんで首が痛いのかと尋ねてくる。 ○突然口調が変わり、子供や女性の話し方になる。いつそうなるか分からないが、気づくと本人に戻っている。本人は、耳元で他の人の声が聞こえると言っている。 ○元気な日とまったく動けない日がある。元気な日は楽しそうに遠出をする。動けない日は、病院にさえ行かれない。 ○他にも、行ったことのない場所へ行って来たなどの妄想が続いている。 このような症状が出てきていて、医師にも伝えてはあるようですが、「解離性障害はそういうものだから、放っておいていい」と言われたとのことでした。 しかし、しょっちゅう家から飛び出しては行方不明になり、母親がその後を追いかけたり、家の中でも目が離せないと言います。(医師は、後を追いかけなくても戻ってくるから、と言ったようですが。)ここ数か月、更に状態がひどくなっているように見えます。 薬も飲んでいるようですが、改善される様子がなく、他人ごとながら心配になります。 解離性障害のこのような症状は、放っておいてよいものなのでしょうか? どうぞよろしくお願いします。
林: 箇条書きしていただいた症状は、確かに解離性障害のものとして理解できるものです。けれどもてんかん発作も考えられ、知的障害にはてんかんが合併しやすいことを考えると、てんかんの検査も必要でしょう。(ただしここに書かれている症状は解離性障害の症状の可能性のほうが高いと思います。また、知的障害にてんかんが合併する場合は、幼少時からてんかん発作があるのが普通です。)
また、解離性障害であった場合、これだけの症状があれば、
「解離性障害はそういうものだから、放っておいていい」
というのはあまりに楽観的すぎる見解といえます。何らかの危険な状態に陥ることも十分に考えられます。私が主治医なら、入院の適応と考えるでしょう。この男性が解離性障害だとして、しかも最近になってこのような症状が出てきたとすれば、本人にとって大きなストレスとなる何らかの出来事が、最近あったことが推測されます。
薬も飲んでいるようですが、改善される様子がなく、
これは薬で解決できる症状ではありません。
(2015.7.5.)