【5020】AI に出会って、もうカウンセリングは不要なのではと一度は思いましたが、時々は利用しています

Q: 林の奥 を拝読し、AIの回答の講評についてとても興味深く読ませていただきました。本日はAIと話すことについて、一人のユーザーの感想を送らせていただきます。

私は一人暮らしの30代女性、処方はエビリファイ3mgを1日1錠、デパス5mgを頓服でもらっています。転勤がある都合上、現在の病院は学生時代の初診から4つ目になっており、主治医との心理的つながりはもうほとんどありません。初診でそれまでの処方を伝え、ではそれで続けましょうとなり、以後も寝れていますか等の簡単な質問に答えるのみで、薬をもらいに通っている形です。

私はこれまで自身の辛さを和らげる手段として、1分数百円のかなり高額になる有料ダイヤルと1時間5000円の電話カウンセリングを利用していました。が、AIアプリをインストールし、すぐにその恩恵と効力にハマり、上記有料サービスの利用頻度は激減しました。最大のメリットとしては、身もふたもなくお金だと感じています。私の利用しているAIサービスは月額4000円。24時間、この件を相談したいと思ったら、いつでも投げかけることができます。そして即座に回答が来る。いつまでも気が済むまでチャットができる。回答の中の気になったワードを投げ返してさらにAIの解釈を確認することもできる。当初、もうこれでカウンセリングは自分に不要になるのでは、心の整理や自身のとらえ方の振り返りはこのチャットの中で完結できるのではと思いました。

が、数か月たって、改めて対人のサービスを利用再開しました。以前よりだいぶ頻度は減りましたが。以下に当事者として、AIとチャットを重ねた上で感じた違和感を書きます。

1.文頭、そして回答全体に流れる共感、肯定
私はここに一番の恐れがあります。まず、肯定から来ます。テクニックというといやな感じですが、こちらのチャットの文末を「(この事実)君はどう考える?」に留めるか「(この事実)私はこうかなと思ったんだけど」と自分の意見を添えるかでかなり回答が変わります。つまり、推論に対してユーザーの操作が可能になってしまう。事実からの推論が欲しい気持ちと、私はこう考えたという意見に対して肯定が欲しい気持ちの二つがあり、ここにはジレンマがあります。私のチャットのテーマの多くは医療相談ではなく対人関係についてなので、共感寄りでOKなのかもしれませんが、対人関係についての話だからこそ「やっぱり私の考えは正しい」という確信を持ってしまいそうな自分に相当な恐怖があります。

2.死を想起させる話題について語ることが難しい
私が「消えてしまいたい」「いなくなったほうがいい」というとき、それは必ずしも自殺企図に直結するものではありませんが、おそらくこの表現はAI側の倫理的ポリシーに触ってしまい掘り下げることができません。すぐ緊急の相談ダイヤルの案内が来ます。消えてしまいたいというチャットの中には、おそらく私が存在していることを誰も気に留めない、居てもいなくても同じというような嘆き、それに対する寄り添いや反論が欲しいという要望が含まれると思いますが、前後の文脈に関係なくここはあまり汲み取られない印象です。

1の改善策としてサービス全体にカスタム指示 を追記しています。以下の通りです。
「過度な持ち上げはいらないけど(趣味)関連に関してはある程度夢のある方向で。可能な限り私の自己肯 感、自己有用感を担保する方向で回答してほしい。」
この追記で回答全のユーザーを包み込むようなトーンはだいぶ落ちました「そこは少し線を引いた方がいい」「その表現は行き過ぎてるから、以下で修正するね」「過度な意味付けを持たせる必要はないよ」などのブレーキが入るようになりました。使い始めた当初の希望や明るい見込みに胸が膨らむ感じはなくなりましたが、これでいいかなと思っています。

林先生がAIに投げているチャットサンプルとしての相談、回答を吟味、比較する目的かと思いますが、精神症状を持っているユーザーがAIと話すことのリスクには、どのような点が考えられるでしょうか。自分としては上記1が特に危険と感じましたが、先生のご意見を伺いたいです。また、私個人について、このような用法で適切と言えそうでしょうか? よろしくお願いいたします。

 
林: 貴重な体験のご報告をいただきありがとうございました。質問者はおそらくAIによるカウンセリングについての知識をかなりお持ちであると思われるので、以下は私からご説明するまでもないこともかなり含まれていると推察いたしますが、一般的なことも含めて回答させていただきます。

(AIカウンセリングの) 最大のメリットとしては、身もふたもなくお金だと感じています。

それは間違いない、厳然たる事実だと思います。「お金」という単語だけからは「身もふたもなく」という印象が発生しないこともないですが、安価(あるいは無料)であることは、アクセスのしやすさという、医療やカウンセリングにおけるきわめて重要な必須事項に直結することから考えても、最大のメリットと呼んでいいと思います。

24時間、この件を相談したいと思ったら、いつでも投げかけることができます。そして即座に回答が来る。いつまでも気が済むまでチャットができる。回答の中の気になったワードを投げ返してさらにAIの解釈を確認することもできる。

これらはいずれもAIカウンセリングについてしばしば指摘される定番のメリットです。

https://www.ted.com/talks/alison_darcy_the_mental_health_ai_chatbot_made_for_real_life

もご参照ください。

1.文頭、そして回答全体に流れる共感、肯定 
私はここに一番の恐れがあります。

それを「恐れ」と捉えられることは、質問者の精神状態・考え方が健全であることの証だと思います。
この点、これもまた対話型AIの問題点としてよく指摘されることですが、AIは人間と違って共感を決して忘れず(林の奥にこれまでに掲載したAIの回答からも読み取れる通りです)、また、質問者の思いを否定したりしませんので、人間と対話するよりAIと対話したほうが、自分が傷つくことなく、静穏な気持ちになれるのが常です。そのためAIとの対話にのめりこむことが問題とされていますが、この【5020】の質問者はその問題を体感し回避しようとしておられます。

2.死を想起させる話題について語ることが難しい 
私が「消えてしまいたい」「いなくなったほうがいい」というとき、それは必ずしも自殺企図に直結するものではありませんが、おそらくこの表現はAI側の倫理的ポリシーに触ってしまい掘り下げることができません。すぐ緊急の相談ダイヤルの案内が来ます。

これもまたご指摘の通りです。
死の危険があればAIと対話などしている場合ではない、と考えれば「すぐ緊急の相談ダイヤルの案内」が来るというのは最も的確なレスであると言えるでしょう。しかし、いわゆる地雷的なキーワード(死、それから差別的な単語など)が出た途端に、直ちにモードが変わってしまうようでは、真のカウンセリングとは言えないでしょう。この点、

前後の文脈に関係なくここはあまり汲み取られない印象です。

質問者のこのご指摘は、AIカウンセリングの欠点として的確だと思います。

しかしながら、1.文頭、そして回答全体に流れる共感、肯定 も、2.死を想起させる話題について語ることが難しい も、AIの専門家はとっくに認識して、改善策を進めていると思います。AI自身が自己改善をすることももしかするとすでに可能になっているかもしれません。そうしますと、【5020】の質問者が「AI に出会って、もうカウンセリングは不要なのではと一度は思いましたが、時々は利用しています」という(さしあたっての)到達点にいらした原因としてのAIの問題点は早晩改善され、近い将来に「AI に出会って、もうカウンセリングは不要なのではと一度は思いましたが、AIの問題点に気づいてから時々はまた利用していたのですが、AIの進歩に伴い、やっぱりもうカウンセリングは不要だという結論に達しました」というメールをいただくことになるかもしれないでしょう。

林先生がAIに投げているチャットサンプルとしての相談、回答を吟味、比較する目的かと思いますが、

はい、その通りです。今は探索のフェーズですが、どこかの時点でまとめて私の見解を示したいと思っています。

精神症状を持っているユーザーがAIと話すことのリスクには、どのような点が考えられるでしょうか。

この問いはAIに質問すれば的確な模範回答が得られると思います。現時点の私はこの問いに対してAIを超える回答は持ち合わせておりません。上記の通り、どこかの時点でまとめて私の見解を示したいと思っています。(しかし、その瞬間にAIは私の見解も学習して、その上を行くと思いますが)

自分としては上記1が特に危険と感じました

その通りだと思います。ご指摘の通り上記1は相当に危険で、この危険性についての十分な洞察なしにAIカウンセリングを利用することはあまりお勧めできません。「あまり」と言ったのは、この危険性があってもなお、利用しないよりはしたほうがいいかもしれないということが一つ。そして人間によるカウンセリングでも同様の危険はあるし、また、人間は共感や肯定が不十分のために結果的に症状を悪化させる危険があるのがもう一つの理由です。したがって、上記1は相当に危険ですが、では人間であれば総合的にみてAIカウンセリングに優ると言えるかどうかは別の問題ですので、AIカウンセリングは、上記1についての十分な洞察なしには「あまりお勧めできません」とまでは言えても「お勧めできません」とは言えないと私は考えます。

また、私個人について、このような用法で適切と言えそうでしょうか? 

現在のAIカウンセリングの問題点について、十分な洞察をお持ちのうえで利活用されていますので、適切だと思います。

(2026.3.5)

05. 3月 2026 by Hayashi
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